再生医療(幹細胞治療)|【症例】動脈硬化に対する再生医療【北青山D.CLINIC】

動脈硬化に対する再生医療(幹細胞治療)

動脈硬化の改善を直接促す薬剤はまだありません。当院はCAVI値・ABI値・IMT値という客観的な指標で経過を追いながら、幹細胞治療を行っています。

動脈硬化は、症状が進行するまで気づきにくい疾患です。心筋梗塞や脳卒中など、突然死や後遺症につながる状態を避けるために重要なのは、動脈硬化を進展させないことです。北青山D.CLINICでは、厚生労働省に届け出た第二種再生医療等提供計画に基づき、動脈硬化症に対する自家脂肪由来間葉系幹細胞治療を提供しています。

このページで分かること

  • 動脈硬化の原因と、進行したときに起こりうること
  • 再生医療がこの疾患で何を目指すのか(治癒ではなく進展の抑制)
  • 治療の流れ・費用・リスクと、当院が評価に用いている3つの指標

1.動脈硬化とは

動脈硬化とは、血管(動脈)が硬くなり弾力を失う状態を指します。動脈硬化が進行すると、血管の内壁に脂肪やカルシウム、コレステロールなどが蓄積し、血管が狭く、硬く、厚くなります。これにより血流が悪化し、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。

血液中のコレステロールや脂肪などからできた粥状の物質をプラークと言い、プラークが動脈の内壁に蓄積して血管を狭める状態がアテローム性動脈硬化です。プラークが不安定化して破裂すると、漏出した物質が刺激となって血栓が発生し、血管内腔を閉塞することで心筋梗塞や脳梗塞が引き起こされます。

動脈の内壁にプラークが蓄積し、血管が狭くなる様子を示した図

動脈硬化とプラークの形成

日本人の食生活が欧米化するに伴い、動脈硬化を原因とする疾患の死亡数は年々増えています。血管は加齢現象が反映されやすい臓器であり、血管の老化現象である動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳卒中など生命を脅かす重篤な疾患の発生が現実のものとなり得ます。いわゆる突然死の原因となる血管病の多くは動脈硬化に起因するため、発症予防と進行抑制が重要です。

2.動脈硬化の主な原因

動脈硬化の主な原因
高血圧血管に過剰な圧力がかかり、血管内壁が傷つきやすくなります。
高コレステロールLDL(悪玉)コレステロールが血管内に沈着し、プラーク(脂肪の塊)を形成します。
喫煙血管が収縮し、血管内皮がダメージを受け、動脈硬化が進行します。
糖尿病高血糖が血管内皮を損傷し、動脈硬化を促進します。
肥満内臓脂肪の増加によりサイトカイン分泌が増え、動脈硬化の進行が加速し得ます。
加齢・老化酸化ストレスの増大などを背景に、細胞・DNAの変性、血管内皮細胞の障害が生じ得ます。
遺伝的要因家族内で発生しやすい場合があります。

※ 加齢による機能低下全般については、加齢に伴う機能低下(老化)に対する再生医療をご覧ください。

3.動脈硬化の進行と影響

動脈硬化が進行すると、以下のような重大な健康問題を引き起こすことがあります。

動脈硬化が起こりやすい部位と、生じうる疾患
心臓狭心症/心筋梗塞/心不全/不整脈
脳脳出血/脳梗塞/一過性脳虚血発作/くも膜下出血
胸部・腹部大動脈瘤/動脈解離
腎臓腎硬化症
下肢閉塞性動脈硬化症

動脈硬化が起こりやすい部位(心臓・脳・大動脈・腎臓・下肢)と、それぞれで生じうる疾患を示した図

動脈硬化が起こりやすい部位と疾患

4.予防と管理

動脈硬化を予防するためには、健康的な生活習慣を維持することが重要です。

  1. バランスの取れた食事(コレステロールを下げる食事を心がける)
    緑黄色野菜を豊富に食べる/脱水を避ける/減塩を心掛ける/動物性タンパクに偏らない/腹八分/間食しない/就寝前3時間は食事しない/抗酸化サプリメントを利用する
  2. 定期的な運動・休養
    毎日7〜7.5時間の睡眠/週3〜5日以上、20分のウォーキング
  3. 禁煙
  4. ストレス管理
    毎日20回の深呼吸/ストレス回避・ストレス消化(趣味重視、瞑想)
  5. 定期的な健康診断
    血圧、血糖値、コレステロール値をチェックする

動脈硬化は、症状が進行するまで気づきにくいことが多いため、早期の予防と健康管理が大切です。当院では、動脈硬化の度合いを、血管の硬さ、血管壁の厚さ、血液の酸化度、および血液検査によって評価します。病的なレベルに達している方、または病的ではないものの進行が見られる方に対し、再生医療という選択肢をご案内しています。

5.動脈硬化と再生医療

動脈硬化の発症リスクである高血圧、脂質異常症、糖尿病などに対する治療薬や、血栓の生成を抑止する抗血小板剤・抗凝固剤は複数存在しますが、動脈硬化の改善を直接促す薬剤は現時点では確立されていません。再生医療(幹細胞治療)については、動脈硬化に伴う炎症の抑制や血管新生効果が期待され、虚血症状の改善につながる可能性が研究されています。

動脈硬化症が原因となる心筋梗塞や脳卒中など、突然死や後遺症が残る危機的な状況を回避するために重要なのは、動脈硬化症を進展させないことです。動脈硬化症の進展を抑え、致死的な疾患の発症を予防することが治療の目標であり、動脈硬化を元の状態に戻すこと(治癒)を目指すものではありません。

当院では、再生医療の適応疾患として「動脈硬化症に対する再生医療」(および「心不全」「動脈瘤」「糖尿病」についても受理済)を厚生労働省に届け出し、受理されています。

研究の到達点について

12章に挙げた参考文献は、その多くが動物モデルを用いた基礎研究、および動脈瘤を対象とした研究です。動脈硬化症に対する人での有効性が確立したことを示すものではありません。

6.間葉系幹細胞(MSC)治療とは

身体の中には組織の修復効果を持つさまざまな幹細胞が存在しており、中でも骨髄や脂肪の中に潜む間葉系幹細胞は再生医療の素材として注目されています。特に脂肪由来の間葉系幹細胞は骨髄由来のものに比べて以下の点が報告されており、研究や治療に広く用いられるようになっています。

  • 幹細胞を抽出できる脂肪組織は、骨髄に比較して容易にかつ低侵襲に採取できる
  • 脂肪由来間葉系幹細胞は骨髄由来と同様の脂肪・骨・軟骨への分化能に加えて骨髄由来にはない筋分化能も持つことが示されています
  • 脂肪由来間葉系幹細胞は、細胞形態や分化能は骨髄由来と差異はない一方で、増殖能が高く、増殖に伴う老化の影響や骨分化能の低下が少ないとされています

これらの脂肪由来間葉系幹細胞を、体内から取り出した少量の脂肪から分離し、管理された環境下で培養したものを、体内(患部)に注射や点滴で送達する治療法を、間葉系幹細胞治療(幹細胞移植)と呼びます。外来治療で対応できる点が評価されており、動脈硬化を対象とした臨床応用も国内外で進められています。

7.想定される作用機序

間葉系幹細胞(MSC)は、動脈硬化に対して、血管新生作用、パラクライン作用、免疫調節作用、抗炎症作用などを通じて作用することが報告されています。

※ これらは研究において示唆されている機序であり、当院の治療効果を示すものではありません。疾患領域ごとの機序の整理は治療の妥当性と作用機序をご覧ください。

8.治療の流れ・費用・リスク

動脈硬化に対する間葉系幹細胞(MSC)治療は、以下のステップで進みます。

  1. カウンセリング治療内容、期待できる効果、限界、リスク、費用についてご説明します。
  2. 検査①動脈硬化度 CAVI値(心臓足首血管指数)/②動脈の狭窄度 ABI値(足関節上腕血圧比)/③頸動脈のプラーク肥厚度(IMT値)を測定します。
  3. 脂肪採取腹部や膝裏など、3mm程度の切開により米粒大数粒の脂肪を採取します(局所麻酔で外来処置)。
  4. 間葉系幹細胞の分離・培養採取した脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、院内の細胞培養加工施設(CPC)で増殖培養します。継代3〜5回以内・培養3〜4週間以内を基準としています。
  5. 間葉系幹細胞の投与基準の範囲で得られた幹細胞を、点滴等により体内へ送達します。
  6. 経過観察1・3・6・12か月を目安に、CAVI値・ABI値・IMT値を含めて経過を確認します。

※ 培養できる細胞数には個人差があります。当院は投与細胞数を保証せず、基準の範囲で得られた数をそのままお伝えしています(なぜ投与する幹細胞の数は人によって違うのか)。

治療費用

自家血清培養法:165万円(税込)/無血清培養法:220万円(税込)(脂肪採取+細胞培養+投与)

  • 再生医療は保険適用外のため、自費診療となります。
  • 費用は治療内容(培養法・投与方法・投与回数等)により異なります。
  • 投与経路の変更や併用による追加費用はありません。

治療のリスク

  • 採血時:穿刺部疼痛、皮下出血、神経障害
  • 脂肪採取時:疼痛、感染、皮下出血、硬結、色素沈着
  • 培養時:培養遅延、汚染
  • 投与時:注射部痛、灼熱感、発熱、悪心、呼吸症状(血栓塞栓症)
  • 治療後:症状回復遅延、治療効果不足

9.治療適応

脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)治療は動脈硬化に悩まれる方を対象としていますが、治療適応は以下を基本とします。

対象となる主な病態

  1. 下記選択基準のいずれかを満たし、動脈硬化性病変を有すると判断される方
    ・CAVI値(心臓足首血管指数)≧8.0
    ・ABI値(足関節上腕血圧比)≦0.9
    ・頸動脈エコー検査で頸動脈(総頚動脈、内頚動脈)にプラーク(IMT≧1.1mm)を有する
  2. 以下のいずれかに該当する方
    ・心筋梗塞、狭心症の既往がある
    ・冠動脈CT検査で冠動脈壁不整、石灰化、狭窄、閉塞所見を有する
    ・脳梗塞の既往がある
    ・頭部MRI、MRA検査で脳梗塞巣が指摘される
    ・二親等内の血縁者に動脈硬化性疾患を有する方が2名以上いる
    ・遺伝子検査で動脈硬化の素因が高いと判断された
  3. 以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方
    ・脳梗塞/心筋梗塞/閉塞性動脈硬化症/バージャー病

上記に該当する場合でも、診察および検査の結果によって治療をお勧めしないことがあります。適応の可否は個別に判断します。

10.実際の症例

いずれも1例の治療経過であり、同じ結果が他の方に得られることを示すものではありません。効果には個人差があります。

11.治療評価について

当院では、動脈硬化に対する再生医療(幹細胞治療)を以下の指標を基に評価しています。

評価に用いる3つの指標
動脈硬化度:CAVI値数値が大きいほど動脈硬化の程度が大きい
動脈の狭窄度:ABI値1以下の場合は血行障害あり
頸動脈のプラーク肥厚度:IMT値1.1mm以上でプラーク(病的な状態)と診断

下記は、「第9回 北青山Dクリニック特定認定再生医療等委員会」で報告した治療経過の結果です。25例の治療経過において、いずれの検査でも軽度の改善が確認されました。

この結果の読み方

25例という限られた症例数の観察であり、対照群を置いた比較ではありません。また、生活習慣の改善や併用している薬剤の影響を区別できていません。本治療が動脈硬化症に有効であることを示す根拠にはならず、心筋梗塞や脳卒中の発症を予防できることを示すものでもありません。

1.動脈硬化度 CAVI値

治療前後のCAVI値の推移を示したグラフ

2.動脈の狭窄度 ABI値

治療前後のABI値の推移を示したグラフ

3.頸動脈のプラーク肥厚度 IMTmax推移

治療前後のIMTmax値の推移を示したグラフ

出典:「第9回 北青山Dクリニック特定認定再生医療等委員会 定期報告書」より

12.出典

  1. Experiment model for coadjuvant treatment with mesenchymal stem cells for aortic aneurysm. Am J Stem Cells. 2012;1(3):174-181.
  2. Periadventitial adipose-derived stem cell treatment halts elastase-induced abdominal aortic aneurysm progression. Regen Med. 2014;9(6):733-41.
  3. Autologous adipose-derived mesenchymal stem cells improve healing of coiled experimental saccular aneurysms. J Neurointerv Surg. 2018;10(1):60-65.
  4. Human Adipose-Derived Stem Cells Suppress Elastase-Induced Murine Abdominal Aortic Inflammation and Aneurysm Expansion Through Paracrine Factors. Cell Transplant. 2017;26(2):173-189.
  5. Therapeutic efficacy of mesenchymal stem cells for abdominal aortic aneurysm: a meta-analysis of preclinical studies. Stem Cell Res Ther. 2022;13:81.
  6. Protective Effect of Mesenchymal Stem Cells Against the Development of Intracranial Aneurysm Rupture in Mice. Neurosurgery. 2017;81(6):1021-1028.
  7. Abo Y. Real-world safety profile of repeated outpatient autologous adipose-derived mesenchymal stromal cell therapy. Stem Cell Res Ther. 2026(採択・早期公開版). doi:10.1186/s13287-026-05213-z

※ 出典1〜6は、動物モデルを用いた基礎研究および動脈瘤を対象とした研究を含みます。動脈硬化症に対する人での有効性が確立したことを示すものではありません。

13.本ページで扱う自由診療について(限定解除事項)