下肢静脈瘤日帰り手術の変遷

下肢静脈瘤日帰り手術の変遷

(日帰り手術普及に貢献したドクターを中心に紹介)

1990年代前半 折井医師(現東海大学血管外科講師)
高位ケッサツ手術+硬化療法を考案。(於 板橋本町クリニック)
1998年 阿保医師(現北青山Dクリニック院長)
根治的日帰りストリッピング手術を発案。(於 親和クリニック)
1999年 医科歯科大学ドクターチーム日帰りストリッピング手術を踏襲(TLA麻酔)。
2000年 阿保医師 下肢静脈瘤・鼠径ヘルニア日帰り手術専門クリニック開設。(北青山Dクリニック)
2004年 下肢静脈瘤専門クリニックあしのクリニック(親和クリニック系)開業。
医科歯科大学血管外科グループがレーザー治療を試験的に施行。
2004年 阿保医師 
日帰りエンドレーザー治療(血管内レーザー焼灼術EVLA)を北青山Dクリニックで開始。
2005年 阿保医師 網目状、クモの巣状静脈瘤に対するロングパルスYAGレーザー治療開始。
2006年以降 下肢静脈瘤日帰り治療を専門とする医療機関が急激に増加。
2007年 京都で開催された国際静脈学会で阿保医師 ストリッピング手術に対して血管内レーザー治療がほぼ同等かそれ以上の治療成績及び治療満足度を得たことを発表
2008年 阿保医師 最高波長2000nmレーザー治療を北青山Dクリニックで開始
2010年 日本静脈学会で阿保医師 980nm 1320nm 2000nm各種レーザー治療成績比較試験において2000nmのレーザーが最も有能であったことを発表
2014年5月 1470nm レーザーによる血管内焼灼術が保険収載
2014年6月 高周波(RF/ラジオ波)治療器による血管内焼灼術が保険収載
2015年 阿保医師 血管内レーザー焼灼術の長期治療成績(術後7-9年)を調査。第35回日本静脈学会で血管内レーザー焼灼術は従来のストリッピング手術と比較して長期治療成績が良好であったことを発表。
2019年12月 グルー治療保険収載

解説

伏在型の下肢静脈瘤(ボコボコと浮かび上がるタイプ)の根治的な手術として、20世紀初頭からストリッピング手術(抜去切除手術)が行われてきました。

20世紀後半までは、ストリッピング手術は、下半身麻酔や全身麻酔下で施行されることが常識で切除範囲も下肢全長にわたるため、手術後1週間以上の入院が必要でした。

1990年代後半、当時慶応大学血管外科の折井医師のチームが高位ケッサツと硬化療法を組み合わせることで、日帰りで伏在型の下肢静脈瘤の治療を行う方法を実践し出しました。通常1週間以上の入院を要するとされていた下肢静脈瘤の治療が外来で行えるということで当時は画期的な治療法でしたが、再発率が大きいということが難点で、入院して行うストリッピング手術がやはり根治的な治療と評価されました。

1998年、東大血管外科の阿保医師が麻酔法を工夫し(局所麻酔と静脈麻酔の組み合わせ)、その根治的ストリッピング手術を国内で初めて日帰り(外来)手術で行うことに成功しました。以後、下肢静脈瘤のストリッピング手術が日帰りで全く問題なく行えることが判明し、他のドクター達も日帰り手術の実施を追従しました。根治的な手術が完全に日帰り(在院時間数時間)で問題なく行えることが示された点で、日帰りストリッピング手術の発案は、当時は常識を覆すものでした。

以降、阿保医師が開設した「北青山Dクリニック」、次いで、阿保医師の日帰りストリッピング手術を踏襲しながら特殊な局所麻酔(TLA麻酔)を導入して東京医科歯科大学血管外科スタッフが中心の「あしのクリニック」が下肢静脈瘤の日帰り手術を精力的に行ってきました。

下肢静脈瘤の日帰りストリッピング手術が安定して供給されてから5年ほど経過して、1320nmクールタッチレーザーによる血管内治療の効果が良好であることが米国で示されました。東京医科歯科大学の血管外科チームがそのレーザー治療の臨床試験を行い問題がないことを確認。北青山Dクリニックが東京都で初めて同レーザーを用いてエンドレーザー治療(血管内レーザー治療/血管内レーザー焼灼術)を開始。現在までエンドレーザー治療を国内施設の中で最も多く安定提供しています。

2006年以降は下肢静脈瘤の日帰り治療に着手する医療機関が関東を中心として全国に広まってきました。さらに2011年には980nmのレーザーによる血管内レーザー焼灼術が、そして2014年には1470nmのレーザーおよび高周波(RF/ラジオ波)治療器による血管内焼灼術が保険適用となり、これら治療を開始する医療機関がますます増えることでしょう。

下肢静脈瘤の日帰り根治手術を考案して以来、治療の進化に合わせて最良の医療の提供に心掛けてきた北青山Dクリニックは、上記の1470nmレーザー、高周波(RF/ラジオ波)治療器も早くからラインアップし、さらに、時間的身体的負担を最小限にしたい方には最高波長レーザー(2000nm)による高品質の治療を提供しています。

2017年からは血管内治療として熱刺激のないスーパーグルー治療(接着治療)も提供され体に負担の小さな治療の選択肢がさらに増えています。このグルー治療は2019年12月からは保険収載されており、多くの方が治療を受けやすくなりました。

下肢静脈瘤の治療は日々進化しています。いたづらな情報に惑わされずに、ご自身で納得のできる医療機関、治療法を採択されるのが賢明であると思います。

監修医師

 監修医師  北青山D.CLINIC院長 
阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴
所属学会