鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアとは

鼠径ヘルニアは、脱腸ともよばれ、本来ならお腹の中にある小腸などの臓器が、ももの付け根の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気をいいます。太ももの付け根の部分を、『鼠径:そけい』といい、体の内部の組織がはみ出した状態を、『ヘルニア』といいます。鼠径ヘルニアは、タイヤの弱くなった部分から内部のチューブが突き出ているのに似ています。 患者さんは乳幼児から高齢者まで幅広く分布しますが、特にももの付け根の筋膜が弱くなる40歳以上の男性に多く起こる傾向があります。

鼠径ヘルニアの症状

立った時や、お腹に力を入れた時にももの付け根の皮膚の下に小腸などの内臓が出てきて柔らかい腫れができますが、普通は指で押すと引っ込みます。この腫れが急に硬くなり押しても引っ込まなくなってお腹が痛くなったり吐き気が出たりします。これをヘルニアのカントンといい、緊急手術をしなければ、命に関わることがあります。

北青山Dクリニックでの、鼠径ヘルニアの日帰り手術

北青山Dクリニックでは、成人の鼠径ヘルニア(ソケイヘルニア)に対して、日帰り手術をご用意しております。鼠径ヘルニアの日帰り手術は、原則として重篤な基礎疾患(心臓病、脳血管障害など)のない方に可能です。その他、ヘルニアの大きさや発生部位、必要な麻酔の深度なども、日帰り手術が可能かどうかという判断材料となります。ふくらみが元にもどらなくなったり(嵌頓:かんとん)、戻らなくなったヘルニアの内容が壊死した(絞扼:こうやく)状態になりますと、緊急手術が必要となることがあります。

「メッシュプラグ」を利用した日帰り手術

当クリニックでは、『メッシュプラグ』を使用した日帰り手術をしております。この治療法は、メッシュプラグと呼ばれる人工のシートを、ヘルニアが発生している、組織的に弱くなった部位に補強パッチとして当てて、内臓が出てくるのを防ぐ治療法です。
従来では、弱い部分周囲の靭帯と筋膜を縫合閉鎖して補強する手術を行っていましたが、メッシュプラグ法は、従来の手術に比べて手術時間が短く済みます。また、局所麻酔・硬膜外麻酔・静脈麻酔を併用して行いますので、術後の痛みも少なく、そして術後すぐに歩行が可能となっているのも特徴です。
鼠径ヘルニアの別の治療法で、腹腔鏡を用いて腹の内側から弱い部分を補強する治療法があり、根治力が強いと言われておりますが、手術時間が長いこと、最低数日間の入院を必要とするなどの点から、再発を繰り返すなど難治例に適用しております。
メッシュプラグ法による日帰り手術後は、翌日から日常生活は可能です。ただし傷の回復には個人差があります。術後数日間は腹圧をかけないほうが安全なことから、手術翌日はお休みを取ってその後数日間は労働を軽減するなどをおすすめしております。

術前・術後のフォローアップ

当クリニックでは、手術日の一週間以上前に、血液検査や心電図検査などの術前検査をさせていただきます。緊急手術を除いて、麻酔・手術事故や院内感染を防ぐために、初診当日に手術をすることは行っておりません。 手術後は院内のベッドで2-3時間休養した後、鎮痛剤、抗生物質などが処方されて帰宅となります。原則として、①手術翌日②術後3-4日目③6-8日目④3-4週間目の4回の通院フォローアップが必要です。手術後1週間もすれば日常生活上は殆ど支障を来さなくなります。3週間ほどでゴルフのラウンドが問題なく行えるようになり、4週間すれば激しいスポーツに取り組むことも可能となります。

費用

手術費用は、保険が適用され、手術・麻酔費用を含めて自己負担は5万円程度です。 手術日は原則として火、木、金曜日に施行しています。

鼠径ヘルニアに関するQ&A

Q鼠径ヘルニアは、自然に治りますか?

A鼠径ヘルニア(ソケイヘルニア)は、残念ながら自然治癒することはありません。小児の場合は軽度ならば自然治癒を期待してしばらく経過観察することもあるようですが、通常は手術的治療以外にありません。カントンを起こす前に手術をすれば簡単に治ります。

Q鼠径ヘルニアのようですが、すぐ治療するべきでしょうか?

A膨らみがあっても横になった時などに引っ込んでいたり、痛みが落ち着いているようであれば緊急性はないと思います。しかし、この場合は腹圧が高くならないように、日常生活において、便秘を避ける・重いものを持たない・咳込みを予防する・長時間立ち続けないなどの注意が必要です。 また、ヘルニアが原因で便秘や腸閉塞が起こることもあります。女性の場合は飛び出す内容物が卵巣などの女性生殖器であることも多く月経時など生殖器の活動性が増す時に症状が増悪することもあるようです。 いずれにしても、できるだけ早く病院に見てもらうことがよいでしょう。