先日、下肢静脈瘤に関する取材を受けた際に、見た目(ボコボコと血管が浮き上る、青・赤・紫の細かい血管がクモの巣や網目状に広がる)以外の症状(むくみ、かゆみ、こむらがえり)の発生メカニズムなどについてのご質問がありました。
それらについて簡単に解説します。
むくみ
体の60%は水分です。そして体の中の水分は、細胞内液と細胞外液に分けられます。細胞外液は体重の20%前後で、さらに組織液・血液・その他に分けられます。この中の組織液に不必要に水分が溜まるとむくみが生じます。組織液は体重60㎏の方だと10Lくらいで、下肢に存在する組織液は2-3Lくらいといえます。10%くらいの余分な水がたまると高度なむくみに分類されることを考えれば、脚に200mlくらいの余分な水がたまると比較的重度なむくみと言えるのではないでしょうか。
下肢静脈瘤は、本来心臓に戻らなければいけない血液が逆流して脚にたまってしまうため、脚のむくみの原因の一つです。ただし、腎臓/心臓の機能障害の他、さまざまな疾患がむくみの原因になりますので、むくみの強い方は静脈瘤だけではなく諸処の疾患の鑑別が必要になります。
脚のむくみ予防として一般的にお勧めできるのは、ウオーキングや深呼吸など、血液を心臓に戻すポンプの役目をするふくらはぎの筋肉や横隔膜のトレー二ングや、適度なサポート力のあるストッキングを着用することです。
かゆみ
その発症メカニズムは諸説あります。静脈瘤のために皮膚の代謝が悪くなると、皮膚の保湿やバリア機能が損なわれ、小さな刺激でも痒みとして感じられるようになると考えられています。また、処理されなければいけない代謝物質が大量に溜まるとかゆみの原因物質が放出されるため、とも説明されます。
下肢静脈瘤が進行すると高頻度にかゆみが併発します。さらに放置すると、皮膚が乾燥して色素沈着や潰瘍など治りにくい症状が発生することが良くあります。かゆみを自覚したら早期に治療をすることをお勧めします。
こむらがえり
こむら返りは、循環の不全により、筋肉・腱周囲の電解質バランスが崩れ、筋肉の痙攣が発生することで引き起こされます。乳酸が溜まることがこむら返りの原因と言われていた時期もありますが、局所の電解質異常が原因であるという説の方が有力のようです。
下肢静脈瘤の初期症状としてこむら返りが最も良く見られます。中には毎日寝ているときに激しいこむら返りの痛みで目を覚まし、睡眠不足に苦しむ方もいらっしゃいます。このような方が、「下肢静脈瘤の治療をした途端こむら返りが全く生じなくなった。」と非常に喜ばれるケースをよく経験します。