【動画解説】再生医療の現状と課題④

幹細胞投与のための細胞加工(全6話中第4話)

2020年6月27日開催の院長のオンライン講演会から『再生医療の現状と課題 ④幹細胞投与のための細胞加工』(全6話中第4話)の内容をご紹介します。 幹細胞治療を行うためには、①脂肪組織の採取 ②CPC(細胞培養センター:クリーンルーム)での分離培養 ③培養細胞回収 ④幹細胞投与という複数の工程が必要です。脂肪組織の採取はごく少量(米粒1-2粒大)で十分ですが、採取した脂肪組織から幹細胞の分離培養工程への移行は迅速に進めなければいけません(細胞の質を保つため)。幹細胞の培養工程も複数あり、良質の幹細胞を投与するためには、その培養期間や培養数、そして培養細胞を回収してから投与までの時間などにも注意を払うことが求められます。この章の最後には、高品質の幹細胞治療を実現するために、当院で実際に取り組んでいる再生医療の実施ポイントについてもご説明しています。

【動画情報】

テーマ:「再生医療の現状と課題」④幹細胞投与のための細胞加工 (全6話中第4話)
時間:9分02秒(第4話)
公開日:2020年6月27日
講演者:北青山D.CLINIC  院長 阿保義久(医師)


 


【このテーマの動画(全6話)】

第1話 ①再生医療とは
第2話 ②そもそも幹細胞とは
第3話 ③間葉系幹細胞(MSC)療法のメカニズム・特徴
第4話 ④幹細胞投与のための細胞加工(このページ)
相5話  ⑤安全性と治療適応
第6話  ⑥治療成績及び今後の期待と課題

【全文】

はじめに


次にお話しするのは、実際にその体性幹細胞、組織幹細胞をどのように作っていくかということ。その辺りのお話もしていきたいと思います。
ご自身の体の中に幹細胞というのがあるわけですけれども、それを抽出、分離してもそれほどの数っていうのは残念ながら得られません。 すなわち治療に必要な数を十分得なければいけないので、細胞を加工していかなければいけないという、そういうステップがあります。

脂肪由来間葉系幹細胞投与 概説


間葉系幹細胞の全体像をまず先にお話しておきますと、まず治療を行う患者さんのご自身の脂肪組織から幹細胞を分離、培養します。1億個以上の間葉系幹細胞まで増やしたものを患者さんにまた投与する。それは移植とも呼びます。
細胞の採取加工法については、例えば皮膚の下にある脂肪を取るんですが、一般的にはお腹の目立たないところから2~3ミリちょっとメスが入りますが、そこから米粒大、2粒3粒ぐらいの脂肪を頂いて、 それをすぐ組織培養加工室の安全キャビネットといわれる厳重な衛生管理をされたシステムの中で分離培養します。
何段階か、増殖培地で植え替えをして先ほどお話した1億以上の細胞数まで増殖させていきます。投与方法は点滴かカテーテルによる動脈、もしくは病変部への局所注射によって行います。 体から取ったものを培養して、またご本人戻す。そういう流れになります。


CPC(細胞培養加工室)


こちらがCPCと呼ばれるCell Processing Center細胞培養加工室です。 お部屋の中自体が、いわゆる雑菌が入り込まないようなクリーンルームになっています。そのクリーンルームの中にさらに安全キャビネットと呼ばれる、さらに精製度、 クリーン度を高めたその装置を配置してその中に実際に細胞の増殖ないしは、分離などを行っています。


脂肪由来間葉系幹細胞 採取・培養


これはもちろん細かくこういう9段階の工程を経て、この培地から細胞を分離・増殖させていきます。けっこうこれには時間もかかりますし、全行程で大体4週間くらいかかります。 一つ一つ植え替えをしたり培地を交換したり、それなりの、やはりコストもかかる、手間もかかる作業になります。


細胞分離 培養


先ほども、ちょっと見ていただいたんですけど、取ってきた脂肪からこれはフィラメントに脂肪をちょっとくっつけて、そこから幹細胞にちょっと分離している図です。 それを幹細胞だけを切り離して少し増やしたのはこの図です。 さらにそれを増やして、またさらに増やして、このぐらいまで密集度が上がったらようやく人に投与、戻すことができます。


幹細胞の至適継代数・投与数


よくお話にあがるのが、細胞は先ほど1億個と言ったけれども、どんどんどんどん培養をして何十億個、極端には何百億個そのぐらいまでも増やして戻すというのが一番いいんじゃないか、そういう声をよく聞きます。 医療機関の中には、数を多く培養して投与しているということを宣伝に使っているところもあります。 ただ実際は、細胞の数というのは、多ければ多いほど良いわけではありません。
というのは、細胞を育てていく工程にもいろいろ制限があります。 培地、細胞を増やしていくときに使う栄養を入れるようなフラスコを含めてそれを培地と呼びますけれども、それを植え替えていくのを継代といいます。 植え替えの数は多すぎてはいけません。細胞が劣化していってしまうからです。さらにその植え替えの期間は長すぎてもいけません。 これも細胞のいわゆる新鮮度というか、劣化を防ぐという点では非常に重要になります。
さらに細胞は、多ければ多いといいわけではありません。逆に多すぎると、毛細血管という細い血管に投与した後にダメージを加えてしまうというマイナス面があります。 ですので、細胞の品質を保つためには、細胞の培養回数は4~5回以内、培養の期間は4~5週間以内、さらに1回の投与で使う細胞数は1億個から2億個ぐらい。 それが望ましいというふうに言われています。


幹細胞の投与量・回数・投与時期


ですので、私たちも幹細胞を投与する時には、今の注意点をしっかりと遵守して、1人の患者さんには5千万個以上あればしっかりと その細胞の性質が享受できるということが分かっていますので、目標は1億~2億個なんですけれども、1人の患者さんに基準としては5千万~2億個ぐらいの細胞を投与できるように培養を進めます。
投与回数は、基本的には培養の状態が問題ない方であれば、1回脂肪を採取したことによって最低でも4~10回ぐらい投与が可能になります。
それはですね、特殊な冷凍保管技術を用いてしばらく保管するということが必要になりますので、この投与回数等に関してはその人それぞれに違いますので、実際治療を行っていくうえで相談しながら決めていきます。
投与の時期については、最初の投与は培養してから3~5週間後。2回目以降は状況を見ながら早ければ2~4週間後。 それは必要に応じて、患者さんの状態ないしは状況に応じて決定していきます。冷凍保管ができれば、冷凍保管を続ければ、理論上はずっと細胞は確保していくことができます。


治療の実際の流れ


治療の実際の流れなんですけれども、まず最初は治療内容の色々なご説明を1時間くらい行っています。
その後で、その実際の治療対象に対する検査、必要な場合には血液検査などが10分~20分くらいで行われます。
その次の段階が脂肪採取で、所要時間はだいたい30分くらいかかります。(脂肪採取は予約をして改めて脂肪採取に来ていただくことが自然です)採取は数ミリの切開で終わりますので、もうまもなくお戻りになれますし 基本的には日常生活を制限もなくその日からシャワーも浴びれます。
4~5週間くらい経って、幹細胞の投与ができるようになるんですが、その投与の所要時間は1~2時間ぐらいです。 さらに幹細胞を繰り返し投与することを希望される方には、5回目以降も定期的に通院をしながら投与していくという形をとります。
治療効果の判定は、1か月、3か月、半年、1年。だいたいこのぐらいの期間を目安に、確認を進めていくという流れになっています。

以上、幹細胞を実際に培養加工する方法であり、作り方、実際に投与の流れをご説明させていただきました。 これで4つ目のカテゴリーが終わりになります。さて次のカテゴリーはちょっと具体的なお話になります。 次は、治療の安全性とその治療適用。どんな疾患に対して、今ご案内できているかということに関して触れます。 治療の安全性に関するご説明は、厚生労働省に届出をした内容から抜粋していますので、少し専門的なところがありますから、必要なところだけを抽出してお話ししていきたいと思います。


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