下肢静脈瘤のキャッチングコピーvarixlaser

先日、メディア関係の方から、以下のような質問を受けました。
「下肢静脈瘤は罹患人口が多く患者さんの悩みも深いのに、意外と知られていない。メディアもあまり取り上げない。皆から注目されるように下肢静脈瘤を象徴する何かキャッチーな表現はありませんか。」

あまり大げさな、極端な表現はできませんが、下肢静脈瘤の特性を捉えるコピーを二つ思いつきました。

“隠れ静脈瘤”

隠れ静脈瘤には二つの意味があります。
一つは、下肢静脈瘤の主原因である伏在静脈(大きな表在静脈)の弁不全や逆流が既に生じているのに、静脈の瘤(コブ)が目立たないもの。これは、見た目ではわかりませんが、エコーで調べるとしっかりと壊れてしまった逆流血管が捉えられます。脚が重い、だるい、つる、むくむ、痒いなどの自覚症状はありますが、血管の瘤(コブ:静脈瘤)が生じていないので気付かないのです。しかし、これは放っておくといずれボコボコと静脈の瘤が発生します。瘤がまだできていないのに湿疹や色素沈着が既に生じているケースもしばしばあります。皮膚科で治療を受けているのになかなか治らない湿疹、色素沈着、潰瘍の背景に、伏在静脈の弁不全や逆流が生じている場合がしばしばあります。たとえ瘤がなくてもこのような状態は血管内治療(レーザー/高周波焼灼術、CAE/べノクローズなど)が必要になります。
もう一つは、青や赤の細かい血管が目立つケースです。これは、クモの巣/網目静脈瘤と称されますが、下肢静脈瘤治療を専門で実施している医療機関でもこの治療を行っているところは非常に限られています。病的な症状を呈することは殆どないですし(時に痛みやだるさを伴うことはあります)、放っておいてもボコボコとした静脈瘤に発達することがないから深刻なものとして取り上げられないのです。ただし、そのままにしておくと病変の範囲が広がっていくことがしばしばです。スカートが履けないなど下肢静脈瘤の典型的な悩みを持っているのに、静脈瘤扱いされず治療をしてもらえないと相談に来られる方は非常に多いです。実際は、ロングパルスYAGレーザーで治療することができます(このレーザーを常備している血管外科は非常に少ないです)。

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“モンスター血管”

下肢静脈瘤は原則として命に関わらない良性疾患なので、今までは治療を積極的に実施する医療機関が少ないことが特徴でした(現在は急増しています)。しかし、放置すると時に重症化することがあり、見た目のストレスから精神的ダメージも相応にあって、米国のある研究機関から「下肢静脈瘤は国民の労働意欲や労働姿勢を損ねるため国力を弱らせる重大な疾患である」という問題提起を意図した発表が以前ありました。治療しないでいると見た目もどんどん気持ち悪くなり、いつの間にか進行して潰瘍が生じてしまい、完全に元に戻らなくなるので実は結構厄介な疾患なのです。
そのような、安易に考えて放置していると知らぬ間に重大な事態に陥ることのある気持ちの悪い病態、を表現する言葉として「モンスター」は適しているかもしれません。もちろん早期に治療を受けられればモンスター血管にはなりません。

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監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会