【動画解説】「遺伝子治療 CDC6 RNAiがなぜ必要とされるのか?」



【動画情報】

テーマ:遺伝子治療がなぜ必要とされるのか?
時間:21分14秒
公開日:2021年09月09日
講演者:北青山D.CLINIC  院長 阿保義久(医師)


【全文】

はじめに


みなさんこんにちは。北青山D.CLINIC阿保義久です。今回は遺伝子治療はなぜ必要なのか、こういうタイトルでお話してみたいと思いますのでよろしくお願い致します。
もうすでに前回の動画で細胞の中に含まれている遺伝子の働きというものについて解説しながら治療のこともご案内したんですけれども今回なぜ特にこのがんに対しての遺伝子治療というものが必要なのか、求められているのかという点にフォーカスしてお話してみたいと思いますのでよろしくお願い致します。

遺伝子というのは、今更皆さんに説明するまでもないかもしれませんが、昨今では遺伝子ワクチン、あとは遺伝子ゲノム解析、クリスパー・キャス・ナイン(CRISPR-Cas9)など様々な遺伝子に関係する医療用語が使われているわけですけれども、特にがん細胞においてはその突然変異を細胞に遺伝子的に起こすことががんを作り出すということも長く知られておりまして、その点にメスを入れる医療というのが今後注目されているということをまずお話していきたいと思います。

がんの標準治療


なぜその遺伝子に関して特に今回がん治療で注視しているかといいますと、現在がんに関しては様々な標準治療があります。まず遺伝子治療をするまでもなく標準治療でコントロールできる機会がかなり増えてきています。ただそのがんというのも発見されるタイミングによっては非常に早期で見つかることもあれば、残念ながら進行してかなり末期に近づいた形でようやく発見されるという段階もありますので、そのがんの進行度によって治療自体の目的ですとか、そのゴール、エンドポイント、意義が異なるということが言えると思うんですよね。
例えば標準治療でのがんに対してのステージごとの治療の目標というかエンドポイントを見てみますと、がん幹細胞というのは、これはあまり耳にされないかもしれませんが、正常細胞が突然変異してがん化する時、実際のがん細胞になる前にがんの「こどもの細胞」というのがありまして、まだ画像上発見できないようなレベルのがんの幹細胞というのがあるんですけど、これに対しては残念ながらまず診断もしっかりできないものですから、治療方法が残念ながら無い。一般的内視鏡検査とかCT検査などで非常に早期の段階でがんが見つかった場合には、これは標準治療としては外科的な切除で根治治療ができます。ところが少しがんが進んでしまって手術で取りきれないような場合とか、取り切れたように思ったんだけれども残念ながら少し残ってしまったような進行がんの場合には、中々根治的な治療というのは目標にならず、にどうにか延命するということに主眼が置かれます。同じように手術が終わってから転移が見つかったり、もしくは診断のときにすでに転移があったり、治療の後に再発をきたしたような場合というのは、がんのタチが悪いケースが多いものですから、根治治療というのは標準治療で今中々できていなくてですね、治療のゴールは延命治療、治療自体は化学療法ですとか、分子標的治療ですとか、いろいろ発達してきていますし、免疫療法も含めて新しい治療がどんどん進化してきていますが、ただ残念ながらこのステージになってくるとゴールは延命ということになります。
さらにがんが進んでしまって、なかなか治療による改善を見られない。治療しても副作用だけが蓄積されてしまうという判断を下されたような場合には、もしくは正常な臓器の機能が落ちてしまうところまで進んでしまったような場合にはBSCと言っていわゆる無治療のステージ、そういう状況になることも少なくありません。


遺伝子治療のエンドポイント


遺伝子治療は一方でこのエンドポイント目的が先ほどのようが標準治療ではカバーできないような例えば進行がんとか転移再発がん、そのようなものも根治治療をエンドポイントにおけます。必ず根治するということではありません、残念ながらそれは誤解がないように。そういうエンドポイント、目標に治療ができる設計できるということです。現にまだ数はそれほど多くはないんですけれども、進行がんや転移や再発をきたしたがんに対してい遺伝子治療で完全にコントロールできるというケースが一つ一つ増えてきております。
なので標準治療にはないこの遺伝子治療のステージに関係なくがんに対しての根治が期待できるという点が一番のその意義ともいえるかもしれません。ただ残念ながら、進行がんが更に進んで正常な臓器が弱ってしまう、正常に機能しなくなってしまうような末期がん、がんが非常に広範囲に広がってしまったような場合には残念ながら根治というのは遺伝子治療をもってしても今は残念ながら目標にすることができません。その場合にはどうにか生活を健やかに営める時間を少しでも長引かせるために延命するということを目標に置かざるを得ないというところもあります。
話は前後しますけれども、がんの肝細胞、最近はRNAの検査などで画像で見つからないレベルでがんの子供の細胞というものの存在が示唆されるような段階でがんを検出できるようになってきました。それに対しても予防的治療として遺伝子治療というのは理論上は応用できるということが言えると思います。


他の先端治療の限界


さらに標準治療がどんどん進化している中で、承認されている新しい治療というものも増えてきています。これからの治療も含めてですけれども、ほかの先端治療に関しても非常に期待されるところがありますが、それぞれの治療も残念ながらやはり限界があります。今、免疫チェックポイント阻害剤、すでにキイトルーダとかオプジーボとか、胃がんとか膵臓がんに使われだしていますけれども、この治療はやはり残念ながら副作用があり、治療効果にも限界があるということ。あとは血液がんに対してこれも遺伝子治療にちょっと関連していますけれどもCAR-T細胞療法というご自身のT細胞を遺伝子的操作をして強力にしてまた体に送り戻すという、白血病ですとかリンパ腫に対して使える治療ですけれども、これもやっぱり強い副作用ですとか、あとは胃がん大腸がんなども固形がんにはなかなか使えないというそういう限界があります。
あとはNIHの小林氏が開発した楽天メディカルが今非常に注目をして、がんセンターなどでも導入が開始されている光免疫療法、これは特殊な光を抗体に反応させるような物質を含んだものを血液中に入れてですね、がんに集めたものを光で叩くというこれも本当に画期的な治療で、副作用がほとんどないというメリットがあるんですけれども、やはり治療の適用がまだ限られていたりですとか、あと予防的な治療までちょっとできない、がんが存在していないと治療ができないというような限界もあります。さらに最近は脳神経外科の領域ですとか、前立腺癌の領域で、ウイルスを用いてがんを叩くという、がんの中だけで反応してがん細胞だけを殺していくという、これも画期的な治療ですけど、こういうウイルス療法というものもこれから台頭してくると思われますが、これもその適用が限られることだとか、がんが存在しないといけないというような限界もあります。あとはコロナワクチンというのは最近よく注目されていますがこれはがんのワクチンを開発する製薬メーカーなどが作り出したという事も一つテーマになっていますけれども、がんに対してもご自身の免疫を強めて治療に結びつけられないかという、そういう医療技術が発達していますがまだこれは技術的に未確立であるということ、あと予防的な治療もこれまでちょっとできないんじゃないかということが限界と言われています。


CDC6RNAi治療 導入経緯


今回我々の方がこの遺伝子治療を導入させていただいているということをお話しするにあたって、その経緯ということをまずお伝えしなければいけません。遺伝子治療自体は残念ながら未承認治療ですので、標準治療を行っている先生方からはまだ受け入れられていないということも明らかなんですけれども、それでも我々がこれを行っている理由っていうのが、まずはその2000年代前半に南カリフォルニア大学のDr.Luo Fengが木村清子さんという方とこの遺伝子治療を開発していたという事があります。その情報を聞き取った末期がんの日本人の患者さんたちが海外でこの治療を既に経験されているという背景がありました。 そのような方々が日本でこの治療を希望されて、我々のところにたまたまご縁があって打診ににいらっしゃったと。ただこの治療は未承認治療でもあるということから我々も慎重にこの治療に関して検討を進めていたんですけれども、論文の検証ですとかあとはその発案者とのディスカッションですとか、ひいては患者さんご本人が他に治療法がない、標準治療でコントロールできないんだけれどもこの治療していくことで自分たちの生活が改善したり命がつながっているという事実があるので、なんとかこの治療を続けていくうえで日本で協力してもらえる医療機関をみつけられないかということなんだという切実な思いもあって、それに対して我々がしっかりとした検証の下で治療を組み立てていくということは科学的にも倫理的にも問題ないだろうという判断で始めたという経緯があります。実際は新しい医療というのはしっかりと治験を組んで、いろいろなtrial&errorを乗り越えた上で長い年月をかけてようやく承認が下りて世の中に問われるわけですけれども、この遺伝子治療自体ももちろんそのような流れを今作っておりますが、まだそういう承認薬という形で現場に出てくるには10年、場合によっては20年かかるかもしれないというのは段階なんですけれども、いろいろ特殊な事情でこういうふうに臨床現場で使われ出していたという背景があったところを我々としては自費診療で踏襲しているというそういう事情があります。


スキルス胃がん 55歳男性 改善例


その時に紹介されたこの胃がんの方ですね。遺伝子治療を導入するにあたって55歳のスキルス性の胃がんの方がこうやって遺伝子治療だけで改善しましたということを我々も説明を受けたわけですね。ちょっとあの、これだけではちょっと信じがたかったわけですけれども、


CDC6RNAi治療 論文群抜粋


様々な論文をもう一度我々も手にとって確認をして


RNA干渉


この医療技術自体がRNA干渉という今までにはなかった新しい特殊な治療背景がある、がんに特有の遺伝子発現を抑制する、そのmRNAを破壊することによってその遺伝子発現の制御していくということ。がんの発生を規定しているタンパク質というのが見つかってきたものですから、それを消去してがん無限増殖分裂能を消し去るという、正常細胞にほとんどダメージも与えずに、がん細胞にいわゆる分裂能を与えなくするような画期的な治療ということで、その症例、論文、こういう治療設計という点で我々も取り組みだしたという背景があります。


胃がん(ステージ4)高齢者


実際、我々の症例をいくつかご紹介しますけれども、胃がんのステージ4の90代の患者さんなんですけど、内視鏡下で遺伝子治療製剤をこの病変に直接注入することによって、病変がどんどんこうやって縮小していったというケースです。
この方は前の紹介させていただいたことがあるんですけど、このように肉眼的に明らかに改善する例というのはやりそんなにたくさんあるわけではないので、重複して使わせていただいています。


肺がん ステージ4


この方は肺がんのステージ4の方です。丸で囲んだところががんなんですけれども、それが左から右に移って治療を進めていく上でだんだんだんだん目立たなくなっていくということがお分かりになると思います。
これは点滴で遺伝子治療製剤を送りました。最近は動脈のカテーテルを使ってさらにがんの栄養血管にダイレクトに遺伝子治療製剤を送るという治療も行っています。


乳がん(早期)


次のこの方は乳がん。この方もよく使わせていただくんですけれども、この方は早期がんだったので手術で切除根治ができるということから我々も強く標準治療をご案内したんですがもう絶対にメスを入れたくないという強い希望があって、何度もこれは医療面談上のやり取りがあったんですけれども、実験的治療であるということを受け入れていただく形でこの遺伝子治療を行ったと。ところがもうかれこれ10年以上経過しているのですが今や本当によいことにというか、我々も本当ありがたかったんですけれども、病巣が縮んでまあほとんど 確認できないような状況になっています。乳がんは確かに経過が長いので治療経過たのに10年くらいみるんですけれども、この方も治療を始められたのが2010年ですから、もうかれこれ11年目に入っておりまして安定しているという状況です。


乳がん(ステージ4)


次も同じく乳がんでこの方はステージ4で進行がん、他院で手術で乳がんを切除したんだけれども、肺に飛んだり、リンパ節に新しく飛んでしまったということから、色々化学療法ないしはホルモン療法をやっても制御できないということで、こちらの遺伝子治療をやりました。まず肺がんの転移巣が1回消えました。遺伝子治療を休んでいたところを、今度はリンパ 節に出てきたのでもう一度何年か経ってからこのリンパ節に対して直接カテーテルで栄養血管にめがけて遺伝子治療製剤を送りました。そしたらこれもまた消えてくれました。ですから時間が空いてからまた同じ遺伝子治療製剤を送ったにもかかわらず、こうやって消えたと言うことから我々としては遺伝子治療の耐性ということがないと言われていることをここで改めて確認したと。抗がん剤治療というのは、だんだんだんだん効かなくなってくるんですけれども、我々が行っている遺伝子治療の製剤はだんだん効かなくなるということは今まで 経験したことがないのでそれを裏付けケースだったということになります。


胸腺がん(ステージ4)


次は胸腺がんという、これも特殊な比較的発生頻度は少ないがんなんですけれども、心臓のすぐ近くの胸腺という内分泌臓器にできるがんでこの方もすでに発見された時には胸腔内腹腔内に転移が見つかっておりまして、手術的な根治治療は無理だということで化学療法を他の医療機関で行ったんですが、化学療法があまりのきつすぎて最初は効いてたんですけれども途中で断念したという方です。
他にもう治療方法がないということから遺伝子治療を選択されて、取り組んだんですが、結果としてどんどんどんどん今病巣が縮んでおりまして、始められたのが2020年の1月以降ですのでもう今1年半にかけて様子見てますけれども、2ヵ月に1回中を受けていただいているんですが、病状がどんどん改善して、ご本人もお元気で化学療法の時のような副作用が全くないので喜ぶ治療を続けていただいているという状況です。


先端治療における CDC6RNAiの優位性


このように先端治療の中でこの遺伝子治療である我々が行っているCDC6というタンパク、がんに特有のタンパクをターゲットにしたRNA干渉の優位性という点では何度も話していますが、重篤な副作用がないというところですね。これがあのいわゆる生活の質を損ねずに治療が継続できるということから、一番大きい優位性であると我々は考えています。
あとはがんに独特の抗原をターゲットにしているわけではないので、がんが変異しても治療効果がいわゆる減弱していくっていう可能性が少ない。先ほどお話した肺に転移して、その後リンパ節に転移した乳がんの方、かなりこれは年次が明けてからの定義だったんですけれどもそのような場合にはがん自体の異変が起きているということが考えられるんですが、それでもその遺伝子治療でしっかりと消去することができたということから、治療効果ががんの変異で減弱しないという可能性が優位性として挙げられると思います。あとは実際これからの課題として、遺伝子製剤というのはそのがん細胞の数に推して遺伝子製剤のRNA製剤というのを送り込むわけですけれども、もう数対数という状況にあるんですね。ですから今やはり製造コストという点で、その数がなかなか十分に送れないということもあるのでこれからはさらに製造コストなども考えて、がん細胞数に応じて大量の遺伝子製剤送られるような状況が作れれば、さらにその網羅的治療の実現というのも、がんが全身にある程度広がっていてもそれを完全にいわゆる、そうですね、取り除くことができる可能性というのもまだ秘めているというと思います。


遺伝子治療の存在意義


そういうことから遺伝子治療の存在意義、繰り返しになりますが正常細胞のダメージがない。治療による苦痛がない。日常生活が損なわれないということ。しかも今はそのがんの根本根源的なそのメカニズムというか、そのがんの種類を問わず発生している無限増殖能を規定している可能性がある細胞分裂の制御因子というものをターゲットにしているので、基本がんの種類を問わずに反応が期待できているということ。 あとは通常の標準治療では残念ながら、延命が目的になるような進行がんや再発がん、転移がんであっても根治を目指して治療を取り組むことができる。 すなわち、その患者さん方の生き方、尊厳、そういうものを最大限に尊重して化学療法で本当になんのために治療しているのか、残念ながら副作用で苦しんで、健康な状態を損ねてしまうようなケースというのはどうしても一定の割合であるわけですけれども、標準治療を我々は否定している立場ではもちろんないわけですけれども、そういう尊厳を損ねるような治療を選択せざるを得ないようなケースというのをよく目にする中でこの遺伝子治療というのはその尊厳を犠牲にするということはないというふうに言える点がその存在意義として大きいというふうに思っております。
今まで10年近くこの遺伝子様も我々取り組みながさらに基礎的な検証を続けているんですけど先ほどお話したようにまだまだ承認治療に行き着くまでは時間がかかると思っています。そのような中でもその患者さん方やそのご家族から応援をしていただいて遺伝子治療というのを続けて提供しております。


遺伝子治療 実施件数


今現時点でこちらのように、スキルス胃がん、食道がんなどさまざまながんの症例経験、治療経験を書かせていただいているんですけれども、2021年8月までの時点で治療実施件数は2000件以上に到達しております。これによって例えば重篤な副作用や合併症で急激に悪化したケースは一例もありません。ただ残念ながらコントロールできずに、救うことができなかったような患者さんたちも少なくはないので我々はそのような方々に対しての思いを常に忘れずに、この治療をさらに育んでんでいきたいと思っています。現在は医療従事者とか、医療に詳しい方もそうですし、医療リテラシーの高い方々、科学的なバックボーンあるような方々がこの治療をよく調べられて選択されるケースが多いわけですけれども、これも広く一般の方々にも届けられるように日夜我々もできるだけのことをしていきたいと思っています。
矢継ぎ早になりましたが今回は遺伝子治療の意義ということを一つの軸にこちらの治療のご案内をさせていただきました。 また何か皆さんにとって意味のある情報がありましたら、またこちらのほうで発信していきたいと思いますので引き続きよろしくお願い致します。ありがとうございました。


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