再生医療(幹細胞治療)|なぜ投与する幹細胞の数は人によって違うのか ― 増殖能・継代数・培地環境【北青山D.CLINIC】

なぜ投与する幹細胞の数は人によって違うのか ― 増殖能・継代数・培地環境

培養できる細胞の数には個人差があります。当院は数を増やすために継代を重ねることはせず、基準の範囲で得られた数をそのままお伝えしています。

幹細胞による再生医療を安全に、かつ効果的に行うためには、細胞の質と適切かつ十分な細胞数の二つが重要になります。細胞数が多くても細胞の質が低ければ治療効果が得られにくく、身体に負担がかかる場合があります。また近年では、細胞数が過量の場合に血管のトラブルが生じる可能性も指摘されています。こうした背景を踏まえ、患者さんからいただく「投与数」に関するご質問にお答えします。

  • 3〜5回継代回数の上限(当院の基準)
  • 3〜4週間培養期間の上限(当院の基準)
  • 5千万〜2億個1回あたりの投与細胞数
  • 3つ細胞数に関わる条件

このページで分かること

  • 同じ治療でも、投与できる細胞数が人によって違う理由
  • 細胞数を左右する3つの条件(増殖能・継代数・培地環境)
  • 細胞数が平均より少ないときに、当院がどう考えるか

1.患者さんからのご質問と、当院の回答

ご質問私の今回の幹細胞投与量は8,000万個でした。友達は2億個の投与を受けられたと聞きました。私の細胞数が少なかった理由は何ですか。

当院の回答自家由来の幹細胞治療では、治療効果を考えるうえで細胞の個数だけではなく、細胞の質も重要です。近年では「数」よりもむしろ「質」が重要であることが示唆されています。今回は細胞数が平均より少なめであっても、培養し得るベストの状態の細胞を投与しています。次回の投与においては、今回の細胞の状況を踏まえ、下記③の培地環境を含めた培養条件の工夫を検討します。

細胞数には、ご本人の体質や採取時の状態による個人差があります。数が少なめであること自体が、治療の質が低いことを意味するわけではありません。

2.投与細胞数にかかわる3つの条件

幹細胞の投与細胞数には、主に以下の3点が関係します。

投与できる細胞数を左右する3つの条件
条件 細胞数への影響
① 幹細胞の増殖・分裂能力個人差が大きく、②③が同じ条件でも培養できる細胞数が変わります
② 継代数重ねるほど数は増やせますが、細胞の質が劣化する傾向があります
③ 血清・培地環境血清の量・濃度や培地の種類によって、増えやすさが変わります

① 幹細胞の増殖・分裂能力

幹細胞の増殖・分裂能力には個体差があります。②③の条件が同じであっても、ご本人の増殖能・分裂能が培養可能な細胞数に大きく影響します。

② 継代数(細胞を新しい培養容器に植え継ぐ回数)

継代数が多いほど細胞数は増やせますが、継代数が増えるほど細胞の質が劣化する傾向があります。当院では継代3〜5回以内・培養3〜4週間以内を基準とし、その範囲内で得られた細胞を投与しています。基準の範囲で5千万〜2億個程度まで増やせれば、投与により治療効果が期待できるとされています。

なお、2億個を超える細胞数では毛細血管への負担が増える可能性も指摘されており、「多ければ多いほど良い」という単純な考え方ではない点にも留意が必要です。

「○億個を保証」という表示について

細胞数をあらかじめ約束するには、採れる細胞が少ない場合に継代を重ね、培養期間を延ばして増やし続ける必要があります。当院が投与細胞数を保証しないのは、この理由によるものです。

③ 血清・培地環境

細胞の培養には、良質の血清と適切な培地が必要です。血清は安全性の観点から原則として自己血清を使用します。自己血清にも個人差があるため、濃度調整をしながら使用しますが、準備できた血清の量によっては十分な濃度が得られない場合があります。そのような場合に培養環境を整える目的で、無血清培地を用いることがあります。また当院では、増殖・分裂能を高めやすい培地を選定して使用しています。

※ 自家血清培養法と無血清培養法は、どちらを選ぶかによって費用が異なります。詳しくは治療の費用をご覧ください。

3.数が少なめだったときに、どう考えればよいか

臨床試験の解析では、静脈投与で効果が最も見込まれる用量は1〜1.5億個の範囲とされ、2億個以上ではむしろ効果が低下する傾向が示されています。用量には適した範囲があり、多ければ良いという話ではありません。

当院の2019年4月〜2025年12月の実績では、1回あたりの投与細胞数の平均は約1.15億個でした(最小0.04億個、最大3.71億個)。年ごとの推移はデータページに表で公開しています。

当院は、投与細胞数を保証しません。基準を守った結果として得られた細胞数を、そのままお伝えします。数字が小さく見えることがあっても、その患者さんの細胞の力を引き出した結果としての数字です。培養の経過や次回の方針については、診察の場でご説明しますので、どうぞお尋ねください。

4.本ページで扱う自由診療について(限定解除事項)