再生医療(幹細胞治療)|治療のリスク【北青山D.CLINIC】
再生医療(幹細胞治療)のリスク・副作用について
医療にゼロリスクはありません。当院は449名・2,212回・553.5人年で重篤な有害事象0件ですが、これは特定のプロトコルでの観察結果であり、安全を保証するものではありません。
再生医療(幹細胞治療)をご検討中の患者さんから、「本当に安全なのか」「副作用はないのか」というご質問を多くいただきます。特に近年は、幹細胞治療に関連する事故が報道され、不安を感じておられる方も少なくないと思います。
このページでは、再生医療(幹細胞治療)に伴う一般的なリスク・副作用と、当院(北青山D.CLINIC)がこれまで積み上げてきた安全性データ、そしてリスクを低減するための具体的な取り組みについて、院長がご説明します。
- 449名対象患者数
- 2,212回総投与回数
- 553.5人年累積観察期間
- 0件重篤な有害事象
このページで分かること
- 一過性の副作用と、理論的に想定されるリスク(血栓塞栓症・感染・腫瘍化)
- 当院の安全性データと、その数字から言えること・言えないこと
- 報道された死亡事案をどう受け止めるか、医療機関を選ぶ際に確認したい視点
1.再生医療(幹細胞治療)に伴う一般的なリスク・副作用
軽度で一過性の副作用(比較的頻度が高いもの)
- 発熱(多くは投与後24時間以内に自然に治まる軽度のもの)
- 血圧の一時的な上昇
- 脂肪採取部・注射部位の内出血・疼痛
- 酸素飽和度(SpO₂)の軽度な一過性低下
理論的に想定されるリスク(頻度は低いが、説明が必要なもの)
- 血栓塞栓症のリスク:間葉系幹細胞は細胞表面に組織因子を発現することがあり、点滴投与(経静脈投与)時に、まれに血液凝固反応(IBMIR:血液媒介性炎症反応)を引き起こす可能性が国際的に指摘されています。日本再生医療学会は2025年5月、経静脈内投与の安全な実施に関する提言を公式に発出しています。
- 感染のリスク:採取・培養・投与の各過程における無菌管理が不十分な場合に生じうるリスクです。
- 腫瘍化のリスク:iPS細胞・ES細胞などの多能性幹細胞では、未分化のまま残った細胞がテラトーマ等の腫瘍を形成する理論的リスクが議論されています。間葉系幹細胞(MSC)は多能性を持たないため、この種のリスクは原理的により低いとされていますが、ゼロと言い切れるものではありません。
これらのリスクへの向き合い方には、医療機関ごとに差があります。同じ「幹細胞治療」という言葉で語られていても、細胞の品質管理体制、投与設計(細胞数・速度・経路)、投与中・投与後のモニタリング体制の実装レベルは、施設によって異なるというのが実情です。
※ 投与経路ごとの注意点(点滴・局所注射・髄腔内投与・動脈カテーテル投与)は、幹細胞の投与経路の違いにまとめています。
2.当院の安全性データ(臨床実績)
当院は、2019年4月から2025年12月末までの約7年間、自家脂肪由来間葉系幹細胞(AT-MSC)治療のすべての実績を後ろ向きレジストリ研究として記録し、統計解析を継続しています。
| 対象患者数 | 449名 |
|---|---|
| 総投与回数 | 2,212回 |
| 累積観察期間 | 553.5人年 |
| 重篤な有害事象(SAE) | 0件 |
| 治療に起因する血栓塞栓症・入院・死亡 | いずれも0件 |
この結果は、当院院長・阿保義久が執筆した論文として、幹細胞・再生医療分野の国際的な査読誌『Stem Cell Research & Therapy』(Springer Nature/BMC発行、オープンアクセス)に採択されており、正式公開に先立つ早期公開版(Article in Press)として、査読を経た内容が公開されています(正式版の公開までには数か月程度を要する見込みです)。
Abo Y. Real-world safety profile of repeated outpatient autologous adipose-derived mesenchymal stromal cell therapy: a single-center registry of 2,212 administrations with 553.5 person-years of follow-up. Stem Cell Research & Therapy. 2026(採択・早期公開版). doi:10.1186/s13287-026-05213-z
この数字の読み方
重篤な有害事象0件は、「2,212回の観察で発生しなかった」という事実であり、リスクがゼロであることを意味しません(重篤有害事象の発生率の上側95%信頼区間は、1回あたり0.14%です)。また、上記の実績は当院が実施している特定のプロトコル(院内での培養・回収、静脈内投与時の予防的抗凝固管理を含む)における観察結果であり、他の医療機関の治療や、異なる細胞・投与方法・対象疾患にそのまま当てはめられるものではありません。治療の効果を保証するものでもありません。
3.リスクを低減するための当院の取り組み
- 自家細胞のみを使用:患者さんご自身の脂肪組織由来の細胞のみを培養・投与し、他人由来細胞(同種他家MSC、臍帯由来MSC等)は使用していません。
- 院内CPC(細胞培養加工施設)による一貫管理:脂肪採取から培養・品質確認・投与までを院内で完結させています。2025年には第2CPC(ARK WISE 細胞培養加工施設)を加えた2施設体制とし、製造能力の安定確保と運用の連続性を高めています。
- 新鮮処理・低継代運用:培養期間・継代回数を必要最小限に抑え、細胞の老化・品質変化を抑える設計としています(継代3〜5回以内、培養3〜4週間以内を基準)。
- 静脈内投与時の予防的抗凝固管理:日本再生医療学会の提言等を踏まえ、点滴静注を含む投与では予防的なヘパリン投与とモニタリング体制を実施しています。
- 特定認定再生医療等委員会による継続審査:治療の提供計画は院内に設置した委員会の審査・承認を経ており、厚生労働省への届出も行っています。
- 全例のレジストリ化と継続的な検証:すべての治療実績を記録し、定期的な統計解析結果を委員会に報告するとともに、学術論文として外部の検証を受けています。
- 丁寧なインフォームドコンセント:期待できる効果だけでなく、限界・リスク・費用・回数、さらに「治療を受けない」という選択肢まで含めて時間をかけてご説明し、その場での即決を求めることはありません。
※ 継代回数・培養期間を基準とする考え方の根拠は、「幹細胞○億個を保証」は何を意味するのかで詳しく説明しています。
4.再生医療をめぐる事故報道について
2025年8月、都内のクリニックで、慢性疼痛に対する自家脂肪由来間葉系幹細胞の点滴投与中に患者さんが急変し、死亡されたことが公表されました。厚生労働省は同月、当該医療機関および細胞培養加工施設に対し、再生医療等安全性確保法に基づく業務一時停止命令を発出しています。さらに2026年3月にも、都内の別のクリニックで同様の事案が報じられ、緊急の業務停止命令が出されました。
半年余りの間に、同じカテゴリーの治療で2件の死亡事案が公表されたという事実は、同じ再生医療に携わる医療機関として、重く受け止めています。亡くなられたお二人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
報道によれば、両事案とも「自家脂肪由来間葉系幹細胞の経静脈内投与」という同一カテゴリーの治療中に生じたとされています。ここで重要なのは、「幹細胞そのものが危険である」ということではなく、「経静脈内投与という投与経路、および周辺の運用体制」に共通の論点が存在する可能性がある、という点です。日本再生医療学会も2025年5月、こうした事案の発生に先立ち、経静脈内投与の安全な実施に関する提言を公式に発出していました。
また、再生医療等安全性確保法に基づき提供計画が届出・受理されていることは、治療の安全性や有効性そのものを国が保証していることを意味するものではない、という点も、患者さんにも医療者にも正確に共有される必要があると考えています。自由診療として提供される再生医療は、医師の責任のもとで提供される適法な医療ですが、保険診療のように国が安全性・有効性の双方を審査・承認した医療ではありません。
危険なのは「幹細胞治療」という治療カテゴリーそのものではなく、細胞の品質管理、投与設計(細胞数・速度・経路)、適応判断、投与中・投与後のモニタリング体制、有害事象発生時の対応体制など、これらの実装レベルを軽視した運用であると、私たちは理解しています。今回の事案を「幹細胞治療全体の否定」に結びつけることは適切ではありませんが、同時に、業界全体としてこの「影」の部分に真摯に向き合う必要があると考えています。
もし報道等で不安を感じておられる方がいらっしゃれば、まずはご自身が受けている、あるいは検討されている治療が、どのような体制・データのもとで提供されているのかを、遠慮なく医療機関にご確認いただきたいと思います。当院は、そうしたご質問にいつでも誠実にお答えする用意があります。
- 再生医療の光と影(ショート動画) 保険診療を補完する再生医療の価値と、営利を優先する医療機関が増えている現状の両面を院長が短時間で解説します。
- 再生医療の影:営利至上の医療機関台頭(ショート動画) 医療機関が急増するなかで、患者さんが注意すべき点を解説します。
5.医療機関を選ぶ際に確認したい視点
再生医療を検討される際は、以下の視点をご確認いただくと、客観的な判断がしやすくなります。
- 再生医療等安全性確保法に基づく届出がなされているか(計画番号等の開示)
- 特定認定再生医療等委員会の審査を経ているか、その審査体制はどのようなものか
- 期待できる効果だけでなく、限界・リスク・有害事象の頻度まで具体的に説明されるか
- 細胞の培養場所・品質管理体制が明確にされているか(自院内/外部委託の別を含む)
- 治療実績がレジストリ化・データ化され、論文等の形で外部の検証を受けているか
- 「必ず治る」「副作用はない」といった、誇大な広告表現がないか
- 即決を迫らず、質問に正面から答えてくれるか
それぞれの確認の仕方と、当院の回答は別ページにまとめています。
6.よくあるご質問(Q&A)
Q1再生医療(幹細胞治療)は絶対に安全ですか?
A. 医療にゼロリスクは存在しません。当院では2,212回の投与実績において重篤な有害事象は確認されていませんが、これは当院が実施している特定のプロトコルにおける観察結果であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。
Q2幹細胞治療にはどのような副作用がありますか?
A. 軽度で一過性の発熱、血圧の一時的な上昇、脂肪採取部・注射部位の内出血や疼痛、酸素飽和度の軽度な一過性低下などが報告されています。多くは医療的な介入なく自然に消失します。まれに、点滴投与時の血栓塞栓症など、より注意を要するリスクも理論的に指摘されています。
Q3他院で報告されている死亡事案について、どう考えればよいですか?
A. 同じ再生医療に携わる医療機関として、こうした事案は重く受け止めています。重要なのは治療のカテゴリー自体を否定することではなく、細胞の品質管理や投与設計、モニタリング体制など、医療機関ごとの運用レベルを確認することです。
Q4当院の安全性データはどこで確認できますか?
A. 当院の治療実績は、国際的な査読誌『Stem Cell Research & Therapy』に採択された論文として、正式公開に先立つ早期公開版(Article in Press)が公開されています(doi:10.1186/s13287-026-05213-z)。449名・2,212回の投与、553.5人年の観察において、重篤な有害事象は0件でした。有害事象の内訳は7年間の治療実績データに表で公開しています。
Q5リスクを減らすために、当院ではどのような工夫をしていますか?
A. 自家細胞のみの使用、院内細胞培養加工施設(CPC)2施設による一貫した品質管理、静脈内投与時の予防的抗凝固管理、全例のレジストリ化と継続的な検証、丁寧なインフォームドコンセントなどに取り組んでいます。
Q6治療後に副作用が起きた場合、どのように対応してもらえますか?
A. 投与中・投与後は院内でモニタリングを行い、有害事象が生じた場合には速やかに対応する体制を整えています。詳細は診察時にご説明します。
Q7信頼できる医療機関かどうか、どこを確認すればよいですか?
A. 再生医療等安全性確保法に基づく届出の有無、特定認定再生医療等委員会の審査状況、リスクや限界についての説明の丁寧さ、治療実績のデータ化・検証状況、広告表現の適切さなどが確認の目安になります。
7.リスクに関するご相談について
当院では、カウンセリング時に、期待できる効果だけでなく、限界・リスク・費用・回数、さらに「治療を受けない」という選択肢まで含めて、時間をかけてご説明することを大切にしています。費用については治療の費用のページもご参照ください。
ご自身の症状に適した治療かどうか、リスクも含めてご不明な点がございましたら、どうぞお気軽に外来でご相談ください。