再生医療についてのQ&A


再生医療についてのご質問にお答えします

Q1  なぜ脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)を再生医療に用いるのですか? 

A: 脂肪由来間葉系幹細胞は、骨髄由来に比べて容易にかつ体に負担をかけずに採取できることと、脂肪・骨・軟骨への分化能に加えて、骨髄由来にはない筋分化能も持っています。また、細胞の形態や分化能力は骨髄由来と差異はありませんが、増殖能がより強く、増殖に伴う老化の影響や分化能の低下が少ないなど、質の高い幹細胞と評価できるためです。

Q2  なぜiPS細胞は臨床現場でまだ使えないのですか?

A: iPS細胞は、あらゆる細胞をつくりだせる万能細胞ですが、増殖に伴う腫瘍化の問題があり慎重に開発されているため臨床現場での応用に時間がかかっています。

Q3  脂肪採取の負担は大きいですか?

A: 腹部などの皮膚を2-3㎜切開して米粒大の脂肪細胞を数粒採取します。局所麻酔で実施可能で15分くらいの所要時間です。処置自体の負担はそれほど大きくなく、処置したその日からシャワーも可能ですが、1-2週間は内出血が残ったり、しこり感の消失に数か月要することがあります。

Q4  脂肪採取から幹細胞投与までの期間は?

A: 順調に培養がすすめば3~4週間で投与できます。

Q5  幹細胞培養の際に血清が必要と聞きました。どのくらいの採血が必要になるのでしょうか?

A: 細胞を培養する際には、ご自身の血清を利用するのが理想的です。血清の確保は脂肪を採取する際に実施します。必用な血液量は120mlほどです。ご自身の血清の使用を希望しない場合(採血をしたくないなどの理由で)や血清に問題がある場合は、人工血清などを使用することも可能です。

Q6  再生医療の幹細胞培養で、悪い細胞と良い細胞を分ける技術が(機器)あると聞きましたが…

A: 幹細胞の良性と悪性を見極めるには、幹細胞の形態・大きさ・均一さなどの評価条件があります。これらは、培養士が丁寧に見極めて劣悪な細胞をしっかりと除去すれば問題ないはずで、機械的にふるい分ければよいという単純なものではありません。細胞分離の際に幹細胞を効率的に採取するための機器はありますが、これも適切な分離法に基づいて作業すれば幹細胞を高率に確保できますので必ずしも必要ありません。

Q7  幹細胞を1回で10~20億個投与する、というところがあったのですが、細胞数は多ければ多いほど良いのでしょうか?

A: 幹細胞による治療効果は確かに細胞数の影響も受けます。ただし、一気に(短期間で)大量の細胞を投与することについては安全性が確認されていません。また、細胞を増やす際に、何回か培地の植え替え(継代といいます)が必要ですが、1回の細胞増殖・培養で継代できる数は3~5回以内が理想と考えています。いたずらに継代を増やして細胞数を多くしても細胞が劣化する可能性があります。以上を踏まえて私たちは1回(1日)で投与する細胞数を2億個までとしています。

Q8  幹細胞の投与でがんが誘発されるリスクはないですか?

A: iPS細胞の投与は腫瘍化(がん化)のリスクがあると言われていますが、間葉系幹細胞ががん化したという報告はありません。ただし、がん細胞と間葉系幹細胞を共に培養するとがんの成長が促進されたという論文や、不均一な間葉系幹細胞や過量の幹細胞はがん細胞にとって有利にはたらく可能性を示唆する論文があるため、幹細胞があたかもがん化することがあると誤解されている方がおられるようです。がん細胞に対して外から間葉系幹細胞を投与するとがんの成長が阻害されることも示されていますので、適切な間葉系幹細胞の投与は安全面において問題がないと判断できます。

Q9  「幹細胞は大きいので、石灰化されたプラークや、狭窄している冠動脈の場合は、培養された幹細胞を点滴すると、詰まる可能性があり、心筋梗塞が起きるリスクがある」とのお話をきいたことがありますが、その点は、大丈夫なのでしょうか?

A: 幹細胞は、赤血球や白血球など血液中を流れる他の血球に比べて確かにやや大きめです。ただし、以下の医学的事実から、適切な速度で適切な量の幹細胞を血液中に送達すればご心配のような現象が起きることは考えにくいと言えます(今まで幹細胞移植により毛細血管の閉塞を来した例は経験がありません)。
まず、幹細胞と血液中に存在する代表的な細胞の直径を記します(単位:μm マイクロメートル=1mの100万分の1)。
幹細胞: 10~20 μm
赤血球: 7~8 μm
白血球: 6~30 μm
ところで、白血球の中で3-6%を占める単球という細胞は、幹細胞よりも大きく直径30μmもあります。
そこで、この大きな細胞である単球が血液中をどのくらい流れているか考えてみましょう。
まず、人の全身を流れる血液量は大体5l(リットル)です。
白血球は一般的に3500~9500個が1μl(マイクロリットル)の血液中に存在し、
仮に4000個/μl として計算すると、血液中の白血球数の総量は4000×5×100万=200億個になります。
単球はその3-6%なので、計算上4%とすると、その総数は、200億×4/100=8億 (個)となります。
すなわち、幹細胞よりも相当に大きな単球が8億個程度は全身を流れていることになります。
ところで、再生医療では1回の治療で5000万~2億個の幹細胞を一般的には点滴注射により全身に投与します。 そして、投与は1時間ほどの時間をかけてゆっくりと行います。 もしも、2億個の幹細胞を全て一気に血液中に注入したら毛細血管に負担をかけることはあるかもしれませんが、ゆっくりと点滴で注入すれば問題は起こさないと考えられます。 そもそも血管内を流れている血液は約1分間で全身を回ります。すなわち、単球だけを見ても毎分8億個の幹細胞より大きな細胞が全身を循環しています。 よって、単球より小さな幹細胞高々2億個を1時間かけて全身に投与する手法であれば血管系への負担は殆どないと言えます。

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