国益を損なう下肢静脈瘤-その治療により生活の質と自尊心が回復する-varixlaser

下肢静脈瘤の治療法などの最新情報を得るために、時間を見つけて国際論文に目を通すようにしていますが、先日興味深い記事を目にしました。

それは下肢静脈瘤の疫学と症候学に関するアメリカの記事でした。

下肢静脈瘤は世界的にも罹患人口が多い疾患で、アメリカも例外ではありません。

米国の成人の27%が、何らかの静脈機能不全‐下肢静脈瘤、毛細血管拡張症、慢性皮膚病や潰瘍などに悩まされています。その発生リスクとしては、遺伝が最も多く、他に血管炎の既往歴、女性、妊娠、長時間の立ち仕事が挙げられます。これらについては、日本でも同様に指摘されていることですが、今回注目したのは次の内容です。

下肢静脈瘤は進行すると潰瘍が発生し得るが、実際に潰瘍が発症すると生活の質が損なわれるだけでなく、労働時間の損失が引き起こされる。下肢静脈瘤による潰瘍のためにアメリカ合衆国では1年で200万日以上の労働日数が失われ、5%の人が職を失う。そのことが、米国の血管外科医がこの疾患について常に気を留め、米国のメディアがこの疾患を強く注目している理由である。

今まで、この下肢静脈瘤に関する多くの学会に参加し、たびたび下肢静脈瘤の取材を受けてきましたが、「下肢静脈瘤が国民の労働力を奪い国益を損ねる」という視点での議論はしたことがありません。

また、記事は以下のように締めくくられていました。

下肢静脈瘤に随伴する慢性皮膚病(脂肪性皮膚硬化症)や潰瘍を除いて、患者さんたちが最も気にされている症状は静脈瘤や毛細血管拡張症による肉眼的ストレスだ。これらの肉眼的所見に加えて、むくみ、疲労感、重さ、不快感を取り除くために患者さん達は医療機関の門戸をたたく。そして、これらの症状が取り除かれた時、患者さん達の多くは生活の質が改善するだけでなく大いに自尊心を取り戻す。

下肢静脈瘤の悩みは周囲が思う以上に深いものなのでしょう。

下肢静脈瘤に悩む方々が、一刻も早くその悩みを解消できるよう、今後も引き続き治療の提供に努めていきたいと考えています。

監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会