再生医療|再生医療の実情と当院の臨床データ解析に関するご報告 2026年6月doctor-blog

北青山D.CLINIC|再生医療の実情と当院の臨床データ解析に関するご報告
2026年6月

当院では2019年から現在まで、再生医療(間葉系幹細胞投与)に真摯に取り組み、450名を超える患者さんを対象に2000件を超える治療を安全に提供してまいりました。

毎年、厚生労働省に「治療の安全性・妥当性に関する報告」を提出して治療実績の評価を受けております。治療実績が積み上げられる中で、再生医療が有効な疾患や病態、望ましい治療タイミング、期待通りの治療成果を得るのが難しい症例などに関する情報が蓄積してまいりました。今回は皆様にそれらの情報を共有します。お時間のある時にお目通し下さい。


再生医療をめぐる「光と影」

再生医療は世界的に注目される先端医療ですが、この1年の間、国内では残念な医療事故が発生して課題が浮き彫りになる一方で、iPS細胞による心不全やパーキンソン病の治療が条件付き保険承認を得たり、さらには膝関節内の滑膜由来の間葉系幹細胞による半月板損傷治療が保険本承認となったりするなど、光と影、双方の側面から大きな注目を集め続けています。

特に、再生医療が保険承認を得た事実は、その科学的合理性が公的に認められたことであり、この高価な医療を多くの皆様が享受し得る環境が整いつつあると言えるでしょう。現時点で、脊髄損傷、脳梗塞後後遺症、肝硬変など、iPS細胞や他家間葉系幹細胞を用いた治療が保険承認取得作業の途上にあります。

しかし、国家の医療財源の限界もあることから高価な再生医療は手放しで承認されることは困難で、たとえ保険承認が得られても実際にその治療を享受できる方は極めて重篤な疾患の方に限られることが予測されます。

間葉系幹細胞(MSC)の特徴と「早期介入」の意義

間葉系幹細胞(MSC)の最大の特徴は、抗炎症因子や成長因子を放出して周囲の細胞を活性化する点にあり、この特性上、組織が不可逆的な破壊(線維化や軟骨の完全消失など)を起こす前の「早期」に介入してこそ、最大の効果を発揮します。また、ベースとなる体内環境が健全で、自身が最も若い段階で細胞を補填する方が、生物学的にも高い意義を持ちます。

今ある健康資産を維持し、将来の疾病・老化リスクを最小限に抑えるためには、最適なタイミングを逸することなく幹細胞治療を活用するのが医療経済合理性の点で望ましい方策と言えるのではないでしょうか。


臨床レジストリ報告(2019年4月〜2025年12月)

n=449・全例データ完備・累積観察人年553.5人年

449名
総患者数
2,212回
総施術回数
553.5人年
累積観察人年
0件
重篤有害事象(SAE)

外来診療設定で実施された自家脂肪由来間葉系幹細胞治療として、現時点で国内最大規模の臨床コホートと位置づけられるものと考えております。これらの全症例について、特定認定再生医療等委員会の継続的な審査のもとで治療を実施しております。


安全性プロファイル

2,212回の施術において、CTCAE(米国国立がん研究所有害事象共通用語規準)に基づく重篤な有害事象(SAE)の発生は0件でした。観察された軽症事象も、いずれも一過性であり、医療的介入なしに自然消失しています。施術中止に至った症例は1例もありません。

近年、他施設で報じられている重篤事案を踏まえ、皆さまにとって最大の関心事である「安全性」について、包み隠さずお伝えすべき情報であると考え、率直に記しました。

SAE 0件|全2,212施術において重篤有害事象の発生なし

確認された有害事象はすべて軽度・一過性(髄腔内投与後の腰痛・下肢痛、発熱等)。補償対象となるような重篤な事例は、治療開始以来発生していません。


製造品質の安定性と院内CPC体制

自家脂肪由来MSCの平均投与細胞数 1.15×10⁸個(標準偏差 0.45×10⁸)を、2019年から2025年までの7年間を通じて維持しております。細胞数のみを増やす培養法は細胞の質の低下や老化を招きます。当院では細胞の品質を保つ製造法を順守しています。

院内二重化 CPC
Cell Processing Center
細胞培養士による個別管理
脂肪採取から培養・投与までを同一医療機関内で完結。外部委託で生じる輸送・待機によるロスタイムをゼロにしています。 専門の細胞培養士が1件ずつ丁寧に対応
安全キャビネット内での無菌作業
顕微鏡による細胞状態の継続確認
細胞品質マーカー検査体制を整備

治療効果(妥当性)の評価結果

第11回北青山D.CLINIC特定認定再生医療等委員会(2026年5月)報告

安全性のみならず、客観的指標による治療効果(妥当性)の解析も継続して確認してまいりました。主要な所見を以下にまとめます。

疾患・症状 主な所見
慢性疼痛
n=143
3指標すべてで統計学的に有意な改善(Bonferroni補正後も維持)
・簡易疼痛(NRS):p=0.0002、効果量 r=0.32(中)
・疼痛生活障害(PDAS):p=0.0057、r=0.23
・破局的思考(PCS):p<0.0001、r=0.44(中〜大)
特に「痛みへの破局的思考(PCS)」の改善は、生活の質に直結する所見です。
動脈硬化
n=88
頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)の有意な改善
・IMT max 異常群(n=78):p=0.001、r=0.39
・IMT mean 異常群(n=38):p=0.021、r=0.37
加齢に伴う血管病変への介入の可能性を示唆するものです。
加齢による機能低下
n=112
酸化ストレス・抗酸化力の顕著な改善
・BAP(抗酸化力)A→N群(n=10):p=0.002、r=0.98
異常値だった抗酸化力が正常域へ改善した10名において、極めて強い改善効果が確認されました。
軽度認知機能障害
n=54
認知機能スコアの有意な改善傾向
簡易認知機能チェックスコアで有意な改善傾向(p=0.033)。MCI(軽度認知障害)域から正常域への改善例も観察されています。

有意差が確認できなかった領域について

生活改善が不十分な場合の糖尿病(HbA1c)、病状が相当に進行した慢性腎臓病(eGFR)や慢性肺疾患などの領域では、統計学的に有意な改善は確認できませんでした。治療効果の体感において個人差が非常に大きいことが確認されています。

難治性の神経変性疾患(多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、パーキンソン病など)は、症状の顕著な改善は見られないものの、病状の自然歴と比較すると、症状進行の抑制が顕著に得られていることが特筆されます。


疾患別 継続治療割合(2025年8月時点)

初回治療後に追加投与(継続治療)を選択した患者様の割合です。

慢性疼痛

90.7%

動脈硬化

88.9%

加齢による機能低下

86.0%

認知機能障害

80.0%

神経変性疾患

78.0%

出典:北青山D.CLINIC ウェブサイト掲載データ(2025年8月時点)


高齢であっても、修復の土壌は残っている可能性があります。

再生医療は、組織が完全に破壊された後よりも、「身体が修復力をまだ十分に保っている時期」での介入が、最も力を発揮することが、世界の研究と当院のデータの両方から、次第に明らかになってまいりました。これは、若い方に限った話ではありません。当院では、最高齢92歳の方まで、安全に、そして客観的指標の改善とともに治療を実施してまいりました。ご高齢の方であってもその身体的能力を少しでも落とさないように介入する意義はあると言えます。

92歳
当院最高齢治療実績
61.5歳
平均年齢(18〜92歳)
0件
重篤有害事象(SAE)

医療者からのメッセージ

「ご自身の身体に残された治る力が、まだしっかりと働いているうちに」という観点だけは、お伝えしておきたいと考えております。再生医療が活きるかどうかは、年齢そのものよりも、「修復可能な土壌が残されているかどうか」によります。そしてその土壌は、時間の経過とともに、ゆっくりと、しかし確実に崩れていきます。是非、「今、選べる適切な健康管理の道程」を歩んでいただきたい。これは、皆さまへの純粋な医療者としての願いです。



この度、皆様に7年間にわたる当院の再生医療の治療成績について統計的解析により評価した概要をお伝えしました。加齢による機能低下、軽度認知機能低下、動脈硬化、慢性疼痛、変形性関節症においては、統計的解析においても治療効果が期待できる結果が得られております。それ以外の症状や病状に悩まれている方も含めて、ご不明な点や追加のご相談がございましたら、お気軽にスタッフまでお声がけください。

北青山D.CLINIC 院長 阿保 義久

北青山D.CLINIC
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