下肢静脈瘤のレーザー治療に瘤切除(stab avulsion)は必要?varixlaser

国内では最近、下肢静脈瘤の「血管内レーザー治療」を「血管内焼灼術」と呼ぶことが多くなっています。これは、当初国際的にEndo Venous Laser Treatment (EVLT)と呼ばれていたものが、最近になってEndo Venous Laser Ablation (EVLA)の方が好まれるようになったことに対応しています。

さて、このEVLA(血管内焼灼術)は傷口が極めて小さく体に負担のかからない低侵襲治療であることが最大の利点なのですが、大きな静脈瘤にも対応できるのかという疑念が外科現場からは長く投げかけられていました。

北青山Dクリニックでは2005年にEVLAを本格的に導入して以来、血管の処理の仕方や照射法を工夫することで大きな静脈瘤にもEVLAで対応してきました。不全穿通枝や末端の静脈瘤は時に2㎝を超えるような大きな静脈瘤になりますが、技術を駆使してレーザーを用いれば、良好な治療結果を得られるのです

一方で、昨今は大きな静脈瘤には瘤切除(stab avulsion)という、皮膚に数㎜のメスを入れて静脈瘤を取り除く手法を併用するのがスタンダードだという主張する医療機関も見受けられます。

確かに目立たない傷で静脈の瘤を取り除くことができれば治療としては問題ないと言えるかもしれませんが、本来のEVLAの最大の利点である「皮膚にメスを入れない低侵襲」と言う利点は損なわれてしまいます。さらに、stab avulsionを行うためにメスを入れる箇所は太股やふくらはぎといった人目に触れる部位ですので、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここで、北青山Dクリニックにて瘤切除(stab avulsion)を用いずに、EVLA(血管内焼灼術)で大きな静脈瘤を治療した一例をご紹介します。

44歳の女性で両下肢の大伏在静脈と左小伏在静脈領域の静脈瘤がありました。治療は2000nmの最高波長レーザーを用いて、1回ですべての静脈瘤に対してEVLAを行いました。末梢の大きな瘤にもレーザーによる血管内治療を実施し、レーザーを挿入できないところは硬化療法も駆使して対応しました。

写真は治療前と治療3か月後(手術後最初の受診)の写真です。

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このように、当院では皮膚切開を必要とするstab avulsionは不要だと考えています。
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◆治療のリスク・費用◆
40代女性、血管内照射タイプのレーザーによる治療

(特徴・リスク)
CEAP重症度分類は平均2程度です。
治療を希望される方が最も多い年代です。
むくみや皮膚のかゆみの訴えが多いです。
手術後に抗アレルギー剤を併用する場合があります。

(治療費用)
保険適用レーザー
総額で25,000円(1割負担)~80,000円(3割負担)/片脚。

自費レーザーなど
総額が250,000~350,000円(税別)/片脚

監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会