再生医療(幹細胞治療)|点滴・局所・髄腔内等の投与経路の違い【北青山D.CLINIC】

幹細胞の投与経路の違い ― 点滴・局所注射・髄腔内投与・動脈カテーテル投与

同じ細胞でも、経路で行き先が変わります。当院は点滴・局所・髄腔内・動脈カテーテルの4経路を、疾患と目標に応じて選びます。

同じ幹細胞でも、投与経路が違えば体内での分布はまったく違います。点滴(静脈内)では、報告により約50〜80%がまず肺の毛細血管にとらえられます(肺の初回通過効果)。ただし、肺にとどまった細胞もシグナルを分泌して全身に作用することが報告されています。治療対象部位に直接届けたい場合には、動脈カテーテル投与で肺を迂回して標的臓器への到達率を高める、髄腔内投与で脳脊髄液を介して脳・脊髄に送達する、局所注射で患部に直接投与する、といった選択が可能です。当院はこの4経路を用意し、過去7年間の2,212回の経路別実績を公開しています。

このページで分かること

  • 4つの投与経路の違いと、体内分布の根拠
  • 経路ごとの適応と注意点
  • 当院の経路別実施実績と、経路を選ぶ考え方

1.投与経路で何が変わるのですか

変わるのは「どこに、どれだけ届くか」です。経路ごとの行き先・主な適応・注意点を一覧にまとめます。

表1 投与経路ごとの違い
経路 細胞の行き先 主な適応 注意点
静脈内投与(点滴) 報告により約50〜80%が肺の毛細血管にとらえられ、そこからシグナルを出す 全身性の疾患、加齢に伴う機能低下、肺疾患。基本の経路 血栓塞栓症の予防(当院はヘパリン5,000単位を併用し、点滴速度の管理とSpO₂モニタリングを実施)、発熱・血圧上昇
局所投与
(関節内・皮膚・筋肉)
患部に直接。肺を通らない 関節・筋骨格系、皮膚 関節注射後に一時的に疼痛が増強する場合がある、注射部痛
局所投与のうち
Cアーム(X線透視)誘導下
椎間板内や脊椎周囲の病変部へ正確に投与 椎間板症、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、膝・股関節・肘・肩の関節痛 被曝、穿刺に伴う疼痛・出血
髄腔内投与 脳脊髄液を介して脳・脊髄へ。肺での捕捉と血液脳関門を回避 神経変性疾患、認知機能障害など 腰椎穿刺の手技、一過性の腰痛・下肢痛、まれにくも膜嚢胞
動脈カテーテル投与 肺を迂回し標的臓器へ。到達率が上がる 臓器を標的とする病態 カテーテル手技、皮下出血、神経損傷のリスク

動脈から投与した場合、数時間で約70%が脳に到達したという動物モデルの報告があります(Gong P, et al. Stem Cells Int. 2021;2021:2602871.)。

2.点滴(経静脈投与)はどう位置づけていますか

点滴は身体への負担が少なく、繰り返し行いやすいという利点があり、幹細胞治療で広く用いられている基本的な投与方法です。静脈投与された幹細胞の多くはまず肺に捕捉されますが、この特性は目的によって「利点」にも「留意点」にもなります。

点滴が適している場合

全身性の炎症・免疫の調整を目的とする場合には、点滴が合理的な選択肢となります。近年の研究では、肺に捕捉された幹細胞が放出する生理活性物質や、それを介した免疫細胞の働きの変化が、全身に作用して治療効果に寄与する可能性が示されています。また、肺そのものを標的とする疾患では、肺への集積がむしろ有利に働きます。

点滴だけでは効率が下がる場合

脳・関節など「肺以外の特定の臓器・部位」に、より多くの幹細胞を届けたい場合には、点滴のみでは標的に到達する細胞数が限られます。このような場合に、髄腔内投与・動脈カテーテル投与・局所注射といった経路を選択・併用することで、送達効率を高めています。

当院の施術のうち、静脈投与を含むセッションは約89%を占めます。点滴を基本に置きながら、必要に応じて他の経路を組み合わせる、という考え方です。

3.局所投与・Cアーム誘導下投与とは何ですか

関節内・皮膚・筋肉など、患部に直接注射する方法です。肺を通らないため、全身に分散することによる損失が生じません。関節内腔は血行が乏しく、点滴では届きにくい部位のひとつです。

Cアーム(X線透視)で位置を確認しながら幹細胞を投与している様子

Cアーム(X線透視)を用いた投与の様子。モニターで針先の位置を確認しながら、目的の部位へ投与します。

Cアーム(X線透視)を用いた投与
項目 内容
方法リアルタイムのX線透視で位置を確認しながら投与します。椎間板内や脊椎周囲の病変部へ正確に届けられます。
対象膝・股関節・肘・肩などの関節痛、椎間板症、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症など、慢性疼痛に幅広く対応できます。
注意点X線透視による被曝、穿刺に伴う疼痛・出血があります。
実績2019年4月〜2025年12月に、局所投与を含む施術を469回・137名に行っています。

4.髄腔内投与とは何ですか

腰椎穿刺によって脳脊髄液の中に細胞を投与する方法です。脳脊髄液を介して脳・脊髄に直接届けられ、肺での捕捉と血液脳関門を回避できるため、神経変性疾患や認知機能障害で選択されます。当院では2019年以降、髄腔内投与を含む施術を313回・106名に行っています。

髄腔内投与のイメージ図。腰部から髄腔内へ注射し、脳脊髄液を介して脳・脊髄へ細胞が届く経路を示した図

髄腔内投与のイメージ。腰部から脳脊髄液の中に投与し、髄液の流れを介して脳・脊髄へ届けます。

髄腔内投与の実際
項目 内容
手技腰椎穿刺は外科系・麻酔科系の手技です。穿刺の際には局所麻酔および静脈麻酔を用います。
対象神経変性疾患、認知機能障害など、脳・脊髄を標的とする病態。
注意点投与後に腰痛や下肢痛が一過性に起こることがあります(当院では6件、髄腔内投与327件あたり2.0%)。因果関係は断定できないものの、くも膜嚢胞の発生が1件(0.3%)報告されています。
実績2019年4月〜2025年12月に、髄腔内投与を含む施術を313回・106名。

リスクについて

髄腔内投与は、当院の投与経路のなかで偶発症の報告がある経路です。上記の件数は、開示の対象として公開しているものです。いずれも重篤有害事象には該当していませんが、リスクがゼロではありません。適応は診察のうえで判断します。

5.動脈カテーテル投与とは何ですか

カテーテルを動脈に進め、標的臓器を灌流する動脈から細胞を投与する方法です。肺の毛細血管にとらえられる過程を迂回できるため、標的臓器への到達率が上がり、投与した細胞のロスを抑えられます。

カテーテル投与のイメージ図。腕の血管から挿入したカテーテルを体内に進め、目的の部位の近くから投与する経路を示した図

カテーテル投与のイメージ。カテーテルを進め、目的とする部位の近くから細胞を投与します。

動脈カテーテル投与の実際
項目 内容
手技心臓血管外科、循環器内科、放射線科系の手技が求められます。
対象特定の臓器を標的とする病態。
注意点カテーテル手技に伴う皮下出血、神経損傷のリスクがあります。
実績2019年4月〜2025年12月に25回・9名。4経路のなかでは最も限定的に用いています。

6.当院の経路別実施実績

実臨床で実施してきた経路別の回数を、そのまま公開します。集計の単位が異なる2つの表を併記しています。

表2 投与経路の組み合わせ別 施術回数(2019年4月〜2025年12月/査読論文の集計)
投与経路 施術回数 患者数
点滴(静脈内)のみ1,380345名
点滴+局所注射454134名
髄腔内17853名
点滴+髄腔内12050名
動脈カテーテル259名
点滴+髄腔内+局所153名
その他の組み合わせ40―
合計2,212449名
表3 投与方法別の実施件数(延べ実数/2019年3月〜2026年1月31日・院内レジストリ最新集計)
投与方法 実施件数
局所投与509件
経静脈投与1,932件
経動脈カテーテル投与37件
髄腔内投与327件

※ 表2は「1回の施術で用いた経路の組み合わせ」を単位に、表3は「経路ごとの延べ実施件数」を単位に集計しています。集計軸と対象期間が異なるため、両表の数値は一致しません(表3は複数経路を併用した施術を経路ごとに重複して数えています)。

再生医療の治療成果と投与例

2022年9月6日公開14分02秒解説:北青山D.CLINIC 院長 阿保 義久公式YouTube

実際の培養方法・特長などを交えて解説しています。実例として、慢性疼痛、認知症、動脈硬化に対する治療成果と投与例を紹介します。

この動画で解説している内容

  • 当院の培養方法と、投与に至るまでの流れ
  • 疾患ごとの投与経路の選び方(慢性疼痛・認知症・動脈硬化)
  • 実際の投与例と、評価に用いている指標

7.経路はどう選ぶのですか

いずれの疾患でも点滴投与が基本になりますが、関節内腔は血行が乏しいため局所投与を、脳神経疾患にはより直接的に送達するために髄腔内投与や動脈投与を併用するなど、患者さんのご希望と治療経過をみながら適した経路を選択します。疾患の種類、治療の目標、安全性の要件によって、適した経路やその組み合わせは変わります。

標的に応じた経路の考え方
標的とするもの 選択・併用する経路
全身への作用、肺点滴(経静脈投与)
関節・局所局所への直接注射(必要に応じてCアーム誘導下)
脳・神経系髄腔内投与
特定の臓器動脈カテーテル投与

なお、投与経路の変更や複数経路の併用による追加費用はいただいていません。経路の選択が費用の都合で左右されないようにするための設定です。

経路の選択肢があるかどうかは、医療機関を選ぶ際の確認事項のひとつでもあります。

8.よくある質問

Q&A
Q. 点滴だけでは効果がないのですか

A. 肺にとどまった細胞がシグナルを分泌して遠隔の臓器に作用したことが報告されており、点滴は基本の経路です。標的を絞りたい場合に他の経路を検討します。
Q. 髄腔内投与は痛いですか

A. 腰椎穿刺の際には局所麻酔および静脈麻酔を用います。ただし、投与後に腰痛や下肢痛が一過性に起こることがあります(当院では6件、髄腔内投与327件あたり2.0%)。また、因果関係は断定できないもののくも膜嚢胞の発生が1件(0.3%)報告されており、リスクがゼロではありません。
Q. どの経路が一番効きますか

A. 疾患と目標によって適した投与経路は異なります。一律に優劣を比較できるものではありません。
Q. 複数の経路を組み合わせると費用は上がりますか

A. 投与経路の変更や併用による追加費用はありません。
Q. 経路は自分で選べますか

A. 診察のうえで医学的に適した経路をご提案します。ご希望と治療経過をみながら決めていきますので、カウンセリングでご相談ください。

9.出典・関連ページ

出典

  1. Sanchez-Diaz M, et al. J Clin Med. 2021;10(13):2925.
  2. Gong P, et al. Stem Cells Int. 2021;2021:2602871.
  3. Lee RH, et al. Cell Stem Cell. 2009;5(1):54-63.
  4. Abo Y. Real-world safety profile of repeated outpatient autologous adipose-derived mesenchymal stromal cell therapy. Stem Cell Res Ther. 2026(採択・早期公開版). doi:10.1186/s13287-026-05213-z
  5. 当院レジストリ集計(2019年4月〜2025年12月/最新集計 2026年1月31日時点)

関連ページ

疾患別の解説ページ

関連動画

10.本記事で扱う自由診療について(限定解除事項)