【動画解説】再生医療の現状と課題①

再生医療とは(全6話中第1話)

様々な難治性の疾患の治療・予防法として昨今注目されている再生医療。北青山D.CLINICでは脂肪由来の間葉系幹細胞(MSC)を利用した再生医療を認知機能障害、動脈硬化、認知機能障害、神経変性疾患、心不全、慢性肺疾患、慢性腎臓病、肝機能障害、スポーツ障害などの患者さんへ提供しています。
2020年6月27日開催の院長のオンライン講演会から『再生医療の現状と課題 ①再生医療とは』(全6話中第1話)の内容をご紹介します。
第1話では「再生医療とは」をテーマに、再生医療を知るうえでの基本知識ともいえる多能性幹細胞の種類や特徴、臨床試験の状況、幹細胞バンクなど幹細胞医療を取り巻くお話まで解説しています。

【動画情報】

テーマ:「再生医療の現状と課題」①再生医療とは (全6話中第1話)
時間:10分21秒(第1話)
公開日:2020年6月27日
講演者:北青山D.CLINIC  院長 阿保義久(医師)


 


【このテーマの動画(全6話)】

第1話 ①再生医療とは(このページ)
第2話 ②そもそも幹細胞とは
第3話 ③間葉系幹細胞(MSC)療法のメカニズム・特徴
第4話 ④幹細胞投与のための細胞加工
相5話 ⑤安全性と治療適応
第6話 ⑥治療成績及び今後の期待と課題

【全文】

はじめに


みなさんこんにちは。 北青山Dクリニック院長の阿保義久と申します。昨今の新型コロナの影響で皆さんの生活様式もかなり大きく変わっているんじゃないでしょうか。 おかげさまで我々医療機関もようやくひと山を越えて落ち着いて新型コロナ対策ができるような状況になっています。 そのような中でオンラインによる診療というものを取り組んでいるんですけれどもその一端として今回はオンライン講演会という形で皆様に最新医療、我々のほうで昨今の取り組んでいる医療内容に関してご紹介したいと思いますのでお時間お付き合い頂きます。よろしくお 願いします。
早速なんですが再生医療、これに関して皆さん非常にご興味を持ってる方多いと思うんですね。 今日お話しの中でそれこそ先ほどお話しに挙げたコロナ疾患新型コロナに関しても再生医療がある程度関与することもありますのでその点も興味を持ってお聞きいただけるところがあるかと思います。
流れとしましては、だいたい6つのカテゴリーに分けて 一つのカテゴリーが10分前後ぐらいかかりますので 延べ1時間以上はお時間頂戴すると思うんですけれどもお忙しい方は録画などしていただいて、後でご覧いただくという形でも構わないかと思いますのでよろしくお願い致します。じゃあさっそく始めていきます。

再生医療とは


再生医療といっても一口に言っても色々な形のものがあります。 今私たちの方で行っているのはご自身の脂肪から抽出した再生能力のある幹細胞という細胞を使った治療になります。 さてひと事に再生医療といってもどういう風なことを言うのかまず簡単にご紹介します。
再生医療というのは、今行われている医療は先ほど話した幹細胞という細胞のもとになる まだ子供のような細胞を用いて、臓器ですとか、組織が壊れたり機能を損ねてしまったり、機能しなくなって不全になってしまったりそういう風な状況の臓器や組織を再生して、失われた人体の機能の回復を目指す医療というふうに言えます。
大きく分けますと、細胞そのものを用いた細胞治療というカテゴリーと組織や臓器の再生を目指す、いわゆる再生医療という2つのカテゴリーに分かれますが 実際は今、前者の細胞治療というのが現場で提供されています。


再生医療が求められる理由


再生医療がなぜ求められたかというとご存じのように日本は高齢化社会真っ只中です。 平均寿命は色々なことから大きく進展しています。 それによって細胞の老化が原因となる慢性疾患も増加していて中には残念ながら根治治療が存在しない難治性のものもあります。 例えばアルツハイマー病という認知症とか、パーキンソン病、変形性の膝の関節症、腰椎症や脳卒中後の後遺症、心不全、 色々とこういう難治性の残念ながら今の医療技術で気持ちよく治せないような疾患というのが沢山あります。


医学の進歩


これらに対して再生医療が期待されているわけですがこの再生医療というのは、医学の進歩の中で認められる先端医療のなかの一つの技術と言えます。 こちらのスライドに上げているように、まずゲノムといって人の遺伝子情報が全て解明されるようになりました。 それに伴って生まれてきたのが今日話をしている再生医療ですとか、 あとは皆さんもよく耳にされると思うんですけれども、AIに伴うロボット技術ですとか あとは免疫を使った新しいがんの治療、様々な難治性疾患に対する遺伝子治療こういうようなものが昨今の医学の進歩の代表的なものと言えます。


多能性幹細胞の樹立


さてその再生医療の中でまず一番この皆さんの注目を集めたのが、多能性幹細胞の樹立ということになります。 幹細胞とひとことで言っても、色々なものに分裂することができる幹細胞からある程度ちょっとした組織の修復にとどまる細胞まで色々幅があるのですが、 まずこの多能性の肝細胞の発見が再生医療に対する注目をまず起こしたということになります。

いわゆる山中先生がノーベル賞を受賞されたiPS細胞、これがその一つの代表になります。 そのiPS細胞を含めて実は代表的なその何でも変化しうる幹細胞というのは2つあります。 この ES細胞というものと、iPS細胞です。ES細胞というのは受精卵の一部にある内部細胞塊という部分から作られるものです。 ですからほかの人の受精卵を利用した治療ということになります。
一方 iPS 細胞はご自身の体細胞から遺伝子をそこに新たに導入して作った人工的な細胞ですね。
ES細胞と同じように何でも化けることができる自己複製能も持つどんどん自己増殖で増えていくこともできる。そういう特徴を持っています。
この2つの細胞が、まず再生医療に対しての注目を浴びる大きい発明発見でありました。


多能性細胞利用の再生医療臨床試験状況


この ES細胞と iPS細胞というのは、国際的にも臨床試験が非常に進んでおりまして、 ちょっとこちらのグラフを見て頂いてお分かりになると思うんですけど、アメリカ、カナダ、ブラジル、日本、韓国、中国、オーストラリア、イギリス、フランス、イスラエルと代表的な先進国の状況をこちらまとめているんですけれども、青色が ES細胞の臨床試験、オレンジが iPS細胞の臨床試験。 これ見るとふと皆さん気づくと思うんですけれど、臨床試験が iPSに関して多くを行われているのは、日本とオーストラリアが部分的に行われていますけれども、ほとんど日本が主ということになります。 すなわち世界は今、多能性幹細胞の臨床試験はES細胞が主で、日本は iPS細胞がうまくいけば日本は一人勝ちになるんですけれども、 ただ ES細胞がやはり優れている再生医療技術ということになってしまうと、日本はまたそれを追いかける形になるかもしれません。この点に関しては非常に興味深い所と言えます。


ES 細胞 iPS細胞により高次の臓器を作ることはまだ実現できない


さてその今お話した ES細胞や iPS細胞というのは非常に期待される万能な細胞なんですけれども、 残念ながら皆さんがイメージしているかもしれない心臓や脳や肝臓というような臓器を完全に再生できる技術までは至っていません。 これらの臓器を完全に作る技術というのは、これからの話になると思いますし、しばらくちょっと時間がかかると思います。


iPS細胞による組織再生技術


今もうすでに iPS細胞によって組織再生が可能な技術は、例えば難治性のいわゆる視力低下を伴う加齢黄斑変性症と言われるものの網膜の上皮細胞のシート、 これを再生させるという技術は2014年もう樹立されています。
あと2020年、今年の1月には心筋細胞シートといういわゆる細胞のレベルまでの再生はiPSを利用して可能になっています。


世界の疾患iPSバンクの現状


先ほどは臨床試験のお話だったんですけど、じゃあその iPS細胞というのは、 お耳にされた方もいらっしゃるかもしれないけれども、いわゆる iPSバンクといって 何かのために保管するという技術も今は発達してきています。
このバンクに関して言うと日本、米国、EU諸国でかなりの数の株が保管されています。 ふとおかしいと思うかもしれないんですが、臨床試験自体はES細胞が他の国は主なんですけれど、 ご自身の細胞から人工的に作ることができる iPS細胞はこういう貯蔵が比較的容易なわけですね。 ですので臨床試験までは至っていないけれども、米国もEU諸国も日本を追いかけるかのように、 米国はいろいろな組織が分散しているので一つ一つは少ないんですけれども、 全部合わせると日本は理研が一手にバンクを運営しているんですけれども、 結果としてはアメリカが今のところ一番多いと。 これは2018年12月のdataなのでもう1年以上のズレがあるんですけれども 全体的な動きは大きく変わっていないと思います。 まずこういうこれからの多能性幹細胞の治療というのも 注目していかなければいけないというふうに考えています。

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