88歳であることを理由に下肢静脈瘤手術を諦めてしまった患者さまvarixlaser

先月、88歳の女性の患者さまがご主人と一緒に受診されました。

他に治療中の大きな病気はなく、自立した日常生活を送っていらっしゃる方です。検査の際には膝くらいの高さのベッドの上にも踏み台を使わずに立ち上がることができ、88歳とは思えないほど身のこなしの軽い方でした。

長い間両脚の下肢静脈瘤に悩んでおり、日中は足が重だるく、時に痛みもあるため、どこで治療をすればよいか探していたところ、TVで当院の日帰り治療のことを知って受診したそうです。

その患者さまは典型的な伏在型の下肢静脈瘤でした。弁不全を起こしている伏在静脈本幹は短く末梢の静脈の拡張が大きい珍しいタイプでしたが、当院で行っている血管内レーザー治療と硬化療法で根治できると判断しました。手術は両脚20-30分くらいでその日のうちに帰宅できること、しばらく圧迫ストッキングの着用が必要だが翌日からは入浴もできること、そして皮下出血や鈍い痛みなど軽度の合併症が多少術後に見られるけれども必ず回復することを説明しました。ご本人とご主人は日帰りで治療が可能であることに喜ばれ、早速手術の予約を取り、同意書を提出してお帰りになりました。

20分ほどの診察時間でしたが、診断結果や治療内容をしっかり理解していただき、医師と患者の良い信頼関係が構築できたという印象を持ちました。

ところが、手術の数日前になってご本人から電話があり、知り合いの医師に「手術は危険なのでやめなさい。」と言われ、怖くなったので治療をキャンセルしたい、とのことです。私はスタッフからこの報告を受け大変驚きました。彼女が長く苦しんでいた症状が治る可能性があっただけに残念な気持ちにもなりました。

今までに北青山Dクリニックでは、80歳代後半の患者さまの下肢静脈瘤治療を何件も行っています。

下肢静脈瘤の治療のために鹿児島から89歳の男性が来院されたことがありました。彼は東京都内の医療機関で次々治療を断られ途方に暮れていたところ、地元に帰る直前で当院を受診したそうです。そして問題なく治療を受けられ、後に「感謝の手紙」を当院に送ってくださり、そのことがTVで放映されました。
その時に比べても、治療機器や治療法はさらに進化し、より体に優しく安全になっています。


88歳と高齢でしたが、体力面・精神面で全く問題なく、当院の下肢静脈瘤治療を問題なく受けていただける方でした。

確かに、負担の大きな麻酔と手術、1-2週間の入院が必要で、高齢の方には気軽に治療を勧められない時代もありました。しかし、今やメスを入れない血管内治療が一般化し、低侵襲で安全な治療が普及しています。しかし、そうした情報が医師にすら十分に伝わっていないのです。そのために、つらい症状から解放されるもしれない方々が、治療を諦めてしまう事実があります。

重症化してから治療を受けられた方々はみなさん口をそろえて「もっと早く治療を受ければ良かった」と話されます。その度に、現在の下肢静脈瘤治療の事情がもっと認知されることを願っています。

監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会