がんとDNAの関係

DNAと遺伝子

人間には約60兆個の細胞があります。 細胞の一つひとつには「核」があり、核の中には23対の「染色体」が収まっています。 そして、その染色体の中にあるのが「DNA」です。 DNAは、二本の細い糸がらせん状にねじれた構造(二重らせん構造)をしています。 DNAの幅は2nm(10億分の2m)。23対の染色体に含まれるDNAを繋ぎ合わせると、全長1.8mにもなります。   DNAの中の一部には、タンパク質の合成に関する設計図が書かれています。 この設計図が「遺伝子」です。 あらゆる生命活動は各種のタンパク質が担っており、それらは遺伝子に基づいて合成されます。そして、「どのようなタンパク質を、いつ、どこで、どのくらい作ればよいのか?」は、DNAとRNAによってコントロールされています。  

DNARNA

DNA(デオキシリボ核酸)

核の中で情報の蓄積・保存する。静的。

RNA(リボ核酸)

DNA情報の一時的な処理を担う。動的。

  • mRNA(メッセンジャーRNA)
  • tRNA (トランスファーRNA)
  • rRNA (リボソームRNA)
  • ncRNA(ノンコーディングRNA)

など複数の種類がある。   「がん化」は、DNAが何らかの原因で損傷すること(DNA損傷)から生じます。 遺伝子の中には「がん化を進める遺伝子(がん遺伝子)」や「がん化を抑える遺伝子(がん抑制遺伝子)」が存在しますが、DNAが損傷した結果、それらの遺伝子がうまく働かない、もしくは異常な働き方をするといった事態が起こり、正常細胞ががん細胞へと変化(がん化)するのです。  

DNA損傷から「がん化」への道のり

「DNA損傷」は、一つの細胞で一日に50万回程度発生しているといわれています。 それでも細胞が健常でいられるのは、DNA損傷を修復する機構があるからです。 修復が追い付かず、損傷する細胞の数が多くなってしまうと、細胞は以下のいずれかの道をたどることになります。

  • 老化(senesence)
  • アポトーシス(apotosis)
  • がん化(cancer)

人体では、ほとんどの細胞は「老化(不可逆な休眠状態)」の道をたどりますが、DNA損傷の蓄積が大きくなった場合は、「アポトーシス(細胞の自殺/プログラム細胞死)」が生じます。 そして、DNA損傷がさらに進行し、アポトーシスの機能が失われると、細胞が半永久的に分裂・増殖を続ける「がん化」が発生します。 

DNA損傷の原因

DNA損傷の原因は、「細胞内に由来するもの」と「細胞外(環境)に由来するもの」に分かれる。

<細胞内に由来するもの>

  • エネルギー生成の際に発生する「活性酸素」による障害

<細胞外(環境)に由来するもの>

  • 紫外線
  • X線、ガンマ線などの電磁波
  • タバコなど、人工の変異原性物質
  • 食品中の化学物質
  • 大気汚染、排気ガス
  • 癌治療における化学療法、放射線治療