再生医療(幹細胞治療)|セクレトーム(培養上清液)と規制【北青山D.CLINIC】

幹細胞セクレトーム(培養上清液)とは ― 利点と限界、そして国が進める規制の議論

培養上清液は細胞を含まない上澄み液です。薬事承認を得た医薬品は国内外に存在せず、当院は補完的に用いつつ規制強化に賛成します。

培養上清液とは、間葉系幹細胞を培養したあとに残る上澄みの液体で、細胞そのものは含まず、細胞が分泌した成分(幹細胞セクレトーム:成長因子・サイトカイン・エクソソーム・細胞外小胞)を含みます。厚生労働省は「諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品はありません」と明記しており、2026年現在、法規制の対象に加えるかどうかの議論が国で進んでいます。当院はこの規制強化に賛成する立場です。

はじめにお読みください

培養上清液・エクソソームを用いる医療は、現時点で有効性・安全性が示されて薬事承認を得た医薬品が国内外に存在しません(厚生労働省 令和6年7月31日事務連絡)。したがって当院は、この治療に効果があると申し上げることはできません。本ページは、何が分かっていて何が分かっていないのかを整理するためのものです。

このページで分かること

  • 培養上清液(幹細胞セクレトーム)の定義と、幹細胞治療との関係(主軸と補完)
  • 性質上の利点と限界、体内でのふるまい(動物モデル)
  • 2024年6月〜2026年7月の規制議論の経緯と、当院の立場

1.培養上清液/幹細胞セクレトームとは何ですか

培養上清液とは、細胞を培養したあとに残る上澄みの液体です。細胞そのものは含まれません。その中に含まれる、細胞が分泌したもの――成長因子・サイトカイン・エクソソーム・細胞外小胞などを総称して「幹細胞セクレトーム」と呼びます。

幹細胞治療の主なはたらきがパラクライン作用(細胞が放出するシグナルによる作用)だとすれば、そのシグナルを直接届けたらどうか。これが「幹細胞セクレトーム治療」の発想です。

幹細胞治療と培養上清液(セクレトーム)治療の違い
項目 幹細胞治療 培養上清液(セクレトーム)治療
投与するもの生きた細胞細胞が分泌した成分(細胞は含まない)
由来患者さんご自身(自家)ドナー(他家)
法律上の扱い再生医療等安全性確保法 第二種(届出が必要)現時点では法の規制対象外・未承認
当院での位置づけ主軸補完

2.当院で用いる培養上清液について

当院で用いる培養上清液/幹細胞セクレトームは、他の方の細胞に由来します(他家)。大学病院に附属する細胞培養加工施設などで製造されたものを用いており、由来する組織は脂肪・歯髄・臍帯です。

当院で用いる培養上清液の入手経路
項目 内容
細胞の由来他家(ドナー由来)
由来する組織脂肪・歯髄・臍帯
製造元国内のGMP準拠細胞培養加工施設(CPC)、および大学病院に併設されたラボの研究環境で製造されたものを使用しています
ドナースクリーニング感染症検査(B型肝炎・C型肝炎・HIV・梅毒等)を含む適格性審査を経たドナー細胞のみを採用しています。ドナー情報は記録・管理しています
輸入の有無個人輸入によるものではありません
費用由来する組織と本数によって異なります。最新の料金は幹細胞セクレトーム(エクソソーム含有液)投与の料金一覧(別サイト/新しいタブで開きます)をご覧ください。投与方法(点滴・局所注射・エレクトロポレーション導入)による料金の差はありません

素性の確認できない「試薬」と称する製品を投与することはありません。厚生労働省は2024年7月31日、治療目的でないにもかかわらず試薬として販売され、医薬品的な効果をうたう製品について、指導・取締りの徹底を各自治体に求める事務連絡を発出しています。

3.利点と限界は何ですか

培養上清液(セクレトーム)の性質上の利点と限界
区分 内容
利点細胞ではないため、免疫の拒絶や血管を詰まらせる懸念がない
保存・取り扱いがしやすい
反復して用いやすい
限界体の状況に応じて分泌を調整できない
分化する能力はない
半減期が短く、反復や高用量が必要となる可能性がある
他家(ドナー由来)であり、ドナーのスクリーニングと感染症対策が前提となる
製品ごとに含有成分が異なり、規格が統一されていない

そして、大事な点ですが、厚生労働省は、培養上清液やエクソソームを用いる医療について、諸外国を含め有効性・安全性が示されて薬事承認を得た医薬品は存在しない、と明言しています。よって、現時点でこの治療に効果があると公言することはできません。

なお、日本再生医療学会は「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」を公表しており、厚生労働省の事務連絡も、当該医療を行う際にこのガイダンスを参照するよう求めています。

4.体内でどうふるまうのですか

静脈投与された細胞外小胞の血中循環時間は約4時間、24時間後には肝臓に多く蓄積すると報告されています(Vos J, et al. J Control Release. 2022;350:642-651.)。投与経路によって到達先は変わり、気管から入れれば肺に、鼻から入れれば脳に、24時間後もとどまることが報告されています。単回投与でも数週間にわたって変化が観察されたという報告もあります。

読むうえでの注意

ここで紹介した研究は、いずれも動物での研究です。人での有効性が確立したという意味ではありません。また、当院の治療効果を示すものでもありません。

細胞を投与する場合も、経路によって体内での分布は大きく変わります。その違いは幹細胞の投与経路の違いにまとめています。

5.国ではどんな議論が進んでいますか

現在、培養上清液は細胞を含まないため、再生医療等安全性確保法の規制対象外です。つまり、いまはルールの外側にあります。その状態を変えるための議論が、2024年から段階的に進んでいます。

  • 2024年6月14日 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律」が公布。附則に、細胞の分泌物を用いた医療技術・医療の提供について、施行後2年をめどに法制上の措置を講じる旨が盛り込まれました。 出典:改正法 附則第2条第1項 ▶ 再生医療等について:関係法令、その他関係通知等(厚生労働省)
  • 2024年7月31日 厚生労働省が2つの事務連絡を発出。医政局研究開発政策課は、培養上清液・エクソソーム等について「諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品はありません」と明記し、実施する医師・歯科医師の責任のもとで安全性に留意するよう求めました。医薬局監視指導・麻薬対策課は、エクソソームを「試薬」と称して販売し医薬品的な効果をうたう製品について、指導・取締りの徹底を各自治体に求めました。 出典:▶ 幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)/▶ エクソソーム試薬に係る監視指導について
  • 2026年5月 厚生労働省の研究班が、エクソソーム・培養上清を法規制の対象とする必要があるとの考えを示しました。 出典:報道(共同通信、2026年7月1日配信)
  • 2026年7月1日 厚生労働省の作業部会が、エクソソーム・培養上清を規制の対象とするかどうかの議論を開始しました。今後、報告書を取りまとめる予定です。 出典:報道(共同通信、2026年7月1日配信)

※ 本ページは、規制に動きがあった時点で内容を更新しています。最新の状況は下の更新履歴をご確認ください。

更新履歴

  • 2026年10月3日関連ページへのリンクを追加(投与経路・細胞の質・選び方・よくある質問の各ページ公開に伴う更新)。規制に関する記載の変更はありません
  • 2026年9月28日初版公開(2024年6月〜2026年7月の経緯を掲載)

6.当院はなぜ規制強化に賛成なのですか

当院の培養上清液/幹細胞セクレトームは他家由来です。いま国が議論している対象そのものであり、他人事ではありません。そのうえで、私たちは規制強化に賛成です。理由は三つあります。

  1. 同じ規律をすでに運用しているから。当院の主軸は再生医療等安全性確保法に基づいて届け出た細胞治療です。院内の細胞培養加工施設(CPC)と特定認定再生医療等委員会という体制をすでに確保しており、同じ規律を培養上清液にも適用できます。
  2. 入手元を開示しているから。製造元と製造工程を確認できるものだけを用い、素性の分からない「試薬」を投与しているわけではありません。
  3. 治療成績を外部の検証にさらしているから。治療成績をレジストリとして集計し、学術誌に投稿して査読を受けています。

ルールができて困る医療機関と、困らない医療機関があるとすれば、私たちは後者でありたいと考えています。医療機関を選ぶ際に確かめていただきたい点は、再生医療クリニックの選び方にまとめています。

7.幹細胞治療と培養上清液治療は、どう使い分けるのですか

細胞は継続的に因子を放出し、体の微小環境に応じて分泌を調整し、分化する能力もあります。セクレトーム治療は一度きりで、調整も分化もできません。脊髄損傷の動物モデルでは、細胞のみが28日目まで運動機能の改善を維持し、細胞外小胞は7日目までの早期回復にとどまりました(Zhao AG, et al. Stem Cells Int. 2020;2020:8825771.)。

細胞は生きた工場、培養上清液(セクレトーム)はそこから取り出した資材です。だから当院は細胞治療を主軸に置き、培養上清液/セクレトーム治療を補完と位置づけます。すべての疾患で「どちらが優れている」という単純な答えはなく、疾患・目標・投与経路・安全性の要件で適した選択は変わります。

再生医療の全貌

2022年2月15日公開51分23秒解説:北青山D.CLINIC 院長 阿保 義久公式YouTube

当院で行っている再生医療(幹細胞投与)を詳しく解説しています。PRP投与、培養上清液投与にも言及しています。

この動画で解説している内容

  • 当院の幹細胞治療の全体像(採取・培養・投与)
  • PRP(多血小板血漿)の位置づけ
  • 培養上清液投与の位置づけと、細胞治療との違い

8.よくある質問

Q&A
Q. 培養上清液は幹細胞治療より安全ですか

A. 細胞を含まないため血管を詰まらせる懸念はありませんが、他家(ドナー)由来のためドナーのスクリーニングと感染症対策が前提です。有効性・安全性は確立していません。
Q. エクソソームと培養上清液は同じものですか

A. エクソソームは培養上清液に含まれる細胞外小胞の一種です。国の規制議論はどちらも対象にしています。
Q. 培養上清液は再生医療等安全性確保法の対象ですか

A. 細胞を含まないため、現時点では規制対象外です。2024年6月に公布された改正法の附則で、細胞の分泌物を用いる医療について施行後2年をめどに法制上の措置を講じることが定められ、現在その議論が進んでいます。
Q. 規制されたら受けられなくなりますか

A. 議論の結論は出ていません。当院は規制の枠組みができれば、それに沿って提供を続ける方針です。
Q. 培養上清液の費用はいくらですか

A. 由来する組織(歯髄・脂肪・臍帯)と、1回の治療で用いる本数によって異なります。最新の料金は幹細胞セクレトーム(エクソソーム含有液)投与の料金一覧(別サイト/新しいタブで開きます)をご覧ください。投与方法(点滴・局所注射・エレクトロポレーション導入)による料金の差はありません。本治療は保険適用外の自由診療(全額自己負担)です。
Q. 幹細胞治療と併用できますか

A. 診察のうえで判断します。当院は細胞治療を主軸、培養上清液を補完と位置づけています。疾患・目標・安全性の要件によって適した選択は変わります。

9.出典・関連ページ

出典(公的機関・学会)

出典(学術文献)

  • Vos J, et al. J Control Release. 2022;350:642-651.
  • Tolomeo AM, et al. Pharmaceutics. 2023;15(2):548.
  • Dinh NTH, et al. Mol Neurobiol. 2026;63(1):348.
  • Zhao AG, et al. Stem Cells Int. 2020;2020:8825771.

関連ページ

関連動画

10.本記事で扱う自由診療について(限定解除事項)