加齢に伴う身体的および生理的機能の低下(老化)に対する再生医療
【間葉系幹細胞(MSC)治療】

目次



1.加齢による機能低下(老化)は様々な疾患の原因になる

加齢に伴う身体的および生理的機能の低下、すなわち老化は、脳神経、心血管系、呼吸器系、消化器系、腎臓・泌尿器系、骨、筋肉、免疫系、視覚、聴覚、皮膚、精神的な側面など、さまざまな領域で現れます。この過程で発生する機能の低下は、ほとんどの場合、体にとって有害です。

厚生労働省の「介護が必要となった主な原因」(出典:厚生労働省|2022年 国民生活基礎調査)によると、65歳以上の要介護者が介護を必要とする主な原因は、「認知症」「脳血管疾患(脳卒中)」「高齢による衰弱(フレイル)」「骨折や転倒」「関節疾患(変形性関節症など)」が上位に挙げられています。これらは、加齢による機能低下(老化)によって引き起こされる代表的な疾患群であり、生活習慣の見直しや、適切な医療介入を行うことでその進行を防ぐことが求められます。

厚生労働省の「介護が必要となった主な原因」(国民生活基礎調査)


医療技術の進歩や生活環境の改善によって人々の寿命は延び、高齢化が進んでいますが、その結果、加齢による機能低下(老化)による疾患や障害によって介護を必要とする人々が増加しています。これが、高齢者を支える世代にも大きな負担を与え、全世代にわたる生活の質を損ない、社会全体の活力を低下させる原因となっています。老化現象をコントロールし、ただ長生きするのではなく、健康的に長生きできる社会を実現することは、個人や社会全体の幸福にとって非常に重要な課題です。 北青山D.CLINICでは、再生医療を、健康的な老化「Your Best Aging」医療プログラムの一環としても位置付けをし、適用疾患を取得し提供しています。

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2.主な症状

加齢に伴う身体生理機能低下(老化)が主因となる疾患は数多く存在します。心臓や脳などの主要臓器の機能に関わる血管病、骨・筋肉・関節などの劣化が原因となるロコモティブシンドローム・サルコペニア・フレイル、光老化が主因となる皮膚・皮下組織の劣化、ひいては悪性新生物(がん)の発生など、老化は心身の恒常性(ホメオスタシス)の破綻によって生命機能全般を悪化させます。

ロコモ、フレイル、サルコペニアについて

老化の代表的な概念である「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」は、加齢に伴う運動機能の低下を指す言葉です。また、高齢者の筋力低下によって身体機能が衰え、さらに抑うつや認知機能の低下により社会生活が困難になる「フレイル(虚弱)」も、介護が必要な状態に至る点で注目されています。ロコモやフレイルは、骨や筋肉の老化による機能低下が引き起こす問題であり、ロコモが進行するとフレイルに至ると考えられます。

さらに、筋肉量が減少する「サルコペニア」という概念も、老化現象を象徴する表現として広く用いられています。ロコモ、フレイル、サルコペニアは、加齢による骨や筋肉の衰えに関する異なる側面を示しています。これらの状態が進行すると、健康で快適な生活が送りにくくなるだけでなく、社会的な関わりも失われ、要介護状態に陥る人が増加するため、関心が高まっています。加齢による機能低下(老化)の進行を抑えることは、ロコモ、フレイル、サルコペニアの予防につながると言えるでしょう。

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3.診断方法

加齢による機能低下(老化)の診断方法は多岐にわたりますが、基本的には身体的・認知的・生理的な変化を評価することで行われます。老化の診断には、個別の疾患や障害が原因となっている場合もあるため、総合的なアプローチが求められます。加齢現象に影響を与える要因として、環境要因、ホルモン変化、活性酸素ダメージ、遺伝子などが挙げられます。

  1. 身体的健康の評価
    ・身体検査:筋力、関節の可動域、姿勢、歩行の速度や安定性などの評価
    ・血液検査:ホルモンレベル(成長ホルモン、性ホルモンなど)、ビタミン・ミネラルの状態、血糖値や脂質などの代謝異常の調査
    ・心臓・血管の評価:血圧測定、動脈硬化度測定(CAVI検査)、頸動脈エコー検査など
  2. 認知機能の評価
    ・認知機能テスト:MMSEや時計描画テストなどを用いて記憶力・注意力・言語能力・判断力などを評価
    ・認知症MCI検査 「アミロイドβペプチド」を脳内から排出したり、そのシナプスへの攻撃から防御したりする働きを持つ3種類のタンパク質(APOA1、TTR、C3)の血中濃度を調べ、統計学的手法により認知機能障害の程度を推定します。
    ・脳ドック(AI併用) 脳卒中予防や脳腫瘍早期発見を意図した脳ドックに加え、AIによる脳MRI画像解析と認知心理CQテストにより認知機能を評価します。
  3. 生理的変化の評価
    ・骨密度検査:骨粗鬆症や骨折のリスク評価
    ・視力・聴力検査:視力や聴力の変化の評価
    ・尿検査・便検査:消化器系や泌尿器系の状態の評価
  4. 筋力と運動能力の評価
    ・歩行速度テスト:歩行速度の低下は老化のサインとして重要
    ・握力測定:全身の筋力指標として活用
  5. 生活の質(QOL)の評価
    生活の質(QOL)の変化を評価し、老化度の把握に用いることがあります。
  6. テロメア検査
    テロメア検査により、老化の進行や疾患リスクに関与する指標を確認することがあります。

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4.加齢に対する化学的診断(ドック・検査)

化学的な老化の評価として、当院では「エイジングケアドック」や「テロメア検査」、「認知症MCI検査」、「リキッドバイオプシー」などを行っています。

エイジングケアドック

エイジングケアドックは、血管年齢、肺年齢、骨年齢、ホルモン年齢、酸化障害度、免疫年齢などを測定し、老化度(加齢度)を客観的に評価するものです。基本検査として、血管・肺・骨・ホルモン・免疫の年齢、酸化障害度を評価します。「プレミアム」ではテロメア検査・認知症MCI検査、「プラチナ」ではさらにがんRNA検査を追加して評価します。

加齢による生理機能の評価
  • 血液検査(一般血液検査・各種ビタミン・腫瘍マーカー)
    一般的な血液検査項目に加え、腫瘍マーカー、加齢と共に枯渇する代表的なホルモン(成長ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)を測定し、ホルモン年齢などを算出します。
  • 動脈硬化度検査(CAVI検査)
    全身の血管の硬化度、血管の閉塞度を評価し、血管年齢を算出します。
  • 頚動脈超音波検査
    頸動脈の内膜中膜肥厚度を測定し、プラークの有無や血管の老化度を確認します。
  • 呼吸機能検査
    肺活量、呼気力、気道の滑らかさなどを測定し、肺年齢を算出します。
  • 骨密度検査
    骨塩量と骨代謝状態を測定し、骨年齢を算出します。
  • フリーラジカル障害度検査
    酸化ストレス度測定(d-ROMテスト)と抗酸化力測定(BAPテスト)を用いて、酸化ダメージと抗酸化力を評価します。
  • 免疫機能検査(NK活性)
    血液中の免疫活性を測定します。
  • 加齢関連ホルモン検査
    加齢に伴い変化するホルモンバランスを測定します。
細胞老化度評価 プレミアム・プラチナのみ

テロメア検査
細胞老化の指標となるテロメア強度・疲労度を測定します。

認知機能低下評価 プレミアム・プラチナのみ

認知症MCI検査
発症前の軽度認知障害(MCI)の段階で異常を発見することを目指します。

がん細胞の発生リスクを評価 プラチナのみ

テロメア検査

テロメアは染色体の端に存在する構造で、重要な遺伝情報を保護しています。テロメア検査では、テロメアの状態を分析し、遺伝的な強さ(テロメア強度)やストレスによる疲労度(テロメア疲労度)を測定します。

認知症MCI検査

アルツハイマー病の原因物質である「アミロイドβペプチド」は、脳内から脊髄液を介して血液に排出されます。脳内に蓄積すると神経細胞にダメージを与え、記憶や認知機能を担うシナプスを障害すると言われています。認知症MCI検査では、APOA1、TTR、C3の血中濃度を測定し、その値から統計学的に認知機能障害の程度を推定します。

MCI(軽度認知障害スクリーニング検査)グラフ

リキッドバイオプシー

リキッドバイオプシーとは、血液、尿、唾液、脳脊髄液、胸水、腹水、便などの体液サンプルを用いてゲノム解析を行う検査です。採取負担が比較的少ないことから、がんや認知症の早期発見・予防の観点でも注目されています。当院では、予防医療の一環としてリキッドバイオプシー検査をご提供しています。

リキッドバイオプシー検査 相関図

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5.予防

生命活動を維持する過程で加齢(aging)は避けられませんが、加齢に伴う身体的・生理的機能の低下、すなわち老化(senescence)は、適切な介入によりその進行を遅らせたり、防いだりすることが可能と考えられています。加齢による機能低下(老化)は多くの疾患の要因ともなるため、その進行を抑えることは関連疾患の予防にもつながります。

フレイル予防のポイント(参考)


  1. バランスの取れた食事
    抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール)を多く含む食品、オメガ3脂肪酸、タンパク質の摂取を心がけましょう。
  2. 定期的な運動
    有酸素運動に加え、週に数回の筋力トレーニング、ストレッチなどを取り入れましょう。
  3. 十分な睡眠
    規則正しい睡眠習慣を意識し、睡眠不足を避けましょう。
  4. ストレス管理
    深呼吸、瞑想、趣味など、心身を整える時間を確保しましょう。
  5. 社会的なつながり
    家族や友人との交流、地域活動への参加など、孤立を避ける工夫をしましょう。
  6. 禁煙と適度な飲酒
    喫煙や過度な飲酒は健康リスクとなるため注意しましょう。
  7. 健康診断と早期発見
    定期的に検査を受け、問題があれば早期に対処しましょう。
  8. 積極的な学習と精神的刺激
    新しいことを学び、思考を活発に保つことも重要です。

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6.加齢による機能低下(老化)と再生医療

加齢に伴う身体的および生理的機能の低下、いわゆる「老化」は、関節や筋肉の衰え、慢性的な痛み、疲労感の増加、見た目など、さまざまな形で現れます。近年、こうした老化に対する新たな選択肢として注目されているのが再生医療です。再生医療は、損なわれた組織や機能の回復を目指す医療であり、老化そのものを止める治療ではありませんが、加齢により低下した身体機能に対して改善を目指すアプローチとして研究と臨床応用が進められています。

再生医療は従来の治療法とは異なる成果を上げる可能性がある一方で、治療効果には限界があり、幹細胞の機能には個人差があることも知られています。それでも、自身の修復・再生力を活用するアプローチとして、倫理的な問題が少なく、安全性の観点からも検討されている治療法の一つです。

当院では、再生医療の適応疾患として 「加齢に伴う身体的および生理的機能の低下に対する再生医療」 (および「認知機能低下」「動脈硬化」「慢性疼痛」「運動器(骨・筋肉・関節・神経)障害」「慢性肺疾患」「慢性腎疾患」「動脈瘤」など) について、厚生労働省への届出受理のもとで提供しています。

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7.間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)治療とは

身体の中には組織の修復効果を持つさまざまな幹細胞が存在しており、中でも骨髄や脂肪の中に潜む間葉系幹細胞は再生医療の素材として高く注目されています。特に脂肪由来の間葉系幹細胞は骨髄由来のものに比べて以下の優位点があることから研究や治療に広く用いられるようになっています。

  • 幹細胞を抽出できる脂肪細胞は、骨髄細胞に比較して容易にかつ低侵襲に採取できる
  • 脂肪由来間葉系幹細胞は骨髄由来と同様の脂肪・骨・軟骨への分化能に加えて骨髄由来にはない筋分化能も持つことが示されている
  • 脂肪由来間葉系幹細胞は、細胞形態や分化能は骨髄由来と差異はないが、増殖能が強く、増殖に伴う老化の影響や骨分化能の低下が少ない

少量の脂肪から間葉系幹細胞を分離し、細胞培養加工施設(CPC)で培養した後、体内(病態に応じた部位)へ点滴や局所注射などで送達する治療法を、間葉系幹細胞治療(幹細胞移植)と呼びます。外来治療で対応できる点が評価されており、加齢に伴う身体的および生理的機能の低下(老化)の改善を目指す治療として国際的にも検討されています。

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8.薬理効果

間葉系幹細胞は、血管新生作用、パラクライン作用、免疫調節作用、抗炎症作用などを通じて、加齢に伴う身体的および生理的機能の低下の改善に関与する可能性が示されています。

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9.治療の流れ・費用・リスク

加齢に伴う身体的および生理的機能の低下(老化)に対する間葉系幹細胞による再生医療(幹細胞治療)は、具体的に以下のステップで進みます。

  1. カウンセリング
  2. 問診・血液検査:
    血中d-ROM値(酸化ダメージの指標値)、血中BAP値(抗酸化力の指標値)などを評価します。
  3. 脂肪採取:腹部や膝裏などから、3mm程度の切開で米粒大の脂肪を採取(局所麻酔で外来処置)
  4. 幹細胞の分離・培養:採取した脂肪から間葉系幹細胞を分離し、細胞培養加工施設(CPC)で増殖培養(3〜4週間)
  5. 幹細胞の投与:増殖培養した間葉系幹細胞を、病態に応じて点滴、局所注射、動脈カテーテル投与、髄腔内投与などで送達
  6. 経過観察

治療費用・リスク

費用:165万円(税込)

治療費用

  • 再生医療は保険適用外のため、自費診療となります。
  • 費用は治療内容(培養法・投与方法・投与回数等)により異なります。

治療のリスク

  • 採血時:穿刺部疼痛、皮下出血、神経障害
  • 脂肪採取時:疼痛、感染、皮下出血、硬結、色素沈着
  • 培養時:培養遅延、汚染
  • 投与時:注射部痛、灼熱感、発熱、悪心、呼吸症状(血栓症)
  • 治療後:症状回復遅延、治療効果不足

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10.治療適応

治療適応は、加齢による身体的・生理的機能低下(老化)の状態にあり、その改善や増悪予防を希望される方です。具体的には以下の病態や症候が治療対象となります。

  1. 加齢に伴う老化が原因となる身体生理機能の低下および障害
  2. 脳卒中、心血管障害などの動脈硬化を背景にした疾患群
  3. 活性酸素、フリーラジカルに対する抵抗力の低下
  4. 活性酸素、フリーラジカルによる酸化障害の増加
  5. 皮膚の光老化
  6. 骨量低下
  7. 筋肉量ないしは筋力の低下(サルコペニア)
  8. 虚弱(フレイル)

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11.実際の症例

概要:2019年4月、加齢による身体機能・パフォーマンス低下、慢性疼痛、認知機能障害の改善・予防として幹細胞治療を開始。当初2回の投与で機能改善の自覚があり、視力、腰痛も改善した。その後もパフォーマンスの維持・向上のため、半年に1回ほどの間隔で治療を継続中。
治療期間:2019年5月〜2023年1月(3年9か月)※最初の2か月間で2回投与。その後も約半年ごとに8回継続中。
費用:初回の脂肪採取+投与 165万円(税込)※再脂肪採取/細胞培養/投与の費用等は別途。※上記費用は治療当時の費用規定に則った概算です。

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12.治療評価について

当院では、加齢に伴う身体的および生理的機能の低下(老化)に対する再生医療(幹細胞治療)について、以下の指標を参考に評価しています。

  1. 血中BAP値(抗酸化力の指標値)
  2. 血中d-ROM値(酸化ダメージの指標値)

下記は「第9回 北青山D.CLINIC 特定認定再生医療等委員会」で報告した治療経過の結果です。34例の治療経過において、いずれの指標値でも顕著な改善が得られない例がある一方、増悪例はなく、一定の改善が見られる症例もあります。また、過半数の症例が治療の継続を希望されていることから、今後も経過を注視していきます。

加齢治療評価グラフ

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