外国人の下肢静脈瘤の患者さんは重症・複雑なケースが多い?!varixlaser

2020年の東京オリンピックに向けて訪日する外国人の数は年々増えているようです。その影響もあるのか、ここ最近海外から下肢静脈瘤の治療を希望して来院される方が増えています。2000年に開業して以来、大使館員やビジネスマンなど外国人の患者さんの来院は珍しくありませんでしたが、ここ最近は特にアジア圏の患者さんが増えています。中でも、中国人が最も多いですが、ロシア、モンゴル、シンガポール、インドネシア、インド、パキスタンなど、極東、東アジア、南アジア、東南アジアなどから患者さんが来院されます。アメリカ、イギリス、フランスからの方もいらっしゃいますが、昨今は圧倒的にアジア周辺諸国からの患者さんの方が多くなりました。

外国人の方でも静脈瘤の病態や症状そして治療法は変わりません。ただし、日本人の患者さんに比べると、より重症で複雑な症例が多い印象を受けます。特に中国の方は、静脈瘤のサイズも大きく、逆流血管の拡張蛇行も顕著な例が多いです。静脈瘤の部分を蜂に刺させる治療?を受けていたという方もおられ、さすがに今ではそのような治療はないでしょうが、長期間しっかりとした管理がされずに放置されていたことが重症化を招いたのではないかと思われます。また、今まで複数の国で診察・検査・治療を受けてきたのに症状が改善しないので日本での治療を希望して来院されるというケースもしばしばあり、不適切な治療を重ねたために病状が複雑になってしまった可能性があります。

さらに、病態が特殊で母国では治せないと言われたので、何とかそれを治療してほしくて来日される方もいらっしゃいます。そのような症例は得てして先天性の複雑な静脈瘤なので、治療が容易ではありません。いずれにしても、日本の医療が評価されてきているという印象を受けます。日本の医療は国民皆保険制度という世界に誇れるシステムのもとに成り立っていますが、一方で、治療が画一化されているために特殊なケースや複雑なニーズには対応し切れないという欠点があります。外国人の方は日本の保険がないので、国内の保険制度の制限を受けません。なので、医療従事者側もある程度自由かつ積極的に難しい症例にも挑むことができ、その結果、難治症例に対しても良好な治療成績を残せているのかもしれません。いずれにしても日本の医療技術が高く評価され信頼を得ている昨今の状況は、誇って良いのではと感じています。

ただし、外国人の難治症例の治療に追われて、日本人の治療が犠牲になるのはもってのほかです。外国人の診療は、英語を介して行うにしろ母国語の通訳を介して行うにしろ一概に時間がかかります。Dクリニックでは、外国人の受診が過度に重ならないように配慮して予約診療を行っています。日本人で急を要する病状の方の診療が遅れるなど、国内の患者さんが不当に不利益を被らないように配慮しています。

さて、昨今、来院した外国人の方の症例を一部ご紹介します。

一人目は30歳代のパキスタンの方です。

※治療の特徴・リスク・費用はこちら

母国で鋭利なもので刺され、腹腔内臓器を損傷し手術を受けた際に深部静脈血栓症を発症しました。左下腿の腫脹が改善せずに来日。他院でワーファリンやリクシアナなどの抗凝固剤の処方と圧迫療法を継続したとのことですが潰瘍が発生して痛くて歩行ができなくなりました。その後大学病院の有名な先生を紹介されるも、治療法がない、日本では治せない、と言われて失望していたところ、北青山Dクリニックの噂を聞いて受診したとのことでした。確かに深部静脈血栓症の後遺症はありましたが、丁寧に診察、検査すると病巣の責任病巣は、複雑な下肢静脈瘤であることがわかりました。複数回に及ぶ血管内カテーテルを用いた高周波焼灼術やレーザー焼灼術、フォーム硬化療法を駆使することにより、激しい痛みを伴う潰瘍は治癒しました。
下は治療開始4か月後の写真です。

二人目は、40歳代のロシア人です。

※治療の特徴・リスク・費用はこちら

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この方も母国で深部静脈血栓症の治療を受けた経験があり、静脈瘤の原因となる逆流血管は下図のように蛇行が激しく複雑でした。

ガイドライン上、二次性静脈瘤(深部静脈血栓症に伴う静脈瘤)は血管内治療の適用外です。
ただし、この方の深部静脈血栓は完全に消失しており、症状の原因は残っている表在の蛇行拡張した逆流血管のみでした。通常、血管内レーザー焼灼術は1ないしは2か所くらいの穿刺処理で対応できますが、この方は10数か所以上の穿刺、レーザーファイバー挿入、焼灼を繰り返しコントロールしました

手術後2日目、ロシアに帰国する直前の写真です。

三人目は20歳代の中国人です。

徐々に膨らみ、中国の医療機関で下肢静脈瘤の診断で手術を受けたとのこと。その後さらに膨らみ痛みが出てきたとのことで受診されました。エコー、MRI検査で動静脈奇形と診断、現在血管内レーザー焼灼術を駆使して管理中です。痛みは軽減傾向にありますがボール状の腫大を完全に消失させることは難しいかもしれません。

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◆治療のリスク・費用◆
潰瘍を伴う重症な静脈瘤の治療

(特徴・リスク)
血管内照射術後に肉眼的な症状の回復には数か月~1年程度要します。
潰瘍の治療のために手術後の定期的な通院が必要です。

(治療費用)
保険適用レーザー
総額で25,000円(1割負担)~80,000円(3割負担)/片脚。

自費レーザーなど
総額が250,000~350,000円(税別)/片脚

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◆治療のリスク・費用◆
二次性静脈瘤の治療

(特徴・リスク)
本来、深部静脈血栓症に伴う二次性静脈瘤は治療適用外と言われていました。
ただし、深部静脈血栓症が解消して安定している場合は治療が可能です。
大学病院や総合病院で治療ができないと判断される症例が多いです。

(治療費用)
保険適用レーザー
総額で25,000円(1割負担)~80,000円(3割負担)/片脚。

自費レーザーなど
総額が250,000~350,000円(税別)/片脚

監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会