関節症・脊椎関連疾患などによる痛みやしびれに対する再生医療
【間葉系幹細胞(MSC)治療】
目次
1. 痛みやしびれが長く続く方に再生医療(幹細胞治療)の選択肢
北青山D.CLINICでは、慢性的な痛みやしびれに対し、患者さんご自身の脂肪組織から採取した間葉系幹細胞を培養・増殖させ体内に注入する 「自家脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)治療」(以下、幹細胞治療)を提供しています。幅広い病態に対応し、痛みの根本にアプローチします。
2. 対象となる主な病態/治療の考え方
対象となる主な病態
- 膝・股関節・肘・肩などの関節痛
- 椎間板症、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症などの脊椎由来の痛み
- 帯状疱疹後神経痛
- 線維筋痛症
- 外傷後の慢性疼痛 など
当院の幹細胞治療は自分自身の細胞を用いるため、一般に免疫学的な不適合が起こりにくいと考えられています。 また、以下のような作用により「原因となる組織の修復」や「炎症の抑制」を目指す治療です。
- 幹細胞が放出する成長因子・エクソソーム等の働きにより、慢性的な炎症を調整し、組織修復を促す
- 幹細胞が障害部位の回復に関与する細胞へ分化し、損傷組織の修復に寄与する可能性がある
運動療法や鍼灸で改善が見られないケース、椎間板変性や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症による慢性腰痛、 神経根症状※を伴う方、椎間板ヘルニアレーザー治療(PLDD)などの手術適応にならない方などにおいても、 症状・所見に応じて治療選択肢として検討いただけます。
※神経根症状:脊椎から分岐する神経根が圧迫や刺激を受け、腰・臀部・太もも・ふくらはぎ・足、首・肩・腕・手などに 痛みやしびれ、筋力低下が生じる症状。
3. 幹細胞治療とPRP療法の違い
PRP療法は、患者さん自身の血液から血小板を濃縮して注射することで、血小板由来の成長因子が自然治癒力を高め、 組織修復や痛みの軽減を促す再生医療の一つです。細胞培養が不要なため、比較的短期間で実施できる特徴があります。
一方、幹細胞治療は、成長因子等の分泌に加え、幹細胞そのものが組織修復に関与する可能性がある点で、治療の狙いが異なります。 ただし、いずれの治療も適応・期待できる効果・限界は病態や個人差により異なるため、医師による評価が重要です。
| 幹細胞治療と PRP療法の比較 |
幹細胞治療 | PRP療法 |
|---|---|---|
| メリット |
・多くの変性性・炎症性疾患に対し、治療選択肢となり得る ・分化や周囲環境の調整を通じて、修復に寄与する可能性がある ・自家由来細胞を用いるため、一般に免疫学的な不適合が起こりにくい ・採取・分離した細胞を適切に管理することで、将来の治療に応用できる可能性がある ・創傷治癒などに関与する因子を介して、修復過程に関与する可能性がある |
・精製が比較的容易で、大規模な設備を必要としない ・自家由来PRPを用いるため感染リスクが極めて低いとされる ・筋肉・腱・靱帯などの損傷治療で応用が進んでいる |
| デメリット |
・周囲環境が効果に影響しうるため、必要な細胞数の確定が難しい ・細胞の質や寿命には個人差がある ・培養条件により細胞の性質が変わり得る |
・注入部に感染・神経/血管損傷・瘢痕・石灰化などの変化が生じる可能性がある ・注入部および周囲に痛みが生じることがある ・稀にアレルギー症状が誘発される ・血管内に入ると血栓症のリスクがある ・ヘビースモーカー/大量飲酒者/多剤内服者/血行動態不安定/抗凝固療法中/血小板異常・血小板減少症/ 敗血症・慢性感染症/慢性肝機能障害/慢性皮膚病/癌 などは実施を控えるべきとされる |
参考文献:
4. 脳神経外科専門医によるCアームを使用した精密投与
脊髄神経疾患に長年携わってきた脳神経外科専門医 泉雅文医師が担当します。 点滴や局所注射での投与に加え、椎間板ヘルニアレーザー治療(PLDD)の手技・知見を活かし、 医療用Cアーム(透視装置)を用いて、X線透視下で患部の位置を確認しながら精度を重視した投与を行います。
5. 脂肪由来の間葉系幹細胞(MSC)の優位点
身体の中には組織の修復に関与するさまざまな幹細胞が存在しており、中でも骨髄や脂肪の中に含まれる間葉系幹細胞は再生医療の素材として注目されています。 特に脂肪由来の間葉系幹細胞は骨髄由来のものに比べ、以下の特徴が示されています。
| 低侵襲 | 幹細胞を抽出できる脂肪組織は、骨髄に比較して採取の侵襲が小さいとされる |
|---|---|
| 分化能 | 脂肪・骨・軟骨への分化能に加え、筋分化能も示される報告がある |
| 増殖能 | 増殖能が比較的高い、老化の影響や骨分化能低下が少ない可能性が示されている |
この脂肪由来間葉系幹細胞を少量の脂肪から分離し、培養・増殖したものを、体内(患部)に注射や点滴等で送達する治療法を、 脂肪由来間葉系幹細胞治療(幹細胞移植)と呼びます。慢性疼痛に対する治療選択肢としても研究・臨床応用が進んでいます。
6. 薬理効果
幹細胞治療は、慢性的な痛みやしびれに対して、炎症の調整、免疫バランスの調整、組織修復の促進など多面的な作用が示されています。 ただし、病態や重症度、投与部位・投与方法などにより期待できる効果は異なります。
| 炎症を抑える | TGF-β、IL-1βなどの炎症性サイトカインを調節し、抗炎症性サイトカインであるIL-10の分泌に関与する |
|---|---|
| 損傷した組織の修復 | 血管新生、神経系の調整などを介して、疼痛受容の過敏化を調整する可能性がある |
| 椎間板弾力性の修復 | 髄核・軟骨細胞への分化などを介して、椎間板のクッション性改善に寄与する可能性が示されている |
7. 間葉系幹細胞治療の課題と限界
慢性疼痛に対する自家脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)治療は研究が進んでいる一方で、 大規模臨床試験が十分でない領域もあり、効果の個人差や投与法による違いなど、 依然として慎重な検討が必要とされています。 本項では、現時点での知見と課題を理解いただくため、関連する論文・試験情報を参考として整理します。
脊椎・脊髄疾患に関連する報告
1)ディスコジェニック腰痛(椎間板変性)
-
AD-MSC+ヒアルロン酸担体を用いた第I相試験(12か月追跡)において、
安全性・忍容性が確認されるとともに、疼痛および機能スコアの改善が報告されています。
https://stemcellres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13287-017-0710-3 -
椎間板変性に対するMSC治療の系統的レビューでは、
疼痛・機能改善の可能性が示される一方、研究間の異質性や症例選択の重要性が指摘されています。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8966879/
2)腰部脊柱管狭窄症(LSCS)
-
MSC等を用いた研究計画・試験報告は探索的段階のものが中心であり、
現時点では標準治療と併行した慎重な検討が必要とされています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36731929/
3)椎間関節症(変形性脊椎症の一部)
-
椎間関節内へのMSC投与に関する臨床試験情報(例):
https://clinicaltrials.gov/study/NCT06001853
MSCの主要メカニズムと慢性痛に関する知見
-
抗炎症・免疫調整作用:炎症性サイトカインの調整に関与することが報告されています。
例: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29654266/ - 神経炎症の調整:MSC由来エクソソーム等が炎症経路に関与する可能性が示されています。
- 疼痛伝達の調整:疼痛関連因子の発現を調整する可能性を示す報告があります。
- 組織修復:成長因子等を介した修復過程への関与が示されています。
なお、頸椎疾患や肩の慢性痛など、部位や病態によっては 高品質な臨床エビデンスが限定的である場合があります。 実際の治療適応や期待できる範囲については、医師による評価のもとで判断することが重要です。
8. 治療適応
下肢(腰・臀部・太もも・ふくらはぎ・足)や上肢(首・肩・腕・手)に慢性的な痛みやしびれなどの症状がある方、 椎間板変性や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症による慢性疼痛、神経根症状を有する方、 保存療法やPLDDなどの手術適応にならない方などが、状態により検討対象となります。 カウンセリングおよび検査所見を踏まえ、治療の適否をご案内します。
| 疾患名 | 痛みの原因(例) | 幹細胞治療で期待される作用(例) |
|---|---|---|
| 変形性膝関節症 | 軟骨の摩耗 | 炎症調整、組織修復への関与 |
| 股関節症 | 骨・軟骨の変形 | 炎症調整、周辺組織の修復への関与 |
| 肩関節症・腱板損傷 | 関節炎・筋腱損傷 | 組織修復への関与、痛みの軽減が期待される |
| 脊椎疾患(狭窄症、椎間板変性など) | 神経圧迫、炎症 | 神経周囲の炎症調整、痛み関連因子の調整が期待される |
| 帯状疱疹後神経痛 | 神経の損傷 | 炎症調整、神経修復過程への関与が期待される |
| 線維筋痛症 | 中枢性疼痛 | 炎症性サイトカインの調整、疼痛閾値への影響が示される報告がある |
9. 治療の流れ・費用・リスク
脂肪由来間葉系幹細胞による治療は、一般に以下のステップで実施します。
- カウンセリング:問診・診察・必要に応じて画像検査等を行い、総合的に治療方針を検討します。
- 脂肪採取:腹部などから、3〜5mm程度の切開で少量の脂肪を採取(局所麻酔・外来)します。
- 分離・培養:採取した組織から細胞を分離し、細胞培養加工施設(CPC)で増殖培養(目安:4〜8週間)します。
- 投与:培養した細胞を、点滴・局所注射等により投与します。必要に応じてCアーム透視下で投与位置を確認します。
- 経過観察:症状や所見に応じて経過を確認します(効果の現れ方には個人差があります)。
治療費用・リスク
費用:165万円(税込)
治療のリスク
- 採血時:穿刺部疼痛、皮下出血、神経障害
- 脂肪採取時:疼痛、感染、皮下出血、硬結、色素沈着
- 培養時:培養遅延、汚染
- 投与時:注射部痛、灼熱感、発熱、悪心、呼吸症状(血栓症)
- 治療後:症状回復遅延、治療効果不足
10. 実際の症例
症例は準備でき次第、順次掲載します。
- 【再生医療】症例(5)40代男性 慢性疼痛(右下肢痛と右下腿~足部麻痺)
- 【再生医療】症例(2)70代女性 慢性疼痛(両膝関節痛)
- 【再生医療】症例(準備中)50代男性 慢性疼痛(腰痛・就眠困難)