新型コロナウイルス感染症対策本部の報告を受けて

―ウイルスとヒトの共生現象を冷静に見極め、自虐的な現制度が招く医療崩壊を防ぐ―


2021.08.07 北青山D.CLINIC 院長 阿保義久



1.はじめに

 デルタ株の影響で新型コロナの新規陽性者数、重症者数が急増している。一方、コロナによる死者は増加傾向にないばかりか漸減傾向にある。重症化もワクチン接種がほぼ達成された60代以上では見られず40~50代が主。対策を絞りやすい。さらに、重症化を予防できる新薬も認可された。ワクチンがあり、治療薬も台頭してきたということは、コロナ収束に必要な武器がようやく整ってきたということになる。

相変わらず人々の不安を煽る報道姿勢を貫くメディアを尻目にし、2021年8月5日にweb開示された「新型コロナウイルス感染症対策本部」部会会議資料(最近の感染状況等) https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r030805.pdfを指標に新型コロナ感染症の至適対策を改めて考察した。

2. 重傷者、新規陽性者数等の推移

  • ・新規PCR検査陽性者数(灰色の折れ線グラフ)の急増に対して新規死亡者数(青色の折れ線グラフ)は漸減している。感染拡大時に、陽性者数及び死亡者数がピークに達する時期には若干(2-3週間)のずれがある(死亡者の方が遅れる)が、今までは新規陽性者が増加傾向にある際には新規死亡者も増加していた。直近の感染拡大では、新規陽性者は増加しているのに対して新規死亡者は減少するという乖離が生じている。すなわち致死率は日に日に縮小している。

  • ・これは、治療法が進化したことが影響したとも考えられるが、ウイルスのヒトに対する感染力は増強した一方で毒性は低下した可能性を示唆する。感染力が増強して毒性が低下する理由は二つ。一つはウイルスが変異を繰り返しながらヒトに対して適応してきたこと(共生現象:ヒトと長期共存するために感染しやすくなりつつ重症化しにくくなる)。もう一つはワクチン接種により重症化しやすい世代(65歳以上)の免疫防御力が増強し同世代の感染や重症化が抑止されたこと。

3.各国の直近の新規感染者数(7日間移動平均 対人口100万人)

G7諸国の新規陽性者数は、この7月よりすべての国で増加傾向にある。ただし、日本はコロナに対する生活規制を緩めた英米の1/3~1/5に過ぎない。

4.各国の直近の新規死亡者数(7日間移動平均 対人口100万人)

 この7月より、2で述べた新規陽性者数と新規死亡者数の増減乖離現象が、G7の全ての国で同様に発生している。新規死亡者数は7か国のうち日本は最下位で0.15(トップの英国は1.24)。

5.東京都における重傷者数の推移(年齢階級別)

  • ・40‐50代が急増しているが、ほかの世代は著変がない。
  • この世代にワクチン接種を促せば良いだけではないか。

6.英米も方針を変更した

 周知のとおり英国政府は2021年7月5日に、同7月19日よりロックダウン緩和を実行する考えを明らかにした。2020年3月23日に始まった最初のロックダウンから1年4カ月を経て、社会的距離や集会人数制限などの法的義務を含む大半の規制が、初めて撤廃される。また、米国CDCは年内に国家規模のPCR検査を終了すると発表した。

Lab Alert: Changes to CDC RT-PCR for SARS-CoV-2 Testing

 両国ともこれらの動きは感染者数の大幅な増加がある中で死亡者数が漸減していることを受けてのもので、国内でワクチン接種が相応に進んだこともその背景にあるが、根本的にはウイルスとヒトとが共生段階に入ったとして、新型コロナ感染症をいわゆる季節性の風邪に準じて扱う方針としたと解釈できる。

 日本もウイルス学的特性や感染状況を冷静に見極める科学的見地に早く立つべき。新規感染者数の増加にのみ目を向けてコロナ対策を議論すべきではない。大局的には新規死亡者数をメルクマールに施策を講ずるべき。

 国民に根付けられた恐怖心は強く、特に地方ではなおさらコロナ感染に対する穢れの意識が強い印象を受ける。国民に正確な情報と適切な施策を網羅した強いメッセージを発信して、カルト化した国内の空気を早く正常化させてほしい。

 政府が7月19日に特例承認した中外製薬の中和抗体薬ロナプリーブは点滴製剤だが、2日前のNew England Journal of Medicineで、本製剤が皮下投与でも十分効果があると報告された。 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2109682

 本製剤は本来重症化の予防が期待できる薬剤であり、感染初期に投与すべきである。そもそも、点滴投与でも外来で実施可能だが、皮下投与が可能であれば、なおさら外来での実施は容易だ。いい加減にコロナに対する感染症法の支配をやめて、その対応は開業医や一般病院を含めた現場の医療機関の裁量に任せるべきでは。

7.医療崩壊を防ぐ

 医療崩壊を防ぐための基本的な考え方を改めて提示する。まず、日本の医療インフラが合理的に機能すれば現在のコロナ感染症流行状況で医療崩壊は生じ得ないないという考えに変わりはない。なぜなら、毎年1000万人規模のインフルエンザ感染症(流行期3~4か月)を日本の医療インフラは捌いてきた。単純に考えると250万人/月のインフルエンザ感染症相当の感染症は対処できるということになる。インフルエンザ感染症が急性呼吸不全となって医療インフラにかかる負担と、コロナのそれをしっかりと確認する必要がある(フランスからのLANCETの論文  https://www.thelancet.com/article/S2213-2600(20)30527-0/fulltext が参考にはなる)が、仮にコロナがインフルエンザに比べて5倍の重症化の負荷を医療現場にかけるとしても、50万人/月のコロナ感染者対応はできるということになる。

ところで、今回取りざたされる「医療崩壊」とは「コロナ感染症により、救えるべき命が救えなくなる状況」ということだが、それは「コロナ感染症による死を防ぐ」「コロナ以外の致死的疾患に対する通常医療が妨げられない」の両者が侵された状況と言える。その意味で、昨今、コロナ感染者の管理において過剰な入院管理を回避するための政府方針は評価できる(ようやく・・・の感はあるが)。
 しかし、同時に、入院が不要との判断が適切であるかどうかという問題、自宅療養中に重症化した場合に適切に対応できるかという問題、の2つへの対応が必要不可欠。いずれもが、現行(感染症法管理下)においては保健所が機械的に対応している状況であり、臨床医の専門的な知見が活用されていない。すなわち、コロナ感染症と診断された後も、その後のトリアージはしっかりと医療機関が対応する(保健所マターではなく)、自宅療養となってもオンライン診療などでも良いので医療機関がフォローする(そうすれば在宅酸素療法など準入院としてのケアも可能になる)など、適切な早期医療介入と重症化予防の管理体制が図られるべき。

付言するが、積極的疫学調査のもと濃厚接触者の隔離が現在も行われているため、検査陽性者が急増する中、濃厚接触扱いとなる者も急増して、社会活動を営む人的リソースの喪失が進んでいる。特に、医療従事者が濃厚接触扱いとなったがために医療現場を離れざるを得ない医師・看護師が増え、ただでさえリソース不足の医療現場が更に追い込まれる状況になっている。

すなわち、医療崩壊を自ら招くような自虐的な感染症法管理体制、積極的疫学調査を即刻解除して、通常の医療体制に復すべきだ(昨年8月に政府の会議で既に提案したgijiyousi.pdf (kantei.go.jp) が、新型コロナは指定感染症扱いを解除してせめて感染症5類に分類すべきだ。