2007年学会資料

2000年10月~2006年までの間に北青山Dクリニックで日帰り手術を受けられた方々の中で、425名のアンケート調査をもとに、本年2007年6月に京都で開かれた国際静脈学会で発表した内容です。

ご協力いただいた方々にこの場をお借りして御礼申し上げます。

北青山Dクリニック  院長 阿保義久


2007年6月18日~20日開催
静脈学会
国際静脈学会

下肢静脈瘤血管内レーザー治療の術後成績の検討

北青山Dクリニック  阿保 義久

伏在型静脈瘤のストリッピング手術を、2000年10月以来、外来日帰り手術で施行してきた。2005年7月からは、血管内レーザー治療を治療選択の一つとして加えた。伏在型静脈瘤に対して、血管内レーザ治療が閉塞率や合併症の点で、根治治療として期待しうるか検討した。

[対象と方法] 対象は、2000年10月より2005年6月までにストリッピング手術を施行した伏在型下肢静脈瘤435例614肢(男:女=1:2.0、年齢21歳から91歳、平均年齢46.6歳)および、2005年7月より2006年12月までに血管内レーザー治療を施行した伏在型下肢静脈瘤228例333肢(男:女=1:3.9 年齢27歳~80歳、平均年齢57.1歳)血管内レーザー治療は、波長1,320nmのNd:YAGレザーを用い、原則として高位結紮を併用し照射出力5W,牽引速度1mm/sで、大伏在静脈は膝下の伏在静脈分岐部よりGSV中枢側断端まで、少伏在静脈は下腿中央部近傍よりSSV中枢側断端までを焼灼した。

不全穿通枝を認めて場合には穿通枝結紮および瘤切除を追加した。高齢者や切開を拒む患者などには、膝下からの穿刺法により対応した。CEPA分類Grande4以上の症例には術中に硬化療法を併用した。術後1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、および1年目に経過観察し、ドプラーエコー検査で照射血管および末梢血管の閉塞の有無、深部静脈血栓症、血栓性血管炎、神経障害、色素沈着などの合併症の有無を確認した。

[結果] 術後全観察期間を通じて深部静脈血栓症を発生した例は1例も無く、術後1ヶ月で血栓性血管炎を生じたのは8肢(2.4%)であった。6ヶ月ないしは1年の経過観察が可能であったのはそれぞれ61例76肢、21例26肢で、術後6ヶ月の時点で再疎通0肢、神経障害が2肢(2.6%)色素沈着6肢(7.9%)、1年目では、それそれ0肢、0肢、1肢(4.7%)であった。[考察]伏在型静脈瘤に対して、1,320nmのNd:YAGレーザーを用いた血管内レーザー治療は、根治的治療の選択肢の一つとして十分期待しうる。

※無断転用禁止

   

   

はじめに

伏在型静脈瘤のストリッピング手術を、2000年10月以来局所麻酔及び静脈麻酔下の外来日帰り手術で施行してきた。2005年7月からは、1320nmのNd:YAGレーザーによる血管内レーザー治療を治療選択肢の一つとして加え、患者の希望に応じて、ストリッピング手術もしくは血管内レーザー治療を適宜選択した。

伏在型静脈瘤の根治的手術であるストリッピング手術に対して、血管内レーザー治療が術後成績、合併症の点で対峙し得るか検討した。

目的

伏在型静脈瘤に対する血管内レーザー治療の治療効果、合併症発生率、治療に対する満足度、などを、ストリッピング手術と比較検討する。

対象

方法 A

血管内レーザー治療後 6ヶ月、1年目の、照射血管の閉塞率、合併症の発生率を調査した。

方法 B

  • 対象患者に対してアンケート調査を行った。
  • アンケート回答は、663例中366例(回収率55.0%)から得ることができた。
  • 匿名の回答を、以下の評価項目につき集計した。
  • 評価時期を以下、Ⅰ~Ⅴに分類した。

評価方法

1. 初診時の症状の改善度及び治療に対する満足度は、以下の5段階で評価した。


2. 術後の合併症は、術直後の発生率と経過時期の有症状率を比較した。

治療内容①

ストリッピング手術

治療内容②

血管内レーザー治療

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結果A 血管内レーザー治療後 6ヶ月、1年目における血管閉塞率及び合併症の発生率

結果B-1 初診時の症状:ストリッピング手術

結果B-1 初診時の症状:血管内レーザー治療

結果B-1 各治療時期(Ⅰ~Ⅴ)の対象患者数

結果B-2 初診時の症状の改善度:ストリッピング手術 I

結果B-2 初診時の症状の改善度:ストリッピング手術 Ⅱ

結果B-2 初診時の症状の改善度:ストリッピング手術 Ⅲ

結果B-2 初診時の症状の改善度:ストリッピング手術 Ⅳ

結果B-2 初診時の症状の改善度:ストリッピング手術 Ⅴ

結果B-2 初診時の症状の改善度:血管内レーザー治療 Ⅰ

結果B-2 初診時の症状の改善度:血管内レーザー治療 Ⅱ

結果B-2 初診時の症状の改善度:血管内レーザー治療 Ⅲ

結果B-2 初診時の症状の改善度:血管内レーザー治療 Ⅳ

結果B-2 初診時の症状の改善度:血管内レーザー治療 Ⅴ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 ストリッピング手術 Ⅰ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 ストリッピング手術 Ⅱ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 ストリッピング手術 Ⅲ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 ストリッピング手術 Ⅳ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 ストリッピング手術 Ⅴ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 血管内レーザー治療 Ⅰ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 血管内レーザー治療 Ⅱ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 血管内レーザー治療 Ⅲ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 血管内レーザー治療 Ⅳ

結果B-3 術後の合併症内容及び術後の合併症の改善度 血管内レーザー治療 Ⅴ

結果B-4 治療に対する満足度:ストリッピング手術

結果B-4 治療に対する満足度:ストリッピング-Ⅰ~Ⅴ

結果B-4 治療に対する満足度:血管内レーザー治療

結果B-4 治療に対する満足度:血管内レーザーⅠ~Ⅴ

まとめ

  • 血管内レーザー治療後6ヶ月及び1年経過の時点で、照射血管及び末梢血管の閉塞率は100%で、合併症の発生頻度も小さかった。
  • ストリッピング手術と血管内レーザー治療の初診時の症状分布は、同等であった。
  • 自覚症状の改善度は、血管内レーザー治療の方がストリッピング手術より若干良好であった。
  • 合併症の発生率、その改善度は、ストリッピング手術と血管内レーザー治療で同等であった。
  • ストリッピング手術、血管内レーザー治療共に、高い患者満足度が得られた。

考察

  • 伏在型静脈瘤に対する1320nmのNd:YAGレーザーを用いた血管内レーザー治療は、症状の改善度や術後合併症の発生率及びその改善度の点で、ストリッピング手術に比して同等以上の良好な術後成績が得られた。
  • アンケート調査で、血管内レーザー治療は、ストリッピング手術と同等の満足度が得られ、根治的治療の選択肢の一つとして十分期待しうる。
  • ただし、日帰りストリッピング手術は、我々が期待した以上の患者満足度が得られ、今後、ストリッピング手術ないしは血管内治療の適用を十分検討する必要があると考えられた。