椎間板ヘルニアを起こしやすい職業は?pldd-doctor-blog

椎間板ヘルニアを起こしやすい職業は何だと思いますか?

クリニックの立地からか腰痛や椎間板ヘルニアを主訴として来院される方のほとんどは座りっぱなし、立ちっぱなしの多いデスクワーカーや接客業の方が圧倒的に多いのですが、統計調査からは重労働者(建築、土木などいわゆる力仕事を主とする業務)がもっとも椎間板ヘルニアと縁のある職業となっています。

これは椎間板ヘルニアがある意味”病気”というより”外傷”であることを強く反映していると考えられ当然と言えば当然の結果ですが、それほど力を使わない(?と言ったら失礼ですか…)だろうデスクワーカーの方々に腰痛を抱える人が多くいるのはなぜでしょう?
 
 
一番考えやすい理由はやはり座る姿勢でしょう。

一般的に椅子の座面と背もたれの角度(バックサポート角度)は95°に設計されたものがほとんどのようですが、股関節の屈曲可動域は125°程度なので、この角度に座るためには骨盤を回転させて95°近くに合わせる必要があります。そうするとどうしても下部腰椎が背中側に凸に曲がってしまい、この部に負担が集中することになります。ただ、これは椅子を正しく使用した場合の話になりますが、現実にはもっと事態は劣悪です。

おおよそ正しい座り方で椅子に座る人はいないようで、ほとんどの人が背骨にとってよくない代表的な2パターンで座っておられるようです。

一つは前屈み。座面に対して上半身が前に倒れ背中がかなり丸まってしまっているパターン。
もう一つは、かなり椅子の前の方に腰かけ、背もたれにふんぞり返るように座るパターンです。

共通点はいずれもお腹が凹むように腰が曲がり、背中側が丸く伸びている点ですが、
お腹側に押しつぶす力がかかり続けると椎間板の前方を持続的に押していることになり、つぶされた圧は後方(神経がある方)に逃げるようになるため、絶えず後方に力がかかり続けることで椎間板背側の線維輪の劣化が進み椎間板ヘルニアを引き起こすようになります。
もう一つの共通点は背中側の筋肉がずっと引き伸ばされている状態となっていることから余計な筋力負担が大きくなる事。
前屈みでは頭を常に引き上げておかないといけなくなり首から肩の筋肉も常に作用することになり、
ふんぞり返った姿勢では腰や背中が下に向けてたわもうとすることからやはり背中、腰の筋肉が常に作用している状態になることから、首から腰にかけてのだるさ、痛みなどの症状を引き起こす原因となります。

これらの座り方は首にも悪影響を及ぼし、首が胸に対して前に倒れることによって頚椎の並び方が変化してストレートネックを誘発したり、椎間板ヘルニアを引き起こしたりする可能性を増加させます。
日頃何気なく繰り返される日常生活動作や姿勢は、いろんな意味で最も根本的で重要であることを意識する必要があります。

力仕事を生業としない方で腰痛は椎間板ヘルニアに悩んでおられる方は座り方や立ち方を意識して生活されることをお勧めします。

また、腰痛を予防・軽減するために開発された椅子も販売されています。関心のある方は調べてみてください。
 
 
2つ目の理由は、姿勢の持続時間です。

姿勢を維持するために働く筋肉は四六時中働いているわけではなく、バランスが崩れそうな時に少しずつ間欠的に補正的に稼働しています。少なくとも正しい姿勢でい続けていれば骨・骨格自体にほとんどの荷重がかかっています。
したがって同じ姿勢が続くとそれだけ骨格そのものに荷重がかかる時間が増えますが、それは軟骨や椎間板に荷重がかかっている時間が増えているということなので、やはり骨や椎間板の劣化の進行の影響します。

「仕事に集中すると何時間も同じような姿勢で座り続けている」と診療中に本当にたくさんの方がお話しされますが、それは極力避ける必要があります。
少なくとも1時間に1回程度は”ハマって”しまったその姿勢を解除するために、立つ・伸ばす・軽くストレッチをするなど、負担が長時間、特定の場所に集中することを予防する手立てを取ることが重要です。ほんの数十秒~1分程度で構わないのでそうした習慣を身につけると良いと思います。
 
 
3つ目は筋肉の衰えでしょう。

同じ姿勢が続くと筋肉はあまり伸び縮みしません。ほぼ同じ長さのまま少しの力を使うことを繰り返すだけという状況になり、筋肉自体の軟らかさが失われます。大きな伸長・短縮も大きな力を発揮することもないまま何年もそれが続くので筋力は低下していきます。

筋肉は関節を挟んで1対存在し、片方を引っ張ると片方が伸びるというようにして関節運動を行っていますが、筋力が衰えるとその分、骨格や関節にかかる負担が増えることから関節、椎間板の変形や肥厚、劣化が進み引いては椎間板ヘルニアや慢性的な腰痛をひき起こす原因となりえます。骨格にかかる負担を軽減するためにも筋力をバランスよく維持することはとても重要になります。

“立つ”時にかかる腰の負担を”1″とすると、座っている姿勢は”1.5″程度。
座っている方が体の負担は少なそうですが、実は座っている時の方が腰に負担がかかっている状態であることを認識しておく必要があります。

もともと同じ姿勢で立ち続ける、座り続けるという動作は生理的な動作ではありません。そういった意味では現代生活は身体には非常に不自然な負担を強いる体に厳しい社会なのかも知れません。