適応疾患と治療詳細

幹細胞の治療効果と適応疾患

間葉系幹細胞には、細胞の分泌物が近隣の細胞に作用する「パラクライン効果」や、 障害部位・病巣に集積する「ホーミング」と呼ばれる性質があるとされ、 免疫系の制御、血管新生、抗炎症作用、抗酸化作用、抗アポトーシス作用、組織修復作用など さまざまな再生修復作用が期待されます。 また、脂肪幹細胞による治療は従来の治療法と併用できる場合があります。

適応疾患

加齢に伴う身体的・生理的機能低下

加齢による老化はさまざまな身体的・生理機能低下を引き起こし、老化が主因となる疾患は数多く存在します。 心臓や脳などの主要臓器の機能に関わる血管病、骨・筋肉・関節などの劣化が原因となるロコモティブシンドローム・サルコペニア・フレイル、 皮膚・皮下組織の劣化、ひいては悪性新生物(がん)の発生など、老化は恒常性(ホメオスタシス)の破綻による生命機能全般の悪化につながります。 老化に伴う複合的な機能低下を俯瞰的に改善する治療は、健康寿命の延伸の観点からも重要性が高いと考えられます。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

加齢による身体的・生理的機能低下の状態にあり、その改善や増悪予防を希望される方。具体的には以下の病態や症候のある方。

  • 加齢に伴う老化が原因となる身体的・生理機能の低下および障害
  • 脳卒中、心血管障害などの動脈硬化を背景にした疾患群
  • 活性酸素、フリーラジカルに対する抵抗力の低下
  • 活性酸素、フリーラジカルによる酸化障害の増加
  • 皮膚の光老化
  • 骨量低下
  • 筋肉量ないしは筋力の低下(サルコペニア)
  • 虚弱(フレイル)

スポーツ外傷等による運動器障害

運動器は、筋・骨格・神経系の総称であり、筋肉、腱、靭帯、骨、関節、神経(運動・感覚)、脈管系などによって構成されます。 運動器の障害は、生活機能および生活の質(QOL)の低下につながり得るため、対策の社会的意義も大きいと考えられます。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

過度の外力負荷が短期間で発生するスポーツ外傷、交通事故、または加齢に伴う慢性的な負荷により生じた運動器障害を有し、 既存の治療(保存治療、手術的治療)で改善しない、もしくは十分な回復が見込めない方。

  • 肘、膝、肩、足、手、指、股関節の周囲の損傷
  • 脊髄損傷
  • 筋損傷
  • 靭帯損傷
  • 軟骨損傷
  • 腱損傷
  • 骨折後後遺症

下記のいずれかに該当する方。

  • ロコモーティブシンドローム
  • サルコペニア
  • フレイル

動脈硬化症(心筋梗塞、脳卒中)

動脈硬化症は、高血圧や糖尿病などにより動脈内膜の内皮細胞が傷つくことを契機に進行し、 狭心症、心筋梗塞、脳卒中などのリスクに関与します。 動脈硬化の進展を抑え、致死的な疾患の発症・再発を予防することが重要です。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

下記選択基準のいずれかを満たし、動脈硬化性病変を有すると判断される方。

  • CAVI値(心臓足首血管指数)≧8.0
  • ABI値(足関節上腕血圧比)≦0.9
  • 頸動脈エコー検査で頸動脈にプラーク(IMT≧1.1)を有する

以下のいずれかに該当する方。

  • 心筋梗塞、狭心症の既往がある
  • 冠動脈CT検査で冠動脈壁不整、石灰化、狭窄、閉塞所見を有す
  • 脳梗塞の既往がある
  • 頭部MRI、MRA検査で脳梗塞巣が指摘される
  • 二親等内の血縁者に動脈硬化性疾患を有する方が2名以上いる
  • 遺伝子検査で動脈硬化の素因が高いと判断された

以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。

  • 脳梗塞
  • 心筋梗塞
  • 閉塞性動脈硬化症
  • バージャー病

慢性疼痛

慢性疼痛は、発症からおおむね3か月を超えて症状が持続する病態を指すことが多く、 疼痛の要因が複合的に絡み合い、治療に難渋することがあります。 疼痛が長期化すると、仕事や学業など社会生活への影響も生じ得るため、健康に関連するQOLの低下が問題視されています。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

慢性的に以下のような痛みの症状がある方。

  • 古傷が痛む
  • 頭痛や顔面痛がある
  • 骨や筋肉が痛む
  • がんの治療中で痛みがある
  • 神経障害での痛みがある
  • 内臓や血管が原因の痛みがある

X線、CT、MRI、超音波検査などで関節の変形があり、以下の症状がある方。

  • 関節を使うと痛みが出る
  • 体を一定時間動かさずに休めていると関節が固くなる
  • 湿っぽい天気の日に痛みが強くなる
  • 痛みが持続している、あるいは再発する
  • 運動中や運動後に関節が痛む
  • 思いどおりに動かせなくなった
  • 薬や杖を使用するだけでは痛みを十分に和らげることができない
  • 痛みのためによく眠れない
  • 関節の動きが悪くなっている、あるいは曲げられる角度が小さくなったように感じる
  • 関節が固くなっている、あるいは腫れている
  • 歩いたり階段を上ったりするのが困難になった
  • 椅子に座る、椅子から立つ、浴槽に入る、浴槽から出るなどの動作が困難になった
  • 朝に関節がこわばり、その内に治まる
  • 関節がきしむような感じがする
  • 過去に膝の前十字靱帯に外傷を負ったことがある

以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。

  • 変形性膝関節症
  • 腰椎症
  • 頚椎症
  • 慢性疼痛症

認知機能障害

認知機能障害は「記憶、遂行、注意、言語、視空間認知などの認知機能領域における障害」を指し、 進行して日常生活や社会生活に支障を来す状態が認知症とされます。 認知症の初期段階は軽度認知機能障害(MCI)と呼ばれ、この段階で進行を抑えられれば発症の遅延や予防につながる可能性があります。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

  • 身近な人物や物の名前が思い出せないことが増えた
  • 物を置き忘れたり、しまい忘れたりすることが多くなった
  • 水道やガス栓を閉め忘れる
  • 同じ話や質問を繰り返す
  • 身嗜み(みだしなみ)に構わなくなる、興味関心が薄れる
  • 会話についていけない、内容がわかりづらいと感じる
  • 予定を忘れる、遅れる、日にちを間違える
  • 道に迷う、場所がわからなくなる

以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。

  • 軽度認知機能障害
  • アルツハイマー病
  • レビー小体型認知症
  • 血管性認知症

神経変性疾患

神経変性疾患は、緩徐ながら進行性の神経症状を呈し、治療方針が未確定で経過が慢性にわたる難病が多い疾患群です。 介護等に相応の人手を要することから、患者さん・ご家族を主とした社会的負担も大きい疾病とされ、 合理的な管理が可能となる治療法の確立が望まれています。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、重症筋無力症、多発性硬化症、多系統萎縮症、 脊髄小脳変性症などの神経変性疾患を患っている方。

以下の疾患を患われている方で、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。

  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 脊髄性筋萎縮症
  • パーキンソン病
  • 大脳皮質基底核変性症
  • 重症筋無力症
  • 多発性硬化症
  • 多系統萎縮症
  • 脊髄小脳変性症

慢性肺疾患

特発性間質性肺炎、特発性肺線維症、慢性閉塞性呼吸障害などは代表的な指定難病群であり、 既存の治療で十分にコントロールできないケースがあります。 慢性的な呼吸苦はQOLを著しく低下させ、急性増悪や不可逆的変化を来すこともあります。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

間質性肺炎、肺線維症、閉塞性細気管支炎、閉塞性肺疾患などの難治性慢性肺疾患に罹患しており、 既存の治療で十分なコントロールが得られていない方。もしくは以下の症状を呈し、QOLの低下を招いている方。

  • 坂道や階段昇降時などの労作時に息切れを自覚する
  • 反復性、持続性に呼吸苦を自覚する
  • 動脈血酸素分圧が低下している(例:PaO2≦60Torr)

以下の疾患を患われている方で、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。

  • 特発性間質性肺炎
  • 肺線維症
  • 慢性閉塞性呼吸障害などの慢性肺疾患

心不全

心不全は発症後に徐々に増悪することが問題視されており、特に高齢者では入院のたびに全身状態が低下し、 入院前の状態にまで回復しにくいケースがあります。根本的治療法が確立されていない領域も多く、既存治療は対症療法が中心となります。

NYHA分類(ニューヨーク心臓協会)
Ⅰ度:身体活動制限不要/日常生活で症状なし
Ⅱ度:安静時無症状/日常的活動で症状あり
Ⅲ度:軽い活動でも症状あり/活動制限が必要
Ⅳ度:安静でも症状あり/少しの活動で悪化

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、うっ血を来して日常生活に障害を生じた病態にある方。 また、労作時呼吸困難、息切れ、尿量減少、四肢の浮腫、肝腫大等の症状によりQOLの低下が生じている方。

以下の「大症状2つ」または「大症状1つ+小症状2つ以上」を持つ方。

大症状

  • 発作性夜間呼吸困難または起座呼吸
  • 頸静脈怒張
  • 肺ラ音
  • 心拡大
  • 急性肺水腫
  • 拡張早期性ギャロップ(III音)
  • 静脈圧上昇(16cmH2O以上)
  • 循環時間延長(25秒以上)
  • 肝頸静脈逆流

小症状

  • 下腿浮腫
  • 夜間咳嗽
  • 労作性呼吸困難
  • 肝腫大
  • 胸水貯留
  • 肺活量減少(最大量の1/3以下)
  • 頻脈(120/分以上)

慢性腎臓病

IgA腎症、多発性嚢胞腎、ネフローゼ症候群などの慢性腎疾患は指定難病であり、 現状では対症療法が中心となり、根治的治療が確立されていない疾患もあります。 進行により腎不全を招来し、透析が必要となる場合にはQOLや経済的負担が大きくなり得ます。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

以下のいずれかの条件に該当する方。

  • GFR < 60ml/分/1.73m2
  • 0.15g/gCr以上のタンパク尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)

以下の疾患を患われている方で、既存治療だけでは症状の改善が不十分な方。

  • IgA腎症
  • 多発性嚢胞腎
  • ネフローゼ症候群などの慢性腎疾患

肝硬変・肝線維症など肝機能障害

ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎などが慢性化すると肝線維化が進行し、 非可逆的な肝硬変に至ることがあります。肝硬変は肝不全や肝臓癌など致死的転帰につながり得るため、 進行抑制が重要とされます。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

各種原因により慢性肝疾患が進展し、線維化および結節形成が認められる状態にある方。 また、腹部エコー、造影CT、MRIなどで肝硬変に特異的な形態異常を認める方。

血液検査で以下の項目などにおいて肝機能障害に典型的な異常を認める方。

  • アルブミン値
  • プロトロンビン時間
  • 総ビリルビン値
  • 血小板値
  • AST(GOT)値
  • ALT(GPT)値
  • γGTP値
  • ALP値
  • アンモニア値

以下の疾患を患われている方で、既存治療だけでは症状の改善が不十分な方。

  • 肝硬変
  • 肝線維症
  • 慢性肝炎

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患は、免疫機構の異常により腸に慢性的な炎症が起こる病気で、下痢、血便、腹痛などの症状を伴います。 潰瘍性大腸炎とクローン病が代表的で、難治性であり、国内でも患者数が増加傾向とされます。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患に罹患しており、症状の改善や増悪予防を希望する方。

  • 潰瘍性大腸炎
  • クローン病(小腸型)
  • クローン病(大腸型)
  • クローン病(小腸大腸型)
  • 腸管ベーチェット

動脈瘤

動脈瘤は、動脈壁の構造破綻や炎症などを背景に動脈内腔が拡張する疾患です。 破裂すると致死的となり得るため、瘤径の拡大を抑えることが重要とされます。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

主要動脈等に瘤形成が指摘され、病状の増悪予防を希望する方。

  • 脳動脈瘤
  • 腹部大動脈瘤
  • 胸部大動脈瘤
  • その他の動脈瘤

糖尿病

糖尿病は、インスリンの作用不足により高血糖が慢性的に続く病気です。 自覚症状が乏しいまま進行し、網膜症・腎症・神経障害などの合併症や、動脈硬化の進行により心臓病や脳卒中のリスクが高まることがあります。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

糖尿病と診断され、既存治療(保存的治療、手術的治療)で症状の改善が不十分な方。 かつ、下記のいずれかに該当する方。

  • 早朝空腹時血糖が126mg/dl以上
  • 75gOGTTが200mg/dl以上
  • 随時血糖値が200mg/dl以上
  • HbA1cが6.5%以上

不妊症

不妊症は、妊娠を望む健康な男女が避妊をせず性交をしているにもかかわらず、一定期間(1年以上)妊娠しないものと定義されます。 排卵障害や子宮内膜症などの要因、加齢などが影響し、治療時期を逸すると改善が困難になることもあります。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

卵巣機能の低下、子宮内膜の増殖機能の低下、免疫変調、加齢などが原因の不妊症の方。

下記のいずれかに該当する方。

  • 原発性卵巣機能不全
  • 多嚢胞性卵巣不全
  • 卵管閉塞
  • 子宮内膜症
  • アッシャーマン症候群

脱毛症

脱毛症は外見上の印象を左右し、QOLに影響し得ます。 男性型脱毛症(AGA)は年齢とともに頻度が高くなるとされ、女性では更年期に多いパターンも観察されます。 病態解明や治療薬開発が進む一方、確立されていない領域もあり、科学的根拠に乏しい治療が横行する点が課題とされています。

治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。

  • 男性型脱毛症(AGA)
  • 女性型脱毛症

治療をお受けいただけない方

患者さんの安全確保のため、当院では再生医療を実施するにあたり以下の基準を設けています。該当する方は治療を受けることができません。ご了承下さい。

  • 18歳未満の患者さん
  • 脂肪採取に十分耐えられる健康状態にない患者さん
  • 正常な同意能力を有さない、または代諾者から同意が得られない患者さん
  • 本治療に関する同意説明文書を受理し十分な説明を受け、自由意思による同意を文書で示していない(代諾者が文書にて同意していない)患者さん
  • 問診、検査等などから担当医師により治療適応が無いと判断された患者さん
  • 妊娠中の女性、もしくは婦人科系の疾患を治療中、適切な避妊法に同意いただけない女性の患者さん
  • 重度の心不全、腎不全(クレアチニンクリアランス30ml/min未満)など、重篤な臓器障害をお持ちの患者さん
  • 増殖性糖尿病性網膜症や加齢黄斑変性症の診断を受けた患者さん
  • コントロールが不良な高血圧もしくは不整脈を認める患者さん
  • せん妄の臨床症状を示す患者さん
  • 12週間以内において、B型肝炎、C型肝炎、エイズ、梅毒、ヒトT細胞白血病ウイルス検査の結果が陽性の患者さん
  • ペニシリンの過剰反応がある患者さん
  • パルスオキシメーターを用いた呼吸機能検査において、PaO2が93%以下の患者さん
  • (※認知機能障害治療のみ)脳梗塞や脳内出血、くも膜下出血などの脳血管障害にて現在加療中、または過去3か月以内に入院加療を受けた患者さん
  • (※認知機能障害治療のみ)脳腫瘍にて現在加療中、又は未治療のうつ病、又は治療によっても改善していないうつ病に罹患している患者さん

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