テレ朝スーパーモーニングの質問へ回答varixlaser

先日、テレビ朝日スーパーモーニングの取材でDクリニックの治療を取材していただきましたが、番組でコメンテーターの鳥越様が質問された「下肢静脈瘤の予防法」について回答した内容を転載します。

コーナーの後半でコメンテーターの鳥越様が「下肢静脈瘤の予防法」について詰問されておりましたが、私のアドバイスが不十分だったのかもしれません。下肢静脈瘤は、一旦発生すると自然には治らず確実に進行しますので、その予防法は、視聴者の方にとって非常に重要なテーマだと思います。改めて解説させていただきます。

肉眼的にボコボコとした典型的な下肢静脈瘤が発生・進展する機序は、下記の如く概説できます。
① 何らかの原因で深部静脈の内圧が高まり、表在静脈が深部静脈に合流する部分の逆流防止弁にかかる血液圧が上昇する。
→② その逆流防止弁が破綻する。
→③ 深部静脈の血流が表在静脈に流れ込む(逆流)。
→④ 逆流した血液は、末梢血管内の逆流防止弁をドミノ倒しの如く破壊する。
→⑤ 逆流した血液により表在静脈が膨らみやすい箇所から膨らむ。
→⑥ 深部静脈からの逆流量は徐々に増えていき、下肢静脈瘤の症状は徐々に進行する。

②が発生してしまうと下肢静脈瘤の症状は一方向に進展してしまいます。圧迫ストッキングを履くことは⑤を抑えて、症状の進行を遅らせることにはなりますが、①→②以下を完全に止めるものではありません。実際、弾性ストッキングは厚手のため夏場は着用しにくく、厚力が強いために脱着が大変で日常的には使用しにくいので、全く下肢静脈瘤の無い人にとっての予防法としてはあまり適切ではありません。ただし、増大した子宮のために深部静脈の圧が高まっていて、かつホルモンの影響で血管が柔らかく膨らみやすい妊婦さんにはマタニティ用の圧迫ストッキングを着用するのは下肢静脈瘤発症予防の点で非常に有効です。

予防法として最も重要なのは、①の深部静脈圧が高まって表在静脈が深部静脈に合流する弁への血液圧が高まらないようにすることです。
そのためには、まず、血液自体が重くならない、すなわち血液中の水分が枯渇したり、血液の粘度が高くならないようにすることが重要です。つまり、脱水にならないように十分に水分を摂取する習慣をつける、ドロドロの血液にならないように緑黄色野菜を豊富に含んだバランスの取れた食生活に心がける、感染症にかからないようにする、などがポイントになります。

また、腹圧があがると深部静脈の圧が高くなりますので、太り過ぎないようにすることも重要です。深部静脈の圧には重力も関与します。立ちっぱなしの時間が長すぎるのも避けるべきです。

そして、脚の筋肉は第二の心臓とも呼ばれるように、脚の深部静脈の中にたまっている血液を筋肉のポンプ作用で心臓に押し戻す作用があります。その意味で脚の筋肉を衰えさせないようにすることは非常に重要です。番組で提案されていた足台昇降も良いですが、毎日のウオーキング(30分程度)の励行で十分筋力維持に繋がります。水中ウオーキングができれば尚更ベターです。浮力の影響で血液は軽くなり、水圧が血管のふくらみを抑え、水中歩行では陸上歩行よりも筋肉の収縮が強く求められるので合理的に筋肉が補強されるなど、水中は下肢静脈瘤の予防環境としては理想的な要因を多くもっています。エコノミークラス症候群は下肢静脈瘤の発症にかかわる可能性があります。狭い所でじっとしているのは良くありません。長時間飛行機に乗るときは足首をまわす、座ったままでも踵(かかと)の上げ下げを行うのも有効な予防法になるでしょう。

まとめますと、
① 脱水にならないよう十分水分を取る。
② 緑黄色野菜を十分に含むバランスの取れた食事に心がける。
③ 免疫力を下げないように十分な睡眠をとりストレスを避ける。
④ 太らない。
⑤ 立ちっぱなしを避ける(歩き回ったほうが良い)。
⑥ 毎日30分のウオーキングを励行する(水中歩行は尚ベター)。
⑦ 狭い所でじっとする状態を避ける。そのような時は足首を回したり、踵の上げ下げをしたり、背伸びをしたりなどして、脚・腹部の筋肉を動かす。
が、ポイントになります。

今後も医療に関することで何かございましたらお気軽にご相談下さい。

監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会