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新型コロナ感染症に対する戦略立案のポイント


2020.07.09 北青山D.CLINIC 院長 阿保義久



0.はじめに

2020年1月にその発生が正式に報告された新型コロナ感染症(COVID-19)は、現時点においても世界的な蔓延が続いている。日本は、欧米と比較してその犠牲者は圧倒的に少なく、現在小康状態と言える。しかし、本感染症が世界的に収束を果たさない限りは、国内において今後流行を繰り返すリスクは消えない。特に、季節性インフルエンザの流行期にCOVID-19の感染拡大が重なった場合には、両者は臨床症状で区別がつかないため、不適切な管理が施された場合、医療現場が混乱し、その犠牲が甚大となる可能性がある。また、感染拡大しないまでもCOVID-19の撲滅が果たされない限り、インフルエンザ流行時には両者の複合感染を念頭に置く必要がある。例年、インフルエンザ罹患者は年間1千万人を超過する。この規模の患者すべてにCOVID-19の鑑別としてPCR検査を実施するのは現実的ではない。インフエンザ流行期が訪れる前に、合理的かつ適切な対策を練っておく必要がある。

ところで、一般的に新種のウイルスに当初から至適対応策を見出すのは容易ではない。特にワクチンや治療薬が確立するまでは、対する戦略に試行錯誤を余儀なくされる。しかし、現時点では、先の流行の経験から、COVID-19に関する知見が積み上げられ、選択してきた施策の修正すべき点も指摘し得る状況にある。

社会活動を共有する集団において感染症を制御するには集団の一定の割合が免疫を確立すること(集団免疫の確立)が必要不可欠とされ、スウェーデンは敢えて社会活動制限をせずに感染拡大を受け入れて集団免疫の確立を目指した。しかし、最近の免疫学の知見ではCOVID-19 に対する人の中和抗体の保持期間は数か月程度しかないことが確認されており、集団免疫の定義を「安定した中和抗体の確立」と捉えた場合、それを自然に確立することは事実上不可能とする見解もある。

ただし、人為的な手法としてのワクチン接種は、強制的に一定の集団に中和抗体の獲得という免疫を確立させることは可能なため、感染制御において大きな効力をもつことは明らかだ。しかし、COVID-19に対して安全かつ有効なワクチンが使用可能となる前に、日本では人の基礎免疫が低下し感染蔓延リスクが増大する寒冷期を迎える。前述のごとく、季節性インフルエンザの流行も重なると、医療現場の混乱は相当なものになる可能性がある。遅くともインフルエンザが例年発生し出す11月までにはCOVID-19の再燃に向けた体制を確立する必要がある。

また、日本が属する東アジア圏では、COVID-19に対する基礎免疫(自然免疫、獲得免疫)の構築が既になされている可能性があること、インフルエンザワクチン接種がCOVID-19に対しても一定の予防効果を持つことが期待されること、COVID-19が感染した人の80%は周囲に感染させない、すなわち周囲に感染させるのは20%のスーパースプレッダーに限ることなど、感染制御のために活用し得る知見も得られてきた。

以上の点を踏まえ、本稿では、COVID-19対応ワクチンの使用が可能になる前の、必要な戦略について考察する。

0. はじめに (要約)
・季節性インフルエンザとCOVID-19は臨床上の区別がつかない。
・インフルエンザ流行前に、先の経験から得られたCOVID-19に関する知見を活用し適切な戦略を準備する必要がある。
・COVID-19の収束に必要な集団免疫の確立はワクチン接種によらざるを得ない。
・日本が属する東アジア圏では、COVID-19に対する基礎免疫(自然免疫)の構築が既になされている可能性がある。
・インフルエンザワクチン接種がCOVID-19に対しても一定の予防効果を持つことが期待される。
・COVID-19が感染した人の80%は周囲に感染させない。
・周囲に感染させるのは20%のスーパースプレッダーに限る。

本稿では、
1. 感染症の基本対策
2. COVID-19の特徴と管理上のポイント
3. 第一波における課題
4. COVID-19の至適マネージメント
5. インフルエンザ流行期におけるCOVID-19対策
6. 新型コロナ感染症に対する戦略のポイント
について考察する。



1. 感染症の基本対策

感染症となるウイルスや細菌が何であれ、その対策の基本は、
① 感染源との接触を回避する
② 接触しても発症を抑える
③ 発症しても重症化しない
の3つに集約される。



① 感染源(ウイルス、細菌などの微生物)との接触を回避

未感染者が感染源と接触しなければ感染症は発生しない。そのためには、既感染者の早期 発見・隔離、手洗いの励行、マスク着用、ソーシャルディスタンスの確保が基本となる。

② 接触時の発症を防ぐ

仮に、感染源と接触したとしても、接触者が対する免疫を十分有していれば発症しない。それには対応するワクチンの接種が有効である。一方、適切な睡眠、栄養、運動の確保などの生活習慣の配慮により基礎免疫を向上させることも発症の予防には極めて重要である。
対応する抗体がなくても、基礎的な免疫である自然免疫を賦活させることも有効。インフルエンザワクチン接種がCOVID-19に対する自然免疫を高める可能性あり。

③ 発症しても重症化させない

発症後速やかに医療介入して早期に適切な処置(治療)を施すことで重症化(死亡)の回避が可能となる。早期診断、早期治療が原則である。

1.感染症対策の基本 (要約)
① 既感染者の早期発見・隔離、手洗いの励行、マスク着用、 ソーシャルディスタンスの確保により、ウイルスとの接触を回避する。
②適切な睡眠、栄養、運動の確保などの生活習慣により基礎免疫を向上させる。
③発症後は早期の医療介入が必要。

2. COVID-19の特徴と管理上のポイント

① 潜伏期や無症状感染患者からも感染する(感染力が強い)

→既に市中に蔓延している状況下ではクラスター戦略のみでは感染拡大を防げない。
特に医療機関においては無症状者も含めて来院患者全員を感染源として対応する。

② 急激に重症化することがある

→上気道症状(発熱、喉・鼻症状、咳など)を発症したら迅速に医療介入を検討する。
医療機関での感染波及を防ぐために受診の際は、まずオンライン診療などの遠隔診療で医療判断を仰ぐのが妥当。発症後、1週間前後に重症化を来しやすいとされている。同時期には特に重症化のサインである低酸素血症(頻脈、頻呼吸、血中酸素濃度低下)のモニタリングを徹底する。

③ 高齢者、有病者の重症化率、致死率が大きい

→介護、医療施設への水平感染予防には最大限の注意をはらう。
高齢者は特に社会行動制限に伴う免疫低下対策を図るべき。

④ 感染者の20%が感染力をもつ(80%は感染力が弱い)

→感染力の強い人はスーパースプレッダーと呼ばれウイルスの排出量が多い。 抗原検査は感度が鈍いがこのスーパースプレッダーを選別する方法となり得る。


2.COVID-19の特徴と管理上のポイント (要約)
① 無症状の人から感染するので流行期には医療機関では来院者全員を感染源と考える。
②発症後1週間前後で急激に重症化することがある。そのサインは低酸素血症(頻脈、頻呼吸、血中酸素濃度低下)。
③高齢者、有病者の致死率が大きいので介護・医療施設での水平感染管理重要。
④ 感染者の20%程度が感染力をもつ。唾液の抗原検査で選別の可能性が期待される。

3. COVID-19第一波における課題と対策

①行政、医療現場での課題と対策

・初期対応
COVID-19 の対策では初期対応に特に課題があった。本年1月武漢から帰国した日本在住中国人の感染が確認された直後に国立感染研究所は「積極的疫学調査」を発動した。これは、検査対象を中国から帰国した人と濃厚接触者に限定することを意味する。潜伏期や不顕性感染からの患者から感染が広まることが無視されたことになる。その方針は、1月末に厚労省がCOVID-19を指定感染症に制定したことにより法的に裏付けられ、かつ感染者は例え無症状でも強制入院されることとなった。
致死率の高いSARS、MERSと同様にコロナ属で重症肺炎を来す新興ウイルスであることから、当初、指定感染症の扱いとしたことは理解できる。しかし、潜伏期や不顕性感染の患者など無症状でも感染力があることなどCVID-19に関する新たな知見が公表されてからは、PCR検査対象の拡大や無症状患者の自宅やホテル隔離という柔軟な対応の導入が必要だった。
→各自治体が入院適応に関して柔軟に判断し適切な管理処置を実施できるようにする。


・COVID-19の唯一の確定診断法であるPCR検査の制限
さらに、COVID-19の確定診断に必須のPCR検査の実施が当局の管理下に置かれ、医療機関や民間の検査会社が実施できなかった。このクラスター戦略によりPCR検査を施行された濃厚接触者の多くは感染陽性であり、かつ殆どは軽症だったことから、結果としては不必要な患者の入院が増加し病床が逼迫した。退院の際も、医療現場の判断に委ねるのではなく、PCR検査が続けて2回陰性になることが法的に規定された。COVID-19は症状が消失して感染力がなくなってもしばらくはPCRが陽性反応を来すことが知られている。そのため、症状が経過して自宅管理として全く問題ない患者も病院に足止めされる結果となり、病床の回転がさらに悪くなった。
たとえ軽症者でも、ウイルスを発する感染源であるため、医療従事者はその管理に細心の注意を払わなければならず、マスク、防護服などの医療資材の不足を来した。
さらに、医療機関が必要と判断した患者さんに任意にPCR検査を行えなかったために、外来受診者などからも水平感染を来し院内感染で死亡した例が目立った。
→現在は、PCR検査連続2回陰性の条件は除外されており病床の回転が早まっている。


・受診者の抑制
患者が医療機関に殺到することを防ぐためという理由で、医療機関への受診を37.5度の発熱などの症状が4日間以上継続してからに限った。これは軽症例の制御には意味があったが、感染症管理の基本である早期医療介入が遅れたため、COVID-19の患者の重症化を招いた可能性がある。
→現在この適応は除外されている。


・過度の行動抑制に伴う副作用
行動変容に伴う外出制限など人々の運動量の減退や孤立などから、特に高齢者の筋力低下、精神破綻などに伴う健康上の悪化や、生活習慣病の増悪が惹起された。
→蔓延期には自宅待機を原則としつつも、健康維持のための屋外散歩などの適度な運動はマスク着用の下で励行を促すべき。


・超過死亡への配慮不足
COVID-19の重症化による死(直接死)のみではなく、COVID-19対策としての医療環境制限や社会活動停止によって誘発された「がん死」や「自殺」など間接死の増加 も含む「超過死亡」の抑制策が適切ではなかった。
→COVID-19の正確な社会的インパクトを測るには超過死亡を指標とするのが妥当。迅速かつ正確な超過死亡の算出に取り組むべき。


② 医療現場の混乱

・院内感染問題
無症状であるのに感染力のあるウイルス保有者が院内へ出入りしたこと、感染の有無を確認する唯一の方法であるPCR検査が自由に実施できなかったため、健康弱者が占める医療機関内では院内感染による犠牲者が多発した。
→現在は各医療機関の裁量で、手術・治療前の患者のみではなく、入院前の患者全例に抗原検査やPCR検査を実施することが慣例化する可能性がある。


・医療インフラの不足
COVID-19は麻疹や水痘ほどの強い感染力はない。よって、適切な防護衣があれば水平感染はほぼ制御できる。しかし、その資源が不足した。
→感染拡大が生じていない間に、PPE(特にN95マスク)の十二分な備蓄が必要。


・医療機関の経営状況の悪化
新型コロナウイルス感染患者を受け入れている病院や、病棟閉鎖を余儀なくされた病院だけでなく、新型コロナウイルス感染患者を受け入れていない病院でも3分の2近くが「赤字」に陥っている。
医療機関においては、感染拡大防止に伴う患者減(患者の受診控えにとどまらず、予定入院の延期など)や予定手術の延期などによる収益減、感染防止策の徹底(施設整備や備品購入)などによるコスト増 が生じ、経営が非常に厳しい状況。
→COVID-19関連の診療報酬、感染症患者に対するPCR検査や既存治療薬の処方など に関する各医療機関の裁量対応について配慮を。
PPEの医療機関への配給措置も望まれる。



3.COVID-19 第一波における課題 (要約)
① 行政対応の課題
・COVID-19を指定感染症に制定し、患者の最低2週間の強制入院、退院の条件も機械的に厳しくしたため、病床の回転が滞った。それにより医療機関が入院不要の患者で占拠された。
・PCR検査を医療機関が任意に実施できなかったため診断が遅れ院内感染が増加した。
・医療機関への患者の受診制限により患者の重症化が惹起された。
・社会活動が低下した高齢者に、筋力低下、心身面での健康の悪化を来した。
・超過死亡が相当にみられた可能性がある。
② 医療現場の混乱
・無症状患者の対策不足、PCR検査制限のために院内感染が頻発した。
・水平感染予防に必要な医療防護衣(PPE)が極端に不足した。
・新型コロナウイルス感染対応の有無によらず多くの医療機関が「赤字」に陥った。


4.COVID-19 至適マネージメント

① 患者免疫の確保

ア)インフルエンザ予防接種
インフルエンザ予防接種により、インフルエンザに対する総合的な免疫に加えて、COVID-19に対する基礎免疫の獲得が期待できる。来るシーズンにおいてはインフルエンザ予防接種を可及的多数の国民が摂取できるように備蓄する。例年2500万本程度の製造量を4000~5000万本程度に増量できないか。
イ)手洗い、うがいの励行、マスク着用、睡眠、運動、栄養指導の徹底
今季は特に、感染予防のための日常生活指導を国民に促す。自宅待機に固執することは身体的にも精神衛生上も望ましくない。


② オンライン診療の積極的活用 受診の目安は低酸素血症

COVID-19に限らず、感染症対策の基本は早期発見、早期治療と、その患者さんから周囲への感染拡大を抑止すること。感染症を疑う症状が発生したら速やかに医療機関を受診すべきだが、一方で医療機関には他の疾患の患者さんもおられそのような方は感染に対する抵抗力が落ちていることが多い。いわゆる院内感染リスクが大きい。 COVID-19対策として急遽許可された初診時からのオンライン診療はそれらの課題をクリアできる。
オンライン診療では、触診や聴診などの基本的な診察情報は欠くが、COVID-19が重症化するサインである低酸素血症は、頻呼吸、脈拍数の増加により診断が可能である。特に、指先に装着して血液中の酸素飽和度(SpO2)を測定できるパルスオキシメータは、家庭用のものが出回っており、これを用いると簡単に低酸素血症に関しては評価できる。


低酸素血症の目安:

・呼吸数
    1 歳 未満 : 毎分50 以上
    1 ~ 4 歳 : 毎分40 以上
    5 歳 以上 : 毎分30 以上

・脈拍数
    1 歳 未満 : 毎分180 以上
    1 ~ 4 歳 : 毎分160 以上
    5 ~11 歳 : 毎分140 以上
    12 歳 以上: 毎分130 以上

パルスオキシメーターを
持っている場合
    SpO2 96% 未満

低酸素血症が疑われた場合は速やかに医療機関を受診し入院加療を検討する必要がある。


③ 唾液検体による抗原検査を主軸にする

唾液検体による検査は、鼻腔からの採取と違って、患者さんが自分一人で簡単に検体を提出することができ、周囲に感染を波及させるリスクが少ない。鼻腔咽頭ぬぐい液を採取する今までの手法は検査時にくしゃみや咳を誘発する可能性があり周囲に飛沫が飛散するリスクがある。そのために屋外で換気の良いドライブスルーなどの方法が理想。しかし、唾液検査であればそこまで周囲の環境にこだわる必要がない。感染防護具も不要なので医療資源の消費も避けられる。
現在、COVID-19の確定診断として最も信頼されているPCR検査も唾液検体で実施可能だが、感度が甘い抗原検査の方がむしろ初期スクリーニングにおいては望ましい可能性がある。なぜなら、COVID-19の患者はその80%は周囲への感染力が弱く、残りの20%に感染力があるとされている。感染力がある患者は排出するウイルス量が相対的に多い。抗原検査は検体中のウイルス量が多くなければ陽性となりにくいため、感染力の多い人ほど陽性率が高くなることが見込まれる。すなわち、初期スクリーニングとして唾液による抗原検査を用いることにより感染リスクのある患者の選別の可能性が高まる。


④ 感染力の弱い可能性がある患者の管理を弾力的に行う。

前述のごとく、COVID-19の患者の80%は感染力や症状が軽く、風邪と同様、何ら治療しなくても自然に軽快することがわかっている。確定診断がなされても軽症例は自宅待機とする。


⑤ COVID-19の治療に応用できる既存薬を活用する。

既存薬の中には、COVID-19の原因ウイルスが体内に侵入するのを防ぐもの、ウイルスの増加を防ぐもの、免疫の暴走を防ぐもの、など治療効果が期待できるものが複数確認されている。COVID-19の流行期には、時限措置で良いので、これらの薬剤を臨床現場が保険治療として使用できるようにするのが理想。必要な対応薬は遠隔で処方すれば良い。そのような体制が取られればCOVID-19の重症化を防ぐ可能性が高くなる。


⑥ 自宅待機者も重症化のサインのモニタリングを継続する。

COVID-19が厄介なのは急激な重症化だ。それには前述の低酸素血症が目安になる。頻呼吸、息切れ、頻脈などがそのサイン。指先で血液中の酸素濃度を測定するパルスオキシメーターでの測定値が95%以下の場合は一般的に入院適応となる。


⑦ 人工呼吸器やECMOの使用状況を把握

医療インフラに予備力があるかどうかを判断する重要な指標として人工呼吸器やECMOの使用状況が挙げられる。COVID-19は重症化すると、人工呼吸器やさらにはECMOという体外式の人工肺による呼吸補助が必須になる。これらの機器に関して各地域で使用予備力があるか、対応できる医療人員が確保されているかについて、常に把握しておく。これらの情報が入院ベッドの空き数よりも重要である。


4. COVID-19 至適マネージメント (要約)
① 行政対応の課題
① インフルエンザの予防接種や、生活習慣管理により患者の免疫を高める。
② オンライン診療を活用する。低酸素血症を注視し受診する。
③ 唾液検体による抗原検査を活用する。
④ 感染力の弱い可能性がある患者は自宅待機させるなど弾力的に扱う。
⑤ COVID-19の治療に応用できる既存薬を活用する。
⑥ 自宅待機時も重症化のモニタリングを継続する。
⑦ 人工呼吸器やECOMの空き状況を把握する。

5.インフルエンザ流行期におけるCOVID-19対策

発熱、上気道症状などの症状のみでは、インフルエンザ感染症とCOVID-19との鑑別は容易ではない。一般的にはインフルエンザを迅速診断する方法としては鼻腔ぬぐい液を用いたイムノクロマト法が主となる。ただし、鼻腔ぬぐい液を採取する手技はCOVID-19のPCR検査時に実施する手法と同様である。すなわち、被験者がCOVID-19の感染者であった場合に、検査者に対する飛沫の暴露、感染のリスクを伴う。よって、COVID-19感染も同時に疑われる状況では、通常行われるインフルエンザ迅速診断は安易には実施できない。一方、COVID-19のPCR検査においては「唾液」を検体とする方法も確立されており、この方法は検査時に周囲へ感染源が飛散するリスクが極めて小さいので、COVID-19においては鼻腔ぬぐい液ではなく唾液を用いたPCR検査が主となるだろう。しかし、インフルエンザにおいては唾液を検体とする手法は検証されていない。
すなわち、COVID-19の流行が背景にある間は、従来実施されていたインフルエンザ迅速診断法は一般の医療機関では実施に大きなリスクを伴う。流行期には日本では例年1千万人程度のインフルエンザ感染者が発生する。誰しも背景にCOVID-19 のウイルスが潜んでいる可能性がある時期に、そのような規模の感染者にインフルエンザ検査は実施するインフラは確保できない。
よって、インフルエンザ流行期においては以下の運用が望ましいと考える。

臨床上、インフルエンザもしくはCOVID-19 感染症が疑われた場合、唾液検体によるCOVID-19抗原検査を実施する。抗原検査で陰性の場合は、必要に応じてインフルエンザ治療薬、もしくは抗生物質などの治療薬を処方する。当該治療において症状の改善が見られない場合は、COVID-19のPCR検査を追加する。抗原検査で陽性の場合は入院加療が必要になる。


この手法により、感染力の強いCOVID-19の見逃しが回避され、インフルエンザに関しても診断的治療(診断も兼ねた治療)により対応できる。インフルエンザや他の感染症に対する治療が無効であった場合はCOVID-19の感染力の弱いケースである可能性を疑ってより診断確度の強いPCR検査に移行する。すなわち、感染力の強いCOVID-19の早期診断の遅れも回避でき、高コストで手間を要するPCR検査を無駄なく施行することができる。

5. インフルエンザ流行期におけるCOVID-19対策 (要約)

臨床上、インフルエンザもしくはCOVID-19 感染症が疑いあり

唾液検体によるCOVID-19抗原検査を実施

陰性 :必要に応じてインフルエンザ治療薬、抗生物質などを投与

当該治療において症状の改善が見られない場合はPCR検査を追加


陽性 :入院治療が必要



6. 新型コロナ感染症に対する戦略のポイント

先の経験と現時点で蓄積された知見から新型コロナ感染症に対する戦略において 以下がポイントとなる。


① 対策の立案において、公衆衛生学者、数理学者など一部の専門家に限られずに、 臨床医、社会心理学者、経済学者など幅広い分野の英知の結集が必要。
② COVID-19に関連する医療行為(診断、検査、治療)における主体が現場の臨床医にあるべき。特にPCR検査の適応については現場で任意に実施できるようにする。
③ 周囲への感染力の強い患者の同定法としての唾液検体による抗原検査を活用する。
④ 入退院の適応についても医療現場の判断を主として決定する。
⑤ PPEの十分な備蓄・供給体制を確立する。
⑥ 流行期には人工呼吸器、ECMOの使用状況をモニタリングする。
⑦ COVID-19の社会的ダメージの指標として「超過死亡」に関する統計管理を徹底。


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