再生医療(幹細胞治療)|治療の妥当性と作用機序【北青山D.CLINIC】

間葉系幹細胞(MSC)治療の妥当性と作用機序 ― 疾患領域ごとの考え方

当院は、疾患ごとに想定される作用機序を整理したうえで提供計画を立てています。ここで示すのは研究で示唆されている機序であり、効果を保証するものではありません。

間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)は、多様な細胞への分化能に加え、細胞から放出される成長因子やサイトカイン等の各種因子を介した生理活性作用(パラクライン効果)が期待されています。

北青山D.CLINICでは、医学的知見に基づき、代表的な各疾患領域における間葉系幹細胞治療の妥当性および作用機序の考え方を以下のように整理しています。この整理は、第二種再生医療等提供計画を作成し、特定認定再生医療等委員会の審査を受けるうえでの基礎となるものです。

本ページを読むうえでの注意

以下に示す作用機序は、基礎研究・動物モデル・臨床研究で示唆されている内容を整理したものであり、当院の治療効果を示すものではありません。幹細胞治療は、安全性・有効性を保証できる十分なエビデンスが確立した治療ではありません。

このページで分かること

  • 慢性疼痛・動脈硬化・認知機能障害それぞれで想定されている作用機序
  • その他の疾患領域における研究の広がり
  • 作用機序の整理と、実際の治療成績とは別のものであること
疾患領域ごとに想定されている主な作用機序(概要)
疾患領域 想定されている主な機序
慢性疼痛炎症性サイトカインの調節、IL-10の分泌、神経・組織の修復および再生
動脈硬化血管新生効果と組織修復、エクソソームによる修復支援、血管内皮・心筋の抗炎症作用
認知機能障害神経栄養因子の分泌(パラクライン効果)、アミロイドβ分解酵素への関与
その他の領域総合的なパラクライン効果と免疫調節

1.慢性疼痛治療としての妥当性

間葉系幹細胞(MSC)には、痛みの発生や持続に関与する炎症・神経組織に対して、以下のような作用が示唆されています。

炎症性サイトカインの調節作用

TGF-βやIL-1βなどの炎症を促進するサイトカインを制御し、抗炎症作用を持つサイトカイン「IL-10」の分泌を促進します。

神経・組織の修復および再生

血管新生、シナプス産生、神経膠(グリア)形成、神経発生などを促す働きが示唆されており、過敏化した疼痛受容体や周囲組織の修復・調節に寄与する可能性が考えられます。

※ 慢性疼痛では、関節内腔など血行の乏しい部位に届けるために局所投与やCアーム誘導下投与を選択する場合があります(幹細胞の投与経路の違い)。

2.動脈硬化治療としての妥当性

心血管系疾患や血管のエイジングケアにおいて、間葉系幹細胞(MSC)は以下のようなメカニズムで機能することが示唆されています。

血管新生効果と組織修復

in vitro(試験管内)および in vivo(生体内)の基礎研究、ならびに臨床研究において血管新生促進効果が確認されています。これにより、虚血性心疾患、脳血行障害、末梢循環障害(PAD)、創傷治癒などへの臨床応用が進められています。

エクソソーム(幹細胞由来微細粒子)の貢献

間葉系幹細胞から分泌される微小小胞「エクソソーム」に含まれる多様な成長因子やRNA(miRNA等)が、虚血・損傷した病変組織の修復や機能改善をサポートする可能性が示されています。

血管内皮・心筋の抗炎症作用

脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)の投与により、動脈硬化プラーク内や心筋組織における局所的な慢性炎症を抑制・制御する作用が提示されています。

※ エクソソームを含む分泌成分そのものを投与する治療(培養上清液/幹細胞セクレトーム)については、幹細胞セクレトーム(培養上清液)とはをご覧ください。細胞を投与する治療とは、法律上の扱いも位置づけも異なります。

3.認知機能障害治療としての妥当性

アルツハイマー病をはじめとする認知症や神経変性疾患に対し、間葉系幹細胞(MSC)の持つ以下の神経保護・再生機能が注目されています。

神経栄養因子の分泌(パラクライン効果)

NGF(神経成長因子)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、GDNF、VEGF、HGF、IGF-1、SDF-1、CXCR4などの多様な神経・グリア関連因子やシナプス関連タンパクを分泌します。血管新生、シナプス形成、神経発生を促し、衰えた神経ネットワークの保護・再構築を図ります。

病因物質(アミロイドβ)へのアプローチ

アルツハイマー病の主要な病理学的特徴である「アミロイドβ(Aβ)」の蓄積に対し、間葉系幹細胞がAβ分解酵素の一つである「ネプリライシン(Neprilysin)」の活性・発現に関連する作用を示すことが報告されています。

※ 脳・脊髄を標的とする場合、肺での捕捉と血液脳関門を回避する髄腔内投与を選択することがあります(幹細胞の投与経路の違い)。

4.その他の領域・病態における妥当性

間葉系幹細胞(MSC)の広範囲な作用は、運動器系から内臓器官まで幅広い疾患領域の研究および治療応用において妥当性が検討されています。

総合的なパラクライン効果と免疫調節

成長因子やサイトカインの連続的供給(パラクライン効果)と、TGF-β調節・IL-10分泌等による過剰な免疫応答の制御機能(免疫調節)を合わせ持っています。

多岐にわたる適応・研究対象病態

スポーツや加齢に伴う運動器障害、加齢性フレイル(身体的・生理的機能低下)、神経変性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の慢性肺疾患、心不全、慢性腎臓病(CKD)、肝硬変・肝線維症などの肝機能障害、炎症性腸疾患(IBD)など、再生医療のアプローチとして世界的に研究が進められています。

当院が第二種再生医療等提供計画として届け出ている疾患は15領域です。受理番号と対象となる病態は、適応疾患のページで疾患ごとに公開しています。

5.作用機序の整理と、実際の治療成績について

ここまでに示したのは、「なぜこの疾患に対して幹細胞治療が妥当と考えられるか」という機序の整理です。実際にどのような結果が得られているかは、別の問いになります。当院は、治療実績をレジストリとして集計し、学術誌の査読を受けたうえで公開しています。

また、幹細胞の作用機序については、「ホーミングして分化し、組織に置き換わる」というかつての説明から、「分泌するシグナルによって体の側の修復を促す」という理解へと更新されてきた経緯があります。この更新の経緯と、そこから生じている誤解については、別ページで詳しく扱っています。

6.本ページで扱う自由診療について(限定解除事項)