遺伝子治療が実施しやすい環境をcancergenetherapy

手術・化学療法(抗がん剤)・放射線治療といった標準治療ではコントロールできない病期に入ってしまった患者さんにとって、遺伝子治療(CDC6 RNAi 療法)は一定以上の治療効果が期待できる貴重な治療と評価できます。それは、今までは諦めざるを得なかった進行・末期がんを克服できる可能性があるいうことです。

しかし、この治療を患者さんに安定して提供し、治療成績を高めるために解決しなければいけない課題があります。それは、治療を行う上で連携が必要な医療機関ないしは治療担当医が、しばしば遺伝子治療を真っ向から否定することです。
遺伝子治療を受けている患者さんが栄養補助や疼痛管理を受ける場合には、複数の医療機関が協力して医療を提供することになります。また、化学療法に遺伝子治療を併用することで治療成績が大きく改善するケースも多々あります。この場合も医療機関の連携が必要不可欠です。
ところが、少しでも長く元気に生き延びたい思いで遺伝子治療を選択した患者さんが、それに加えて標準治療を希望した時に、快く協力していただけない場合があるのです。
確かに、標準治療に従事されている医師は未承認薬の治療を手放しで受け入れることには抵抗があるでしょう。がん治療に関する知識・経験が豊富で真剣に取り組んでおられれば尚更、未承認の治療は怪訝に感じるはずです。私も東大病院、虎の門病院、三楽病院などでがん手術及び抗がん剤治療を担当していた時に、患者さんから未承認薬を使いたいと告げられても、それらに対して否定的な見解を示すことが少なくありませんでした。殆どの民間療法が科学的根拠に乏しい商業的要素で成り立っていたからです。患者さんがお亡くなりになった後で法外な治療費を遺族に請求した医療機関が問題になった例もあります。
しかし、認可を受けている抗がん剤であっても、副作用が大きい割には根治できない、延命効果もそれほど長期間ではない(長くて数か月)という状況で、やみくもに代替治療を否定できないということも当時から感じていました。
北青山Dクリニックが遺伝子治療(CDC6 RNAi 療法)を着手することになったのは、根治的治療を享受できない進行がん・末期がんの方に有効かつ尊厳ある治療を提供したい(=がん治療において未解決の難題)と考えていたところ、海外でこの遺伝子治療を受けているがん患者さんから当院でその治療を実施して欲しいと嘆願されたことに端を発します

「未承認のものは受け入れない」というのは保守的な立場としては正当なのでしょうが、進行末期がんの治療では患者さんやその家族が十分満足できる治療を享受できていないのが現実であることを考えれば、代替医療や補完医療を希望する患者さんの願いを機械的に拒否することは医師の理想的な姿勢とは言えないと思います。

最近、公的保険のお墨付きを得て高い治療効果が期待される次世代の抗がん剤にオプジーボがありますが、治療費負担が年間3500万円にも及び(今年薬価が下げられましたがそれでも1500万円以上の負担になります)、効果のある患者は5人に1人で、その延命効果も2-3か月に過ぎないと言われています。
抗がん剤治療は、最初は効いても徐々に耐性が作られて効果が落ちていきます。ある抗がん剤が効かなくなると、治療を継続するために異なるタイプの抗がん剤を使用することになります。そして他に標準治療の選択肢が無くなると、苦痛を緩和しながら死を待機するしかなくなります。
公的承認薬であっても、相応の治療費負担を要し、治療効果は限定的です。それらの治療については批判的な目を向けずに、未承認であるから遺伝子治療は全て不当かつ無効だと判断するのは盲目的な見解と言わざるを得ません。

今後、遺伝子治療を進行・末期がんの方々に提供し続けるためには、他の医療機関の理解とバックアップが欠かせません。遺伝子治療が有効な症例を一例ずつ積み重ねながら、他の医療機関にも広く情報公開する必要を感じています。