がん遺伝子治療に関する取材を受けてcancergenetherapy

がん遺伝子治療を始めて9年目に入りました。

当初は治療に関するマニュアルが全くないため手探りで治療を行っていました。また、薬剤購入費が現在に比べて10倍以上だったこともあり、必要と感じても経済的事情で積極的に薬剤投与できないケースに多々遭遇したものです。

その後、前回のブログでも触れたように遺伝子製剤は改良を重ねて製造原価も以前に比べて相当に安くなり、様々な種類の様々なステージのがんの方に以前よりも積極的に遺伝子治療を実施できるようになってきました。そもそも末期がんの患者さん方の切実な叫びに呼応して未認可の遺伝子治療にいち早く着手したわけですが、がん遺伝子治療開始当初に抱いた大きな期待と一抹の不安を思い出しつつ、少しでも本治療により患者さんを救いたい気持ちで治療を継続しています。そのような中で、先日、とある出版社から取材の依頼がありました。

 取材は、がん遺伝子治療の経緯と現況を見直す良い機会になりました。客観的かつ俯瞰的に本遺伝子治療を評価した結果、以下のことが言えます。

がん遺伝子治療で全例が治るわけではない。
ただし、末期がんの方でも信じられないほど劇的に効くケースがある。

   ↓

標準治療では治せない進行がんの方はそのまま放置せず末期がんになる前に遺伝子治療を受ける意義は大きい。

 しかし、ここ最近は、がん遺伝子治療を手掛ける医療機関の中には過度な宣伝文句を駆使してがん遺伝子治療が奇跡の治療であるかのように表現し法外な治療費負担を課しているところがあるようです。私たちは、がん遺伝子治療には一定以上の効果があることを経験し、標準治療をほぼ放棄された患者さんが望みを持って受ける治療としては倫理的に問題がないと判断しています。ただし、藁をもすがるがん患者さん方に誤解を招くような過度の誇張表現を用いた治療宣伝には大きな問題があると感じています。その意味で常に自戒の念を持ちながらがん遺伝子治療に取り組むことを心がけています。確かに、自費診療として実施されるがん遺伝子治療は相応の経済的負担を強いられます。前述の如く中には非常識な治療費を請求する医療機関もあると聞きます。本治療が、多くの進行末期がんの方々が享受できていない尊厳あるがん治療を提供し得るものだと考えている故に、治療を提供する側、受ける側双方がより注意してがん遺伝子治療に向き合うべきだと考えています。

 日本遺伝子細胞療法学会のサイトには以下の記載があります。苦しみ悩まれている癌患者さん方に第一線で対応している立場であるからこそ、下記の文言を重く受け止め、真剣に本治療に取り組む所存です。

未承認薬を用いた遺伝子治療を受ける方々は、ご自分が受ける遺伝子治療の安全性や有効性等について十分ご理解をされ、そのうえで受けるかどうかの判断を慎重に行われるよう、また法外な医療費を請求されるケースもあることが一部で指摘されていますので、医療費が適正かどうかについても、十分考慮して判断されることを強くお勧めいたします(日本遺伝子細胞療法学会公式サイトより引用)。