下肢静脈瘤と血栓症varixlaser

下肢静脈瘤の治療を希望する方のほとんどは、ボコボコと浮き上がる血管が気持ち悪いのでそれらを消したいと考えています。一方、見た目は気にならないけれども、足が痛い、かゆい、重苦しいなどの症状に悩んで治療を希望する方もいらっしゃいます。さらに、下肢静脈瘤が重症化して、血栓や潰瘍が発症して激痛を伴ったために治療を希望する方もおられます。

中でも、血管が膨らんでいるだけで痛くもかゆくもないから放っていたという方が、急に足が痛くなって歩行困難となり治療を希望して来院することがあります。そのような場合に良く見受けられるのが血栓症です。血栓症は血管の中で血液が急に固まってしまい血管を塞いでしまうことで起きる症状で、心臓、肺、脳などの主要臓器に発症することが多い点で最近注目されています。下肢静脈瘤に伴う血栓症は血栓性血管炎と呼ばれ、ふくらはぎや足関節週周囲に発症し、痛くて歩行ができないということもしばしばです。

こうなってしまうと、根治治療である血管内治療はすぐ実施することができず、消炎陳痛剤などを用いて症状が終息するのを待つしかありません。そして、一旦収束してもまた何かのタイミングで再燃すると言うことがしばしばあります。そのため症状が終息して血
管内治療が実施された後もしっかりとケアする必要があり、完全に回復するまで相当の期間を費やしてしまうことがあります。すなわち血栓症の発症リスクがあるという点で、下肢静脈瘤は重症化する前に治療をすることが大切と言えます。

さて、血栓症には大きく分けて二つのタイプがあります。一つは血液が何らかの原因でスムーズに流れず血管内や心臓の中でよどみ溜まってしまうために固まるタイプ、もう一つは動脈硬化を背景にして血管内にできたプラークが破裂したり激しい炎症が起きたため
に局所で血液が急激に固まるタイプです。

前者のタイプは、ロングフライト症候群(エコノミークラス症候群)で知られる深部静脈血栓症から肺塞栓・肺梗塞に至る一連の症候群と心房細動に由来する脳梗塞です。いずれも致死的な疾患で予防が極めて大切です。深部静脈血栓症及び肺梗塞にならないように
するには、長時間じっと動かずにいるようなことは避けて、適度に体(特に足)を動かし、水分を十分に摂取することが大切です。また、検診などで心房細動が指摘されたら血栓が生じないように適切な薬(抗凝固剤)を服用する必要があります。下肢静脈瘤に伴う血栓症もこちらのタイプに含まれます。

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後者のタイプは、心筋梗塞、心臓由来以外の一般的な脳梗塞に見られます。これはアテローム性動脈硬化と呼ばれる典型的な血管の老化が背景にあります。血管の老化を進めるのが、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満です。食事療法や運動療法に気を配ることが血管の老化予防には非常に重要です。

監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会