再生医療(幹細胞治療)|投与細胞数と継代回数・品質【北青山D.CLINIC】
「幹細胞○億個を保証」は何を意味するのか ― 継代回数と細胞の質
細胞数を保証するには継代を重ねる必要があり、継代の多い細胞は質が落ちます。当院は数ではなく、継代3〜5回・培養3〜4週の基準を守ります。
「数を保証する」とは、無理に細胞を増やし続けることを意味します。患者さんにとって分かりやすい約束ですが、それを果たすためには細胞に無理な負担をかけて品質を損ねる可能性が大です。幹細胞の投与細胞数を「保証」するには、採れる細胞が少ない場合に継代を重ね、培養期間を延ばして増やし続ける必要があります。継代を重ねた間葉系幹細胞は免疫を調整する力を失い、炎症を促す方向へ変化することが報告されており、臨床試験の解析では静脈投与の至適用量は1〜1.5億個で、2億個以上ではむしろ効果が低下する傾向が示されています。当院は継代3〜5回以内・培養3〜4週間以内を基準とし、投与細胞数を保証しません。
- 3〜5回継代回数の上限
- 3〜4週間培養期間の上限
- 約1.15億個7年間の平均投与細胞数
- 保証しません投与細胞数
このページで分かること
- 「数を保証する」製造法が、細胞に何を強いるか
- 継代・用量と細胞の質に関する研究
- 当院の品質基準(継代・培養期間・マーカー確認・保管)と、数を保証しない理由
1.「○億個を保証」するには何が必要ですか
少量の脂肪から取り出せる幹細胞の数と、その増え方には大きな個人差があります。約束した数に届かなければ、継代(細胞を植え継いで増やす操作)を重ね、培養期間を延ばして増やし続けるしかありません。
「数を保証する」とは、足りない分を増やし続けることを意味します。患者さんにとって分かりやすい約束ですが、その約束を守るために細胞に何をしているのかは、数字の外側にあります。
2.継代を重ねると細胞に何が起きますか
免疫を調整する力が落ちる
継代を重ねた間葉系幹細胞では、免疫を調整する力が落ち、むしろ炎症を促す方向へ変化することが報告されています。
Yang M, et al. Biochem Biophys Res Commun. 2020;525(3):633-638.
分泌するシグナルの中身が変わる
分裂を繰り返した細胞は老化の性質を帯び、分泌するシグナルの中身そのものが変わることが報告されています。
Miclau K, et al. Aging Cell. 2023;22(1):e13759.
増やせば増やすほど、「別の細胞」になっていく、と言えます。細胞の数は増えても、その細胞がもともと持っていたはたらきが同じまま保たれているとは限りません。幹細胞の主なはたらきが分泌するシグナルであることは、幹細胞治療はどう効くのかで詳しく説明しています。
3.臨床でも継代の少なさが結果を分けましたか
継代1〜2回と3〜4回で、1年生存率に差があった
移植片対宿主病(GvHD)などの患者31名を対象とした研究では、継代1〜2回の細胞を受けた群の1年生存率が75%、継代3〜4回の細胞を受けた群は21%でした(P<0.01)。同じ間葉系幹細胞でも、継代の回数で結果が変わったのです。
von Bahr L, et al. Biol Blood Marrow Transplant. 2012;18(4):557-564.(骨髄由来・他家細胞)
この研究の読み方
他施設・他疾患・他家の骨髄由来細胞についての報告であり、当院の自家脂肪由来細胞治療の効果を示すものではありません。継代回数が細胞の性質に影響しうることを示す一例としてご紹介しています。
4.細胞は多いほど効くのですか
至適用量は1〜1.5億個。2億個以上では効果が低下する傾向
2004〜2018年に登録された914件の間葉系幹細胞の臨床試験を解析した研究では、静脈投与で効果が最も見込まれる用量は1〜1.5億個の範囲で、2億個以上ではむしろ効果が低下する傾向(逆U字型の用量反応)が示されました。
Kabat M, et al. Stem Cells Transl Med. 2020;9(1):17-27.
用量には至適な範囲があり、多ければ良いという話ではありません。当院の7年間の平均は1回あたり約1.15億個で、この範囲に収まっています。年ごとの投与細胞数は、データページに表で公開しています。
※ この解析は静脈投与についてのものです。局所投与や髄腔内投与では、標的に届く細胞の数そのものが変わるため、同じ用量の考え方は当てはまりません(幹細胞の投与経路の違い)。
5.当院の品質基準は何ですか
| 項目 | 当院の基準 | 理由 |
|---|---|---|
| 継代回数 | 3〜5回以内 | 増やしすぎない |
| 培養期間 | 3〜4週間以内 | 延ばさない |
| 投与細胞数 | 5千万〜2億個(7年間の平均 約1.15億個/回)。保証はしません | 至適範囲に収める |
| 培養の場所 | 院内のCPC2施設(第1CPC 施設番号FC3210045/第2CPC「ARK WISE 細胞培養加工施設」施設番号FA3250001)。細胞培養加工士が常駐 | 輸送による細胞への物理的な刺激を避け、回収直後の細胞を投与する |
| 品質の確認 | 間葉系幹細胞に特有の陽性マーカー・陰性マーカーの発現を指標とした評価体制を確保。必要時・ご希望時にフローサイトメーターで定量解析 | 細胞の分化状態や純度を客観的に確認する |
| 不要細胞の除去 | 培養開始の段階で治療に不要な細胞を除去。安全キャビネット内で作業し、培養中も日常的に状態を管理 | 汚染の防止と純度の確保 |
| 凍結保管 | -196℃の凍結保管施設で管理。追加投与の際に拡大培養して投与 | 計画的な投与と、1回の採取での反復治療を可能にする |
当院は、投与細胞数を「保証」しません。数を約束するために質を犠牲にしない、ということです。基準を守った結果として得られた投与細胞数を、そのままお伝えします。数字が小さく見えることがあっても、その患者さんの細胞の力を最大限に引き出した結果としての数字です。
培養する場所 ― 院内のCPC

当院では、外部に培養施設を置かずにクリニック内6階に細胞培養加工施設(施設番号 FC3210045)を設置しています。さらに2025年9月には、当院のMS法人である株式会社アークワイズが「ARK WISE 細胞培養加工施設」(施設番号 FA3250001)の許可を取得しました。組織を採取してから幹細胞を分離するまで、培養を終えてから投与するまでの時間が短く済みます。

▲安全キャビネットと細胞培養加工士による細胞処理の様子

▲分離した細胞をもとに培養した間葉系幹細胞
- 幹細胞治療:当院のこだわり1(院内CPC/ショート動画) 細胞を外部に運ばず院内で培養することの意味を、院長が短時間で解説します。
- 幹細胞の品質へのこだわり(ショート動画) 継代回数・培養期間・マーカー確認で質を担保するという考え方を解説します。
品質の確認 ― マーカーの発現をみる
培養法の妥当性を確認するため、間葉系幹細胞に特有の陽性マーカーおよび陰性マーカーの発現を指標とした評価を行う体制を確保しています。幹細胞マーカーの確認は、細胞の分化状態や純度を評価するうえで重要な指標です。治療経過や細胞の状態について医学的な確認が必要と判断される場合、また患者さんからご希望があった場合には、フローサイトメーター(細胞表面マーカーを測定し、目的とする細胞の性質や混入の有無を客観的に評価する検査機器)を用いてマーカーの発現を定量的に解析します。
凍結保管 ― -196℃で預かる
培養した幹細胞は、-196℃の凍結保管施設で管理しています。保管した細胞は、追加投与の際に拡大培養して新鮮な状態で投与します。凍結保管により、患者さんのスケジュールに合わせて計画的に投与でき、1回の脂肪採取で繰り返し治療を行うことができます。
超低温冷凍保管の意義と効果
治療を行うなかで超低温による細胞の冷凍保管を行う意義と、その効果について解説しています。
この動画で解説している内容
- -196℃で細胞を保管するしくみ
- 保管した細胞を追加投与に用いるまでの流れ(拡大培養)
- 1回の脂肪採取で繰り返し治療を行えることの意味
6.医療機関には何を尋ねればよいですか
「何億個ですか」ではなく、次の4つが、細胞の質にこだわっているかを確認するうえで大切な問いです。
| 尋ねること | 当院の答え |
|---|---|
| 何回継代しましたか | 3〜5回以内を基準としています。治療の説明時にお伝えしています |
| 培養は何週間ですか | 3〜4週間以内を基準としています |
| 培養はどこで行っていますか | 院内のCPC2施設(FC3210045/FA3250001)です。外部への輸送はありません |
| 品質はどう確認していますか | 陽性・陰性マーカーの発現を指標とした評価体制を確保し、必要時・ご希望時にフローサイトメーターで定量解析します |
これらの質問に具体的に答えられる医療機関かどうかを、カウンセリングの場でご確認ください。当院の答えが唯一の正解というわけではありません。ご自身で比べていただくための問いです。
このほかに確かめていただきたい点は、別ページに6つの質問としてまとめています。
7.よくある質問
| Q&A |
|---|
| Q. 細胞数が少ないと効果も弱いのですか A. 臨床試験の解析では、静脈投与の至適用量は1〜1.5億個の範囲で、それ以上で効果が高まる傾向は示されていません。当院の平均は1回あたり約1.15億個です。 |
| Q. 継代回数は患者が確認できますか A. 医療機関に尋ねれば答えられるはずの情報です。当院は3〜5回以内を基準とし、治療説明時にお伝えしています。 |
| Q. 培養期間が長いと何が問題ですか A. 継代と分裂の回数が増え、細胞の老化と免疫調整力の低下につながることが報告されています。 |
| Q. 凍結保管した細胞は質が落ちませんか A. -196℃での保管後、追加投与の際に拡大培養して新鮮な状態で投与します。保管により、1回の脂肪採取で複数回の治療を計画的に行うことができます。 |
| Q. 実際には何個投与されるのですか A. 1回あたり5千万〜2億個で、2019〜2025年の平均は約1.15億個です。増え方には大きな個人差があり、数を保証していないため、実際の数は培養の結果としてお伝えします。年ごとの推移はデータページに公開しています。 |
8.出典・関連ページ
出典
- Yang M, et al. Biochem Biophys Res Commun. 2020;525(3):633-638.
- Miclau K, et al. Aging Cell. 2023;22(1):e13759.
- von Bahr L, et al. Biol Blood Marrow Transplant. 2012;18(4):557-564.
- Kabat M, et al. Stem Cells Transl Med. 2020;9(1):17-27.
- Abo Y. Real-world safety profile of repeated outpatient autologous adipose-derived mesenchymal stromal cell therapy. Stem Cell Res Ther. 2026(採択・早期公開版). doi:10.1186/s13287-026-05213-z
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関連動画
- 超低温冷凍保管の意義と効果 2024年4月3日公開・15分49秒/本ページ「5.当院の品質基準」に掲載 YouTubeで見る
- 幹細胞の品質へのこだわり(ショート動画) 継代回数・培養期間・マーカー確認で質を担保する考え方。
- 幹細胞治療:当院のこだわり1(院内CPC/ショート動画) 細胞を外部に運ばず院内で培養することの意味。
- CPCを自院に併設した理由(院内配信動画・33秒) 細胞培養加工施設(CPC)のページに掲載しています。