再生医療についてのQ&A

再生医療全般について

Q1. なぜ脂肪由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)を再生医療に用いるのですか? 
A: 脂肪由来間葉系幹細胞は、骨髄由来に比べて容易にかつ体に負担をかけずに採取できることと、脂肪・骨・軟骨への分化能に加えて、骨髄由来にはない筋分化能も持っています。また、細胞の形態や分化能力は骨髄由来と差異はありませんが、増殖能がより強く、増殖に伴う老化の影響や分化能の低下が少ないなど、質の高い幹細胞と評価できるためです。
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Q2. なぜiPS細胞は臨床現場でまだ使えないのですか?
A: iPS細胞は、あらゆる細胞をつくりだせる万能細胞ですが、増殖に伴う腫瘍化の問題があり慎重に開発されているため臨床現場での応用に時間がかかっています。
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Q3. 再生医療の幹細胞培養で、悪い細胞と良い細胞を分ける技術が(機器)あると聞きましたが
A: 幹細胞の良性と悪性を見極めるには、幹細胞の形態・大きさ・均一さなどの評価条件があります。これらは、培養士が丁寧に見極めて劣悪な細胞をしっかりと除去すれば問題ないはずで、機械的にふるい分ければよいという単純なものではありません。細胞分離の際に幹細胞を効率的に採取するための機器はありますが、これも適切な分離法に基づいて作業すれば幹細胞を高率に確保できますので必ずしも必要ありません。

Q4. 幹細胞を1回で10~20億個投与する、というところがあったのですが、細胞数は多ければ多いほど良いのでしょうか?
A: 幹細胞による治療効果は確かに細胞数の影響も受けます。ただし、一気に(短期間で)大量の細胞を投与することについては安全性が確認されていません。また、細胞を増やす際に、何回か培地の植え替え(継代といいます)が必要ですが、1回の細胞増殖・培養で継代できる数は3~5回以内が理想と考えています。いたずらに継代を増やして細胞数を多くしても細胞が劣化する可能性があります。至適培養環境で培養増殖した結果、一つの行程で投与し得る細胞数は2億個程度が上限になります。。
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Q5. 幹細胞の投与でがんが誘発されるリスクはないですか?
A: iPS細胞の投与は腫瘍化(がん化)のリスクがあると言われていますが、間葉系幹細胞ががん化したという報告はありません。ただし、がん細胞と間葉系幹細胞を共に培養するとがんの成長が促進されたという論文や、不均一な間葉系幹細胞や過量の幹細胞はがん細胞にとって有利にはたらく可能性を示唆する論文があるため、幹細胞があたかもがん化することがあると誤解されている方がおられるようです。がん細胞に対して外から間葉系幹細胞を投与するとがんの成長が阻害されることも示されていますので、適切な間葉系幹細胞の投与は安全面において問題がないと判断できます。
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Q6. 「幹細胞は大きいので、石灰化されたプラークや、狭窄している冠動脈の場合は、培養された幹細胞を点滴すると、詰まる可能性があり、心筋梗塞が起きるリスクがある」とのお話をきいたことがありますが、その点は、大丈夫なのでしょうか?
A: 幹細胞は、赤血球や白血球など血液中を流れる他の血球に比べて確かにやや大きめです。ただし、以下の医学的事実から、適切な速度で適切な量の幹細胞を血液中に送達すればご心配のような現象が起きることは考えにくいと言えます(今まで幹細胞移植により毛細血管の閉塞を来した例は経験がありません)。
詳細 まず、幹細胞と血液中に存在する代表的な細胞の直径を記します(単位:μm マイクロメートル=1mの100万分の1)。
幹細胞: 10~20 μm
赤血球: 7~8 μm
白血球: 6~30 μm
ところで、白血球の中で3-6%を占める単球という細胞は、幹細胞よりも大きく直径30μmもあります。そこで、この大きな細胞である単球が血液中をどのくらい流れているか考えてみましょう。まず、人の全身を流れる血液量は大体5l(リットル)です。白血球は一般的に3500~9500個が1μl(マイクロリットル)の血液中に存在し、仮に4000個/μl として計算すると、血液中の白血球数の総量は4000×5×100万=200億個になります。単球はその3-6%なので、計算上4%とすると、その総数は、200億×4/100=8億 (個)となります。すなわち、幹細胞よりも相当に大きな単球が8億個程度は全身を流れていることになります。
ところで、再生医療では1回の治療で5000万~2億個の幹細胞を一般的には点滴注射により全身に投与します。そして、投与は1時間ほどの時間をかけてゆっくりと行います。もしも、2億個の幹細胞を全て一気に血液中に注入したら毛細血管に負担をかけることはあるかもしれませんが、ゆっくりと点滴で注入すれば問題は起こさないと考えられます。そもそも血管内を流れている血液は約1分間で全身を回ります。すなわち、単球だけを見ても毎分8億個の幹細胞より大きな細胞が全身を循環しています。よって、単球より小さな幹細胞高々2億個を1時間かけて全身に投与する手法であれば血管系への負担は殆どないと言えます。


北青山D.CLINICの再生医療について

Q7. 脂肪採取の負担は大きいですか?
A: 腹部などの皮膚を2-3㎜切開して米粒大の脂肪細胞を数粒採取します。局所麻酔で実施可能で15分くらいの所要時間です。処置自体の負担はそれほど大きくなく、処置したその日からシャワーも可能ですが、1-2週間は内出血が残ったり、しこり感の消失に数か月要することがあります。
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Q8. 脂肪採取から幹細胞投与までの期間は?
A: 順調に培養がすすめば3~4週間で投与できます。
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Q9 .幹細胞培養の際に血清が必要と聞きました。どのくらいの採血が必要になるのでしょうか?
A: 細胞を培養する際には、ご自身の血清を利用するのが理想的です。血清の確保は脂肪を採取する際に実施します。必用な血液量は120mlほどです。ご自身の血清の使用を希望しない場合(採血をしたくないなどの理由で)や血清に問題がある場合は、人工血清などを使用することも可能です。

Q10. 血清を用いない細胞培養法(無血清培養法)を選択できますか?
A. 細胞培養法は、患者さんの治療目的やご体調、ご希望に合わせて、医師が適切な方法をご提案します。当院では、従来の自家血清培養法に加え、無血清培養法も選択肢としてご用意しており、それぞれのメリット・デメリットを丁寧にご説明したうえで、ご納得いただける培養法を一緒に決めてまいります。

Q11. 細胞の投与方法について教えてください。
A. 幹細胞の投与方法は、患者さんの症状や治療目的に応じて、点滴・注射・動脈カテーテル・髄腔内投与など、複数の選択肢から医師がご提案します。投与前には十分な説明を行います。ご不安やご不明な点があればいつでもご質問ください。

Q12. 細胞の長期保管(凍結保管)は可能ですか?
A. はい、当院では治療に用いなかった細胞や、追加治療を希望される方のために、細胞の長期凍結保存サービスも行っています。大切な細胞を安全な環境下で管理し、次回治療時にも鮮度を保ったままご利用いただけます。ご希望の際はお気軽にご相談ください。

Q13. 治療費はどのくらいかかりますか?
A. 治療費用はこちらのページでご確認下さい。治療費用は細胞培養法や治療内容によって異なりますが、詳細はカウンセリング時に個別にご案内いたしますので、ご安心ください。

Q14. 治療後のフォローアップについて教えてください。
A. 治療後は、1・3・6・12か月ごとに定期的な経過観察を行い、効果や安全性をしっかりと確認します。必要に応じて追加投与や治療内容の調整もご提案し、患者さんが安心して治療を継続できるよう、きめ細やかなフォロー体制を整えています。

北青山D.CLINICのCPC(細胞培養加工施設)について

北青山D.CLINICでは2025年9月、CPCの設備拡張を行い、より多くの患者さんに迅速かつ安定した細胞治療をお届けできる体制を整えました。

Q15. CPCとは何ですか?
A. CPCは、幹細胞などの細胞を安全かつ衛生的に培養・加工するための専門施設です。当院では、このCPCを院内及び隣接施設に2拠点設けており、当院スタッフが細胞の採取から培養・投与までの全工程を一貫して行っております。それにより、外部への搬送に伴う物理的刺激や時間的ロスがないため細胞の劣化や死滅を最小限に抑えることができ、細胞の管理を直接行えるので、高い品質・安全性を確保した細胞治療の提供が可能となっています。

Q16. CPCの設備が増えたことで、患者にはどのようなメリットがありますか?
A. CPCの設備を拡張したことで、より多くの患者さんの幹細胞治療を進められるようになり、これまで以上に迅速な対応が可能となりました。待機期間の短縮や、治療スケジュールの柔軟な調整がしやすくなったことで、患者さん一人ひとりに合わせた細やかな治療提供を実現いたします。

Q17.院内CPCでの培養と外部委託による培養の違いは何ですか?
A. 院内CPCの場合、細胞の採取から培養・投与まで全て当院で完結しますので、外部施設に搬送する際に発生しがちな時間のロスや温度変化による品質劣化の心配がありません。患者さんご自身の細胞を新鮮な状態で安全に管理し、治療に使用できるのが大きなメリットです。

Q18. CPCの見学や個別の相談はできますか?
A. CPCは、細菌やウイルスの外部からの侵入を厳格に防ぐために関係者以外の入室を禁止しております。特別の理由で設備の確認が必要な場合は、関係者同伴のもとで作業管理区域外の廊下からのぞき窓を介して内部設備の確認をしていただくことは可能です。ただし、細部培養加工士らが細胞培養や回収作業を実際に行っている際は、作業への集中を妨げかねませんので、誠に恐れ入りますが見学も禁止させていただいております。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。


再生医療に関して皆様方から頂戴したご質問に直接阿保院長が回答している下記の動画もご覧ください。




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