「下肢静脈瘤次世代治療」スキルアップセミナーで講演しましたvarixlaser

2018年1月21日(日)、臨床医向けのスキルアップセミナーで下肢静脈瘤に関する講演を行いました。10年以上前にもご依頼があった際は日曜祝日も体が空かないほど多忙を極めていたため、セミナーを担当することができませんでした。今回は半年前にお声掛けがあったこともありご依頼を引き受けることができました。

日曜日の午前、午後各2時間というスケジュールでしたが、北は東北、南は山陰地方と全国の広いエリアから内科、整形外科など下肢静脈瘤治療を実施されていない先生方もセミナーに参加しておられました。

講演内容は、下肢静脈瘤の歴史や治療に必要な解剖や病態生理から始まり、血管内レーザー/高周波治療及び経皮的レーザー治療の現状に加えて、次世代の治療として大変期待されているNTNT治療(麻酔範囲や体への負担が最小限の治療)にまで及びました。参加された先生方は、熱心にメモを取られ、積極的に質問をされるなど、真剣に講演を聞いていただいていることがしっかりと伝わってきました。講演するにあたって複数の洋書の専門誌を参考にしましたが、私自身も改めて下肢静脈瘤に関して勉強をし直す大変良い機会になりました。

昨今、下肢静脈瘤治療を実施する医療機関が急増して全国津々浦々で低侵襲の下肢静脈瘤治療(レーザー、高周波による血管内焼灼術)が実施されています。医療機器メーカーからの情報だと年間で約80,000本程度のファイバーが全国に出荷されているようです。ところが、このように極めて多数の下肢静脈瘤治療が実施されていることは下肢静脈瘤治療を実際に行っている医師の間では常識なのですが、治療を担当されていない内科や整形外科などの先生方にはまだあまり知られていないようです。例えば、当院で治療を受ける予定だった80歳以上の患者さんが、治療を受ける直前に、普段高血圧の治療を受けているかかりつけの医師に手術を受けることを伝えたところ、危険な手術だという理由で下肢静脈瘤治療を中止するように指示され、止む無く治療を断念するということが度々あります。このような患者さん方は、長年悩み続けていた脚の症状(痛み、むくみ、こむら返り、痒み、見た目の気持ち悪さなど)が解消するだろうと、治療を受けることを非常に楽しみにされていました。流石にかかりつけ医から治療の中止を命じられたのに、それを無視して治療に進むことはできません。従来の方法とは全く違うレベルの、負担が少なく安全な治療が現在下肢静脈瘤治療として行われているということが、医療のプロである医師達にまだ浸透しきっていない現実があります。それほど、急激に下肢静脈瘤治療の先端的治療が普及してきたということでしょう。今回のセミナーにより、少しでも多くの医師が下肢静脈瘤の先端治療について理解を深めて頂けることを願っています。

一方で、下肢静脈瘤治療を手掛ける医療機関が急増してきたことにより、残念ながら不適切治療を実施する医療機関も散見されるようになりました。そもそも治療の適用がないのに血管内焼灼術を実施したり、治療をする部位が誤っていたりなど、とある下肢静脈瘤専門医療機関で治療をしたのに経過が思わしくないという患者さんが時々来院されます。このような事態は一刻も早く改善されなければなりません。本セミナーがどのくらいの影響力を持つかは不確かですが、適切な治療の普及に少しでも貢献することを願っています。

監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会